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0311「これは良い誤爆」

次男が体調を崩して、夜中ずっと咳をしていたので、病院に連れて行った。アメリカの病院というのは、概して先生は良い人たちなのだが、受付の係の人たちの態度がものすごく悪い。保険の種別もあって掛かりつけ医以外に行けないし、近所の病院じゃないと不便なのでこの病院にしているが、また喧嘩しそうになってしまった。

水曜日にわりとごついプレゼンがあるので、今日明日はそれに向けてひたすらコードを書かなくてはいけない。その割には日中のミーティングが多くてなかなか大変なのだが、例によって始めると速いし楽しい。

私のTwitterアカウントは @qanta で、これは2008年とかからやっているものなので、そこそこ初期にこの5文字で取得できて良かった。今じゃこんなシンプルなIDは取れないような気がする。

で、昨日くらいからちょこちょこ私宛に英文のメンションが来るのだが、これはかなり昔からよくある現象で、何が起こっているのかというと、オーストラリアのカンタス航空( @qantas )へのメンションを誤爆してくる人が一定数いるのだ。

たとえばカンタス航空が不祥事を起こすと、突然英文の罵倒が飛んできたりするし、他の航空会社への文句に巻き込まれたりする。その他いろんなのが来る。

仕事をくれ、みたいのも来る。

これは、カンタス航空の広告を拡散しているっぽいのだが、ポスターに思いっきり「@qantas」って書いてあるのにわざわざ間違えている

これなんか、もう誤爆とかじゃなくて、本家と併記している。どういうつもりなのか。私は一介の日本人だ。

下記のは、アラスカ航空がマイレージに関する(他航空会社と比較している)クレームに対応をする中で私にメンションしてきたやつである。公式な航空会社まで私に誤爆してくる

で、何で昨日から私への誤爆が増えたのかというと、どうやらカンタス航空、今日は感動的なニュースで話題になっているらしい。なんか、「感動したよ!」とか「涙が止まらないぜ」みたいな誤爆が飛んでくるのだ。

「涙が出るよ!」
とか、それに対して、

「私は泣いてないわよ!」
とか。

「現代のマーケティングってのはこうやってテイクオフするんだぜ。@qantaよくやった!」

みたいにマーケティング文脈で超褒められたりもしていて嬉しいんだけど、あんた相手間違えてるよ!

一体何が起こっているのか。

で、大元の「感動的な出来事」というのはどうやらこれのことらしい。

どういうことなのか。ツイートを意訳してみる。

通常、競合他社からアドバイスを求められることはありませんが、競合航空会社のトップがコンタクトしてきた場合は私たちは無視することができません。この場合、私たちのCEOがCEOのお相手をするほかありません。

ということで、手紙の画像がくっついている。その手紙はこうだ。

親愛なるアラン・ジョイスさんへ

僕はアレックス・ジャコット、10歳です(真剣に聞いてください)。僕は航空会社を始めたいと思っています。

僕は既にどんな飛行機が必要になるか、フライトナンバーやケータリングなどについて考えたりしています。

僕は航空会社のCEOです。航空会社の名前は、「オセアニア・エクスプレス」です。

僕はCFOとIT部長とメンテナンス部長、機内サービス部長と法務部長を雇いました。

僕の友達のウルフ(副CEO)は共同設立者です。

僕は3つの質問をしたくって、この手紙を書いています。

1つ目。僕は学校が休みになって働く時間があるので自分の航空会社のために働きたいのですが、何もやることがないのです。僕はいま、僕の会社のために何をできると思いますか? あなたはカンタス航空のCEOなので、聞いているのです。

2つ目。航空会社を始める上で何かTIPSはありますか? 教えてもらえるととても嬉しいです。

3つ目。僕は、カンタスと同じように、エアバスA350でシドニー/メルボルンからロンドンへの路線をつくろうと思っています。

この路線は25時間の長いフライトになるので、お客さんの睡眠についていろいろ問題が出てきます。何かアドバイスはありませんか?

お返事待ってます!

アレックス・ジャコット
オセアニア・エクスプレス CEO / 設立者

アレックス少年がこの手紙をカンタスのCEOのアランさんに送った。
そしてそれに対して、アランCEOは、正式なカンタス航空の書簡として、下記の返信をしたのだ。

マネージング・ディレクター
CEO
アラン・ジョイス

2019年2月19日

親愛なるミスター・ジャコット

あなたの新しい航空会社について教えてくれてありがとうございます。業界に新しく参入する会社の噂は聞いていました。手紙をくれて、ありがとうございます。

まず、通常私は競合の航空会社にアドバイスをすることはありません。あなたの会社の法務部長にも確認してみてください。

しかし、今回は例外的にお答えします。なぜなら私も昔は、飛行機とその可能性について興味津々の少年だったことがあるからです。

航空会社を始める上で、私の一番のアドバイスは、安全を中心にすることです。そして、お客様が快適に旅をするために全力を尽くすことです。これは約100年続くカンタスのやり方です。

そして、あなたの21時間に及ぶフライトついての懸念については、私たちも取り組んでいるところです。私たちもちょうど、オーストラリア・ロンドン間のノンストップフライト計画「プロジェクト・サンライズ」を開始したところなのです。

お客様の睡眠のことも考えて、私たちはお客様がストレッチしたり運動したりできるようなキャビンのデザインを考えています。

お客様全員がより快適に過ごせるように、もっともっとたくさんのアイデアを考えていきたいと思っています。

ゆえに、私はあなたをこの「プロジェクト・サンライズ」についての会議にお招きしたいと思います。オーストラリアの一番古い航空会社のCEOである私と、一番新しい航空会社のCEOであるあなたとで、議論しましょう。

ミーティングの中で、航空会社を運営することについて語り合いましょう。

そして、あなたに、常に世界中のカンタスのフライトを監視するオペレーションセンターをご案内したいと思っています。

お手紙ありがとうございました。ミーティングでお会いしましょう。

アラン・ジョイス

訳していて、わりと本当に泣いた。なんていい話なんだ。

そしてツイートの最後には、この手紙を持ったアレックス少年の写真が掲載されている。

アランさん、なんていい人なんだ。オーストラリア行ったことないけど、行くときは絶対にカンタスを使う。私スターアライアンス派だけど、カンタスだけは例外だ。散々クレームの誤爆も食らってきたから、カンタスの良くない話もかなり聞いてきたけど、これで全部チャラだ。誤爆してくれなかったらこの話を知らなかったはずだ。ありがとう。

ともあれ、私はもうかれこれ6-7年くらいはこの誤爆に悩まされている。お詫びの印として、あるいは義兄弟の契りとして、家族でオーストラリアにご招待とかしてくれたら、またいい話になるかもしれない。カンヌ広告賞のブロンズくらい取れる。

いや、取れないかもしれないが、やってみる価値はあるので、どなたか知り合いにカンタス航空の方がいらっしゃったら転送してください。

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