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0928「プリキュアを凝視する」

週末に日本にいるので健康ランドに行った。日本のサウナにはテレビがついているところが多い。世界的にも、テレビを見ながら汗をかくのがスタンダードになっている国は日本くらいのものだろう。いや嘘で、台湾のサウナ室にはテレビがあるし、ロサンゼルスの韓国サウナでサウナ室にテレビが入っているところがあった気がする。

何はともあれ、昨日もテレビがあるサウナ室にいた。サウナ室のテレビのチャンネルというものを誰が決めているのかよくわからないが、恐らく結構適当に設定されているのだろう、たまにものすごくシュールな状況が生み出される。

サウナ室というのは基本的にいい歳したおじさんたちが集まる場所で、昨今の日本のサウナブームにより若者も多くなっているとはいえ、健康ランドなんかだとおじさんからおじいちゃんの層がまだまだ多い。私も43歳なので完全におじさんだが、明らかに私より年上の人たち、すなわち私にとってのおじさんが多いわけなので、おじいちゃんがたくさんいると言っても過言ではないだろう。

で、そんなおじいちゃんで満たされたサウナ室に流れるテレビ番組が、相撲とか、バラエティ番組とか、ニュースとかそういうものなら良いのだが、時間帯とチャンネルによってはこの視聴者たちにそぐわないものが放映されることになる。

昨日流れていたのは、「パウ・パトロール」だ。うまく表現できないが、かわいい犬たちによる警察チームみたいのが事件を解決する子供向けアニメだ。これは私にとっては意外だった。この番組は私が住んでいるアメリカでは大人気で、うちの子供たちも好んで見ている。幼児向けのアニメだと言っていい。日本語化されているとは知らなかった。いつも英語でしゃべっている犬たちが日本語でしゃべっていて、わりと驚いた。

犬たちがワンワン言いながら難題を解決する情景を、高温のサウナ室でおじいちゃんたちが取り囲みながらじっと見ている。

困ったことにサウナ室には他に特に見るものがないため、おじいちゃんたちが全員かなり一生懸命、「パウ・パトロール」を見る、ということになってしまう。室温も高いし、みんな真剣な顔をしている。眉間に皺を寄せている人もいる。

こういうことは、結構たまにある。いつぞやは、サウナ室で「クレヨンしんちゃん」が流れていた。おじさん、おじいちゃんが一生懸命「クレヨンしんちゃん」に見入ることになったわけだが、そこは「クレヨンしんちゃん」、たまに普通に笑いを誘う場面なんかがあったりして、そんなとき、おじさん、おじいちゃんたちが一斉にちょっと笑うのだ。はからずも、みんな「クレヨンしんちゃん」に集中してしまっていたことを証明してしまったようで、いたたまれなくなってしまった。

そして極めつけは、「プリキュア」だ。プリキュアがサウナ室に流れるとそこは完全に異世界になる。100度近い暑さ、湿気、おじさん、おじいちゃん、そしてプリキュアだ。水風呂・外気浴・プリキュアだ。いろんな人生、いろんな経験をして、今この狭いサウナ室にたどり着いたおじさん・おじいちゃんたちが、プリキュアを凝視する。プリキュアとにらめっこしている。

日曜の朝だ。今朝も、どこかのサウナ室でおじさん・おじいちゃんたちが集まって、プリキュアや戦隊ものを見つめているのだろう。

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