50歳50冊 小説編

小説編 5冊

小説は最高の娯楽。
自分にとっては実生活のあとのお楽しみ、デザートみたいな存在でした。
自分の生活世界とは違う、物語世界に住む登場人物たちの人生を追体験することで
共に笑い、共に驚き、共に泣き、共に成長したのだと思います。
幾多の違う人生にトリップさせてくれる旅の道具が僕にとっての小説でした。

1. 1Q84 村上春樹

「 変奏曲 村上春樹」、日本に生まれた「偉大な作家」の集大成にして、最高傑作。

その謎の多い作品世界を読み解きたくて自分で初めての評論を書いた。
村上春樹の過去先品との比較の中から見えてきたのは、テーマとスタイルの変奏だった。
この「1Q84」で村上春樹は世界レベルの偉大な作家であることを自ら証明しました。
青春時代から30年、村上春樹を追い続けた事は自分の誇りです。

2. エデンの東 ジョン・スタインベック

長大な物語の先にある、たった一行に魂が救われる。

聖書の原罪の物語「カインとアベル」を巡る親子二代記。
物語の核心は「timshel」というヘブライ語にある。
中国人の執事がたどり着くその言葉の意味に、すべての登場人物が救われる。
その一行が、我々に問いかける、自由の意思と神の恩寵の深い解釈に心が震える。

3. ガープの世界 ジョン・アービング

ガープは存在する。まさに私はガープの人生を共に歩んだ。

信念の女性によって、父親不在の不可思議な形でこの世に産まれたTS・ガープの一生。
ガープの人生はアクの強い周囲のキャラクターに囲まれて強烈なハーモニーを奏でる。
そのハーモニーの全体テーマは「命と死」であり、家族や友人が数多く失われていく。
信念と生命を秤にかけるような登場人物たちの行動の数々に我々も戸惑い、泣き、悩む。
それでも人生は続く。我々はその死から何かを学び続ける、人生が続く限り。

4. フリッカー、あるいは映画の魔 セオドア・ローザック

映画 ✖ 小説 の大傑作。虚実皮膜とはまさにこの作品。

映画界の「禁断の木の実」を巡るミステリーで、
オーソン・ウェルズまで登場する映画内幕モノあり、
映画史のトリビアあり、年上の女性からの性の手ほどきあり、
カルト教団までが絡まる空前絶後の物語です。

5. ケインとアベル ジェフリー・アーチャー

ストーリーテーリングはジェフリー・アーチャーから学べ。

ジェフリー・アーチャーはデビュー作「百万ドルを取り返せ」以来、希代のエンターテイナーだと思う。
その中でも「ケインとアベル」サーガは、長い物語を徹夜で一気に読ませる面白さがある。
アーチャーはこの作品でストーリーテーリングについて何かの秘術をマスターしたのだと思う。
続編の「ロスノフスキの娘」もまさかそうつながる!って展開で、伏線の張り方が抜群に面白かった。


実読のビジネス書とは違い、小説は趣味が色濃く出るところですが、
50歳にして人生の5冊を選ぶならこれというセレクションをしてみました。
選んでみると見事に「別の人生のトリップツール」ばかりになりました。
短編は入らず、骨太の大長編ばかり、
読み込んだ「ダヴィンチ・コード」も「極大射程」も「薔薇の名前」も選外でした。

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