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部活と私|脱ぎ捨てて|箱森裕美

ヌギ

栗の花道着少しく湿りたり
てのひらに小手の逆らふ梅雨入かな 
夏つばめ手ぬぐいを広ぐれば海
黙想の想長々と夾竹桃
滴りのさかりに対峙してゐたり
炎帝に聞かせるやうに面といふ
五体判らず掛かり稽古や扇風機
道着脱ぎ捨てて飛び込むプールかな
8×4(エイトフォー)みんなで回すサイダーも
ささくれをしづかに削る夏休み

通っていた高校は女子高だった。剣道部に入っていた。
練習に使っていた自校の体育館が改装をする関係で、一時期、指導者同士が縁のあった近所の男子高に通い、一緒に稽古をしていた。
目線がまず高い。喉元を狙う竹刀がいつもより上を向く。気合を発する低い声が稽古場に響く。打ち込まれた面が頭の後ろまで届くような感覚。違うことばかりだった。
稽古が終わると彼らはよく剣道着を脱いで、そのまま稽古場の隣にあるプールへ飛び込んだ。すぐに泳げるよう、剣道着の下に水着を着て練習していたのだった。じゃばじゃばと派手な水の音。ふざけ合って笑う声。日が伸びてまだ沈まない太陽。とか。ぜんぶきらきらしていた。


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