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あのバカにタイカンを乗らせてみた

都の西北にはバカを生み出す装置がある。

例えば俺だ。赤坂見附から四谷まで歩く間に尿意に負けて放尿したことがある。かの福沢諭吉翁は罰が当たるか試してみようと鳥居に小便をかけたことがあるそうだが、俺は東宮御所にかけたら、お巡りさんにめちゃ怒られた。

愛すべき先輩Wは「出会えない出会いサイト」を発明した御人でもあるのだが、解体バイトなど人がやりたくない仕事も趣味にしていて、孤独死の現場撤収バイトをしたときに、エルトンジョンのベストを拝借したという。
「お前にあげたCDの中にあるよ」と聞いたのはその四年後のことだった。

そして、俺らの上を遥かに行くバカが親友Mである。

一緒に起業したわけだが、奴は好きな仕事しかしない。
俺がコツコツ、好きでもないガラケーメーカーの仕事を積み重ねていく間に、奴はホンダ好きという理由で本田技研の仕事をとってきた。

その後、Mが新しく立ち上げた会社は、95%がクルマ関係の仕事だったそうで、リーマンショックと、震災時に、それぞれキャンペーン案件が飛び、債務超過で「ひこうき雲」のごとく消えた。

今回の再会のきっかけは、無敗の三冠馬の引退試合をたまたまテレビで見かけて、「お前の会社名の馬が出てるぞ」というメッセからはじまった。

ひょんなことから、「テスラはいいクルマだ」とMが言うので、俺は「テスラはandroidみたいにもっさりしている」と反論。タイカンに乗ってから良いクルマかどうか判断しようということになった。

そして昨日。3年ぶりに再会。ポルシェセンターに向かった。
奴は、Youtube動画でかなり予習したらしく、もし車を買うんだったら、ここの常務からクルマを買いたいと言っていた。

そして試乗前。何か質問ありますかと言う時に、奴はずいぶんマニアックな質問を3つ程していた。残りの2つは既に忘れたが、一つはブレーキについてだった。テスラとどう違うのか、先方に詳しい説明をうけて、奴の目は輝きを増した。

先方はポルシェプロと呼ばれる日本で5名しかいない、ポルシェに詳しい人だった。競合になる車についても、やたら詳しい。Mと話が合う。

試乗コースも、Mの質問に答えるような道を選んでくれて、Mはご満悦だった。

最後に、「テスラよ。ごめん。君は無しだ」とMはつぶやいた。


Mは前の会社を潰してから、ここ3年、ウーバーイーツの配達員をやっている。バイク好きの奴にとっては天職である。今まで、ピザーラやバイク便など様々な運び屋をやっていて、その集大成ともいえる。

そして来年早々にも、バイクの配達員向けのサービスを立ち上げるそうだ。
内容は詳しくかけないが、これも奴にとっては天職。絶対成功すると確信した。

今思い出したが、奴と出会ったのはローソン牛込店。
出会って早々に、「飛行機のパイロットになりたいので辞めます」とオーナーに言ってやめた。オーナーはその言葉をずっと信じていた。
おそらくまだ信じているだろう。

そんな奴に本田ジェットをプレゼントするのが俺の夢である。



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