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【解説#01】Advanced Course in Asset Management

University of Paris-SaclayのThierry Roncalli教授がAdvanced Course in Asset Managementという授業の講義資料を公開しており、ためになりそうでしたので自分の勉強がてら少しずつ解説(翻訳?)していこうかと思います。プレゼンは全部でなんと1,500スライド以上(とんでもない量!)あり、骨が折れそうですが頑張ります。

講義は全部で以下の5つのパートに分かれています。

  1. Portfolio Optimization

  2. Risk Budgeting

  3. Smart Beta, Factor Investing and ARP

  4. Green Finance, ESG and Climate Risk

  5. Machine Learning in Asset Management

どれも興味深そうなテーマですが、まずは10回くらいに分けてPortfolio Optimizationについて解説します。

アジェンダ

Portfolio Optimizationのアジェンダは以下のようになっています。


マーコヴィッツのフレームワーク

記法について
  • n個の資産のユニバースを想定し、ポートフォリオのウェイトベクトルを$${x=(x_1,…,x_n)}$$と定義します。

  • このときフルインベストメント(全て投資しキャッシュを持たない)となる場合、ウェイトベクトルは以下を満たします。

$$
\sum_{i=1}^{n}x_i=\textbf{1}_n^\top x=1
$$

  • 次に、n個の資産のリターンベクトルを$${R=(R_1,…,R_n)}$$と定義すると、ポートフォリオのリターンは以下のようにウェイトとリターンの線形和に等しくなります。

$$
R(x)=\sum_{i=1}^{n} x_i R_i=x^\top R
$$

  • また、n個の資産の期待リターンと分散共分散行列はそれぞれ$${\mu=\mathbb{E}[R]}$$と$${\Sigma=\mathbb{E}\left[ (R-\mu)(R-\mu)^\top \right]}$$と表現することができます。


1次2次モーメントの計算
  • これより、ポートフォリオの期待リターンは

$$
\mu(x) = \mathbb{E}[R(x)] = \mathbb{E}[x^\top R] = x^\top \mathbb{E}[R] = x^\top \mu
$$

となり、分散は以下のようにきれいに整理することができます。

$$
\sigma^2 (x) = \mathbb{E}\left[ (R(x) - \mu(x))(R(x) - \mu(x))^\top \right] \\
= (中略) \\
=x^\top \Sigma x
$$


効率的フロンティア
  • ボラティリティ制約のもとで期待リターンを最大化する問題($${\sigma}$$-problem)とリターン制約のもとボラティリティを最小化する問題($${\mu}$$-problem)は等価であることが知られています。


効率的フロンティア
  • (例1)4資産の期待リターンがそれぞれ5%, 6%, 8%, 6%、ボラティリティがそれぞれ15%, 20%, 25%, 30%、そして、相関係数行列がスライドのような行列に従っていると考えます。


効率的フロンティア
  • このとき、ポートフォリオのウェイトを1,000通りシミュレーション(?)してポートフォリオの期待リターンとボラティリティをプロットしたものがスライドの図となっており、左に出っ張っているような集合になることが分かります。


マーコヴィッツトリック
  • マーコヴィッツは2つの非線形最適化問題を以下のような2次最適化問題に変換しました(ただし、$${\phi}$$はリスク回避度パラメータ)。

$$
x^*(\phi)=\argmax{x^\top \mu - \frac{\phi}{2}x^\top \Sigma x} \\
u.c. \textbf{1}_n^\top = 1
$$

  • もし$${\phi=0}$$ならば、分散を無視して期待リターンを最大化する問題となり、$${\phi=\infty}$$ならば期待リターンを無視して分散のみを最小化する問題となり、後者を最小分散ポートフォリオ (MV)と呼びます。


γ-problem
  • 先ほどの問題はさらに以下のように書くことができます。

$$
x^*(\gamma) = \argmin{\frac{1}{2}x^\top \Sigma x} - \gamma x^\top \mu \\
u.c. \textbf{1}_n^\top x = 1 \\
with \gamma = \phi^{-1}
$$

  • これは標準的な2次計画問題(QP)です。

  • 最小分散ポートフォリオは$${\gamma=0}$$のケースと一致します。

  • 一般に、我々は$${\phi}$$-problemではなく$${\gamma}$$-problemの方を使います。


2次計画問題
  • 一般に2次計画問題とはスライドのような形式で表現され、線形制約のもとで2次形式の目的関数を最小化するような問題として定義されます。


2次計画問題
  • 数理最適化ソフトウェアでは一般的にスライドの養家フォーメーションを想定しているため、制約条件を少し工夫して記述する必要があります(等式制約は二つの不等式に分解したりしなければなりません)。


効率的フロンティア
  • 数理最適化ソフトウェアでポートフォリオ最適化問題を解くと、リスク回避度$${\phi}$$の関数として、スライドの青い曲線のような最適解を得ることができ、これを効率的(厳密には最小分散)フロンティアと呼びます。


最適ポートフォリオ
  • スライドの表はリスク回避度ごとに得られた最適ウェイトと期待リターン、ボラティリティになります。

  • リスク回避度が大きいと資産1,2,4(相対的に低リスク資産)のウェイトが高まり、小さいと資産3(相対的にハイリスク資産)のウェイトが高まるような解が得られていることが分かるかと思います。


今回はここまでにしたいと思います。内容としてはポートフォリオ理論の初歩といったところでしょうか。資料自体は結構行間があり、講義ありきのものである雰囲気が漂っていますが、何とか解読してこのシリーズを継続していきたいと思います!ここまでお付き合いいただきありがとうございました!


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