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0423「末代までの教訓」

我が家は子供が3人いるので、休みとなると必然的に完全に子供に合わせた行き先になる。昨年末もディズニー関係に行っていたし、今回も、滝近辺の子供向けのウォーターパーク的なものに主に滞在していた。3人の構成は12歳・4歳・2歳だが、わりと平気で12歳と2歳が喧嘩したりするし、「お兄ちゃん歳離れてるから楽でしょう?」とかよく言われるが、全くそんなことは無く、彼らは常に争い、騒いでいる。なので、子連れでも気兼ねなく生活できる環境というのは、とても重要で、滞在していたような子供向けの場所に行くと当たり前だが、もはや子連れしかいないので精神衛生上とても良い。

とはいえ私は常にボーっとしていて気がつかないので恐らくこんなことを私が書いても妻にとっては何がしかのチャンチャラおかしさがあるに違いないが、しかし3人の子連れとして子連れが集まる場所に行くのはローリスクハイリターンだ。お菓子、おもちゃ、流れるプール、といったアメリカ的な子供たち向けのホスピタリティも充実している。

ただ、想像に難くないと思うが、アメリカのこういう感じの場所は総じてUXが人工甘味料かつ人工着色料的なノリで彩られているので、ずっといると辛くなる。今回来ているのはカナダだが、アメリカのチェーン店というか、アメリカ資本の施設なので、アメリカ感がある。化学の力で楽しい時間を過ごしているような感じがする。

というわけで、そこで私たち両親のMPが削られることを見越して、連休の後半は、トロントの郊外のシムコー湖の湖畔の初老の夫婦が行きそうな落ち着いた場所に滞在することにしていた。で、今日はそこに移動した。

ここは、2011年の5月に、ちょうどPARTYを創業するちと前に、FITCというインタラクティブ系のイベントでトロントに呼んでもらった際に家族で来て、トロントの近くの良さそうな場所をググったら出てきたところで、バスを乗り継がないと辿り着けない変な場所で、英語でのコミュニケーションが辛かった当時は路線間違えたりしながらかなり苦労してたどり着いたのだが、すごい落ち着いた、人工着色料な感じのない良い場所だった。

ここで当時まだ4歳だった長男がゴールデンレトリバーに追いかけられてトラウマになったりした。しかし総じてとても気持ちの良い場所だったので8年ぶりにやってきたのだ。この間にアメリカに移住して、免許も取った。ので、自分でレンタカーを運転して、全然違うノリで移動できた。

私は、この日記を読んで頂いているとご理解頂ける通り、出張中など一人で行動しているときは概ねカプセルホテルとか夜行バスとか泊で、以前は家族で旅行するような際も、宿を決めずに行き当たりばったりで移動するバックパッカーを引きずったスタイルだった。しかし、家族であるホテルに宿泊したことがきっかけで、まともな宿に計画的に泊まるスタイルにシフトした。

そのホテルとは、山中湖にあるF士Y中湖ホテルというホテルで、やはり長男がまだかなり小さい頃、家族で「富士山の方行こうぜ!」となって週末に急遽思い立って出かけた際に何も考えずに適当に予約して宿泊したホテルだ。

立地条件は山中湖の奥まった場所で、周辺環境は決して悪くはなかった。車がないというか、私は日本では免許をずいぶん前から失効していて運転できないので、バスを乗り継いでたどり着いた。

入口前に庭のようなスペースがあって、そこに池があったが、池の水が干上がっていて、蜘蛛の巣が張っていた。

中は大丈夫だろう、と中に入ると、全く活気がなく、他に客がいる感じがしない。そしてとてもダウナーな従業員。ロビー横のガラスの冷蔵庫は、なんか物置になっていた。

さすがに部屋は大丈夫だろう、と中に入ると、超怖い日本人形みたいのが置いてあって、蜘蛛の巣張ってたり、自粛するが虫がいたり、畳がなぜか黒塗りだったり。

さすがに温泉は大丈夫だろう、と風呂に行くと風呂が超カビ臭く、露天風呂は改修中(後で調べたら5年以上改修中)

夕食はもはや記憶にないが、朝飯がすごくて、ヤマザキパンが袋のまま出てきた。

チェックアウト後、無言のまま、家族3人で宿を出て、近所のほうとう屋さんで食った暖かいほうとうが「思い出の一杯」と言えるほど本当においしかった。

ここまで書くと、本当にそんなホテルがあるのか、と思うかもしれないが、実は、トリップアドバイザーのこのホテルのレビューを見ると、ほぼ上記の体験と同じことが書いてある。さかのぼって読むと、これはなかなかコンテンツ力のあるレビューだ。このホテルは実在するのだ。

このレビューを先に読んでさえいれば、こんなことにはならなかった。

しかし当時の私は、沢木耕太郎とかの悪影響で、「旅に安定を求めるとかクソだ。旅は自由であるべきだ」とか思っていたので、トリップアドバイザーなんか参考にする人は旅人として認められないくらいに思っていた。

しかし、このF士Y中湖ホテルでの壮絶な一夜を経て、トリップアドバイザーのレビューを読み、考え方が180度変わった。

「旅に安定を求めなくてもいいけど、家族で出かけるときは、必ずトリップアドバイザーを参考にして宿を取ろう。F士Y中湖ホテルのことを忘れるな」

これは、もはや清水家の家訓で、それ以来、一度も家族で出かける場合の宿泊先を間違えたことはないと思う。

そんなわけで、今日滞在しているシムコー湖の「The Briars」は、本当に良い宿で、食事が素朴で、アメリカのこういう場所より丁寧だし、空気もいいし、館内も清潔で、温浴施設もとても良い場所だ。トロントという街は本当にあんまり観光する場所もないが、ここはわざわざ来るべきところだ。8年ぶりだが、こんな気持ち良い場所はなかなかない。

素晴らしい場所に滞在して、素晴らしい体験をしていると、F士Y中湖のことを思い出す。これは、徳川家康が、三方ヶ原の戦いでの大敗北を生涯忘れなかったのに近い。

トリップアドバイザーは、必ず見ろ。

この教えを、末代まで語り継いでいきたい。

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