知らんゲーム③ / タンザニアで出会った知らんゲーム
「知らんゲーム」、すなわち、ルールを全然知らないゲームを人がやっているのを見るのは、ジェネラティブアートを見るような趣があって良いよね、という話の最終回だが、先月タンザニアに行ってきた際にも、いくつか「知らんゲーム」を見かけることがあってとても面白かった。
先日、タンザニアという国の価値観が法定通貨のお札の絵柄に投影されているよ、という話を書いた。
最大都市(首都ではない)のダルエスサラームで見かけた、謎のルーレットゲームみたいのは、この「動物至上主義(?)」っぽい感じに通じるものがあって面白かった。
ダルエスサラームの街に限らず、タンザニア全域には、掘っ立て小屋というか、道端にトタン屋根みたいなものをかぶせて鍋とテーブルと椅子を置いて営業しているような屋外食堂みたいのがちょこちょこある。
このゲームは、そんな掘っ立て食堂の隣にあった屋台売店みたいなものに設置されていたゲームで、タンザニアの若い人たちが集まって、めっちゃ盛り上がってやっていた。見ていると、結果次第で硬貨が放出されていたので、これはスロットマシン的なギャンブルっぽい。
この映像だとよくわからないが、面白いのが、各スロット(?)に描かれている絵柄がやっぱり野生動物になっていることで、これは、タンザニアの葬式道具を売っているような店なんかでも、やたらと野生動物を模したオブジェがあったりするのを見るにつけ、お札にしても何にしても、とにかくこの国は野生動物ドリブンであることがわかる(ずっと暮らしているわけではないので、あくまで軽く客観的に見た限りだが)。
ボタンを押す所作や、淡々とした表情、そして全く理解できないスワヒリ語が、このよくわからないルーレット状のゲームの神秘性を強めてくる。
数日後、ダルエスサラームから車で6時間ほど移動したパンガニ方面の海岸にある、ムクワジャ(Mkwaja)という町に夜行く機会があった。ムクワジャは漁師町であることもあって、ガッと漁に出てガッと魚を売ってガッと現金を手にしてガッと金を使う、みたいなところがあるらしく、小さい町なのに夜でも散発的に活気があって、集まってテレビを見たり、軽食を取ったり、だべったり、皆さん思い思いに、しかし楽しそうに夜を過ごしているように見受けられた。
ここで見かけた「知らんゲーム」も、かなりグッとくるやつだった。
謎のたこ焼き器みたいなボード(?)に、小石を謎のルールで散りばめていく。時として、人のところから石を取ってきたりする。全然ルールがわからない。所作も素晴らしくて、まるで銀だこの熟練店員がタコを1つづつたこ焼き器のスロット(?)に散りばめていくような軽やかな動作。そのへんの小石を道具として使っている感じ。その途上でちょこちょこ入る長考時間。そして全く理解できないスワヒリ語。これは「知らんゲーム」好きにはたまらない。こういうのはずーっと見ていられる。
後々調べてみると、どうやらこのゲームは、「マンカラ」というゲームの一種らしく、実はNintendo Switchのアソビ大全なんかにも収録されている競技らしい。しかし、ボードの形状なんかがちょっと違う。タンザニアの人に聞いてみたら「バオ」という名前のゲームらしい。
他にも、ムクワジャの道端では、恐らくお金を賭けてチェッカーをやっている人なんかもいたが、ボードの年季とかも含めて、風情があって良かった。
繰り返しになるが、「知らんゲーム」の何が良いって、「ルールがわからないから、全然理由がわからないんだけど、みんな楽しそうに盛り上がっている」というのもある。つまり、前々回書いたバックギャモンのように、「知らんゲーム」が「知ってるゲーム」になってしまったとしても、多くの場合、「だからこんなにみんな面白がってたのか!」と思えて、それはそれで良かった、ということになる。
そういう意味では、アメリカンフットボールなんかも、実は私にとって「知らんゲーム」的な趣を持っているもので、時間ができたら真面目に向き合ってみたい気もする。アメリカ人たちがあんなにも熱狂するのだから、それはもう面白いものなのではなかろうかと思う。