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百歳百冊「キュレーションの時代  佐々木俊尚」 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)

2010年代の時代を読むのに非常に有益な一冊。

この本を読みながらスポーツ、ドキュメンタリー、アニメ、ゲーム、映画と様々なソフトコンテンツをプロデュースをしてきた自分自身が、いまコンテンツ製作から離れ、「思いを伝える力を支援する」というテーマで電子黒板などを製作し、コラボレーション力とプロデュース力を21世紀の子どもたちに伝えるために働いているという事態を冷静に考えてみた。

コンテンツが王の時代は終わった。
これからはキュレーションの時代だ

その昔は神はひとりだった。印刷革命が起こり、神の声は世のなかに広く響き渡る。20世紀にレコード、ラジオ、テレビができて、100人の神が現れた。彼らはミリオンセラーと呼ばれた。
そして21世紀、インターネットができた。いまは、誰もが神に「なりえる」時代

今までは、情報の流通は大河のごとき一方通行だった。マスコミによる大河は止める術がないほどだった。しかし、インターネット以降、すべての枠組みが変わった。情報は小さな小路にわかれ、その小路は瞬間に切り変わる。

世界の情報はソーシャルメディアプラットフォームのなかで刹那的に消費され、多様な価値観の中で価値と無価値を瞬時に判定される。伝えるべき人に伝える方法が見えなくなった時代。

しかしである、希代の情報キュレーターである佐々木氏はこの情報の氾濫のノイズの海の中での航海術を示してくれる。

情報のノイズの海には、ソーシャルメディアプラットフォームの上に無数のビオトープが形成されていく。

90年代まで主流であった「記号型消費」「所有」の時代が終わり、これからは、クラウドとシェアを主流とする消費自体を不要とする無所有の動きが出てきており、大きく消費が分かれる。
消費本来が持つ、商品機能に基づいた消費と行為や場の消費。いわゆるコト消費である。

問題は、それらの2つの消費行為には今後は必ず
接続と承認の象徴としての共鳴を伴い、人と人のつながりが重要視されるということだ。

「エンゲージメント」という企業と人との契約が
今後ノイズの海を渡っていくコンパスになりうる。

その契約を持続的につなぎとめる共鳴と共感を生み出すオンラインとオフラインの継続的なつながりを
導くのが「キュレーター」であると佐々木氏は説く。

ある人物の視点から情報ノイズの海を見るとそこにひとつの航路が立ち現れてくる。「視座にチェックインする」ことでフィルタリングがかかるのだ。

「一座建立」
千利休が薦めた「場のあり方」のように
つくる人、見いだす人、使う人、主客一体の相互コミュニケーションが重要になる。

無数の情報の海の中から自分の価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、そこに新たな意味を与え、そして多くの人に共有する。

いまキュレーションの時代が始まった。

つまり、僕は「思いを伝える力を支援する」というテーマで情報の海に新たな意味を見つけようとしているのだ。コラボレーション力とプロデュース力を
21世紀の子どもたちに伝えるために。

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