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三井E&Sの株価の妥当性を考えてみる。

今日は三井E&Sの株価について考えてみました。アメリカ全土の港湾クレーンの更新という材料で一時は3,000円をつけた三井E&S。港湾設備の更新のために3兆円もの予算がつくのでは無いかということで確かに期待されるところだが、実際どの程度三井E&Sに恩恵があるのだろう?ということで、少し考えてみました。

まず、クレーン1基あたりの単価。これについてはベトナムの案件で30基で150億円というニュースを見つけたので、これを使っていく(1基あたり5億円)。

23年度2Q資料より

次にアメリカにどのくらいクレーンがあるのか。まず、国交省の資料によれば主要港のガントリークレーンの数は以下の通り。

国交省「令和3年4月23日 国際コンテナ戦略港湾政策推進WG (第3回) 資料2」より

アメリカ最大のコンテナ取扱港であるロサンゼルス港は、マレーシアのタンジュンペラバスとTEUベースでほぼ同じ。なので、ロサンゼルス港のクレーン数を60台と仮定する。

15、16位にそれぞれタンジュンペラバス港とロサンゼルス港となっている。出典は https://www.phaj.or.jp/distribution/earth/top100.html

ロサンゼルス港は、次のサイトによればTEUベースでアメリカ全土の17%を占める。であれば、アメリカ全土のクレーンは60/0.17≒350基と推計できる。1基5億円なら、1750億円の需要があるということになる。こうやって計算してみると、3兆円の予算、という数字に対しかなり少ない印象を受ける。

https://www.logisticsmgmt.com/article/top_30_u.s._ports_big_ports_got_bigger_in_2020

今回、バイデン政権はこのクレーンをアメリカで作らせたいと思っていることから、少なくとも最終組立はアメリカで行われるだろう。そこはコスト増になる。ベトナム向けと値段が同じとは思えないので、かなりエイヤーだがざっくり2倍の単価で売れるとしよう。そうすると総需要は3500億円である。これが5年間にわたって発生するとすると、年700億円の売上増となる。低採算で受注する必要はないので、当期利益率15%で取れると仮定しよう。そうすると約100億円/年の当期利益押し上げ効果が発生するということになる。

中期経営計画では、2025年の目標が営業利益ベースで170億円である。当期利益ベースだとどうなるかわからないがとりあえずこれに100億プラスと考えると、増率で+60%といったところか。少なくとも、利益は2倍にはならないということだ。

4/12引け後の株価

さて、株価である。このニュースが出る前がちょうど800円で、これをベースに考えても、+60%なら1280円、+100%で考えても1600円で、今の株価水準はそれを上回っているから、既に割高と判断できる。間違っても高値の3,000円を超えていくような展開にはならないだろう。

だからと言って売る気にもならないが、少なくとも長期で持つのでない限り、あるいは短期売買と割り切るのでない限りは、エントリーするべきではないだろう。

3兆円という予算規模がインパクトが強かったわりには計算してみると大した恩恵がないという印象であった。

そもそも、この予算パッケージはバイデンが選挙対策で講じるものだろうし、選挙が終わり、予算化される必要がある。先の長い話であり、株価はもう少なくとも1〜2年先を織り込んでいることになる。そもそも、このクレーン更新が三井E&Sの特命案件なのかは定かではなく、たしかに三井E&Sのアメリカ子会社のPACECOの名前が上がっており、かなりを三井E&Sが受注する可能性が高いが、普通に考えれば他メーカーとの競争入札になるはずで、不透明感は強い。

いったいなにを織り込んだら3,000円なんて株価になるのか。ほんとうに株式市場とは恐ろしいやつである。

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