【銘柄素描】サンケン電気①

 以前から気になっていた銘柄、サンケン電気について少し調べてみました。2022年の秋以降、急激に株価が上昇していましたが、案の定14,000円で天井を売って下落。知らない間に急騰前の水準まで下がっていました。株、恐るべし。
 サンケンの株価上昇を嫉妬のまなざしで見ていたのだが、その理由は、サンデンの事業領域が、ニデックと重っていたから。サンケンも白物家電、車載向けの半導体を主力事業とし、モーターに使用されるパワー半導体に強みがある。サンケンの上昇期間はニデックは中国のイーアクスル事業の赤字が止まらず株価下落している期間に重なっており、悔しいのなんのその。結局元の株価にもどって私の恨みも晴れました(にっこり)。

月足の株価。4000~6000円のレンジで推移していたが、2022年11月から急上昇を始めた。

 ずっと長いこと下落していましたが、5月30日に5100円を割ったところから反転し、5月31日にはなんと+8%の上昇を伴って引け。特に何もニュースはなかったと思いますが、月末のリバランスが一つの理由かなと思っています。後述しますが、5000円以下ではエフィッシモ、オアシスといった投資ファンドがかなり買っており、岩盤に達したのかもわかりません。

5/29~31の推移。5100円で底を打ち、2日で10%以上も上昇した。

売っていたのは誰なのか

23年8月以降サンケン電気は暴落するが、大量保有報告で誰が売ってたのか確認をしてみます。

23年 6月15日 ウェリントン 4.82→0.00%
23年 7月14日 パーシファル 5.14→4.01%
23年 9月27日 UFJモルスタ   1.68→0.07%

 パーシファルは22年11月18日に5%(128万株)の大量保有報告を出している。これは23年8月までの上昇の入り口にあたり、きれいに「安く買って高く売る」をやってのけている。おそらく23年7月以降も売り切っていたのでしょう(そのあとは保有報告が出ていないので確認はできず)。

主要大株主、エフィッシモとオアシス

 サンケン電気の大株主といえば、エフィッシモとオアシス。この2社の動向についておさらいしてみます。まずはエフィッシモ。

2021年2月8日 エフィッシモがサンケン電気に対しTOB1株5205円。こちらが当時の日経新聞の記事。

<エフィッシモの大量保有報告>
2018年12月14日 0.00→ 5.06% 2400円前後
2019年12月13日 5.06→ 9.58% 2000~3000円
2021年 3月24日 9.58→19.16% 2000~5000円

 2020年の1年間で相当仕込んでいたことが伺える。この間はコロナ暴落時にもあたり、1800~5000円と値幅があるものも、かなり安い位置で仕込んでいたようである。記事には2017年から株の取得を始めたとあるが、しっかり継続して拾っていることがわかる。次に、オアシス。最近では、オアシスは2023年3月に大量保有報告を発表。

<オアシスの大量保有報告動向>
  
2019年11月19日 0.00→5.43% 2200~3000円
2020年 2月 7日 5.43→6.47% 2500~3000円
2021年 3月24日 6.47→1.20% 2500~5700円
2022年11月 2日 0.00→6.77% 4300~5500円
2023年 2月24日 6.77→7.81% 5300~9000円

 20年2月→21年3月には2600円→5700円と見事に2倍以上になっており、この間にオアシスは売り抜けていたことになる。おそるべし。しかし、22年11月までには再び、少なくとも4300円以上で買い直している。オアシスが一度売却した期間は、株価が急騰しており、彼らの算定した企業価値を大幅に超えていると判断したのでしょうか。23年2月にはさらに買い増しています。この時は5300円~9000円とかなり高いところで買っているので、サンケンの将来に強気だったのでしょう。ところで14,000円まで急騰する場面では、オアシスはなぜ売らなかったのだろうか。よくわかりません。

 ちなみに、オアシスは2019年からサンケンに対し、改善提案を行っておりA Better Sankenというホームページを開設して、提案などをまとめている。5年前ではるが、これが大変にわかりやすい。ホワイトペーパーはこちら

もう一人の大株主、ニデック

 実は、冒頭で触れたニデックも、サンケンの大株主の1社でしたが、23年6月時点では大株主から消えてしまっています。ニデックは2021年3月末時点から大株主となっており、コロナ暴落後の2000~5000円の間で買っていたと推測できます(オアシスが売っていた期間と重なるのは何か関係があるのでしょうか)。2023年6月末時点で株価は1万円を超えているので、見事に高値で売り抜けたようです。ニデックの事業とサンケンの事業は冒頭触れたように密接な関係にあり、意図をもって資本参加したと考えられますが、ニデックの業績悪化に際して、現金化されたのでしょうか。ニデックは半導体の内製化を視野に入れており、EV用のパワー半導体に力を入れているサンケンは、買収候補だと私は思っています(1,500億円という時価総額もまあまあ手頃)。

サンケンレポート2021より
2023年6月30日付コーポレートガバナンス報告書より。ニデック(旧日本電産)は消えてしまってている。

 さて、サンケン電気の大口動向についてみてきましたが、14000→5000円の暴落の間も、エフィッシモとオアシスは売却していませんでしたので、長期的な視点で購入していることが予想されます。投資ファンドやニデックなどいくつかの大株主は売却をしていたことがわかりました。エフィッシモとオアシスが売却しないのだとすれば、今後大きく下がる可能性は低そうです。次回は、業績を見ながら、株価水準について考えてみたいと思います。

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