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心を豊かに

子どもが生まれてから初めて、大好きなカフェに一人で行く時間をもらった。

夫も育児に協力的で、子どもも今のところ順調に育ってくれていて、大変な日もありつつ楽しく子育てをできているほうだと思う。

しかし一人の時間というものがすっかりなくなってしまった。
子どもが寝ていても次起きるまでに何しようとか、起きる時間を逆算して先回りでこれを用意しておこうとかそんな調子。
のんびりする時間というか、ゆっくり手を止めてボーッとして何かを考える、という私にとっての至福のひとときがないのだ。

母親になったら当たり前、そう割り切れてはいたけれど、やはりプツンと糸が切れてしまう瞬間というのはどうしてもあるもので、先日溜め込んだものが爆発して子どものように泣きわめくという事件が発生した。

何がしたいのかな、と考えても思い浮かばないほどになっていたけれど、泣いて騒いでご飯を食べてふと思い浮かんだのが
「一人でカフェに行きたい」
だった。

言ってお願いしておかないと私はまた我慢してしまうと思ったので、夫にその日のうちにお願いして、夫の次の休みに子どもを夫に預かってもらってカフェに行かせてもらうことにした。

行きたいカフェは最初から決まっていた。
学生の頃からずっと好きなカフェ。
未就学児はお店の中に入ってはいけないきまりになっているし、そうでなくともお店の雰囲気を壊したくないから子連れでは行かないと思う。
昨年末にテイクアウトで利用したけれど、やはり店内でゆっくりしてこそだなという気持ちはあった。

夫も気に入ってくれているカフェなので、自分ひとりだけというのは少し申し訳ない気もしたが、日々頑張っている(はずだ)し、今度は夫に譲ることにして今回は行かせてもらおうと思った。
(当日バタバタして諦めかけたのは内緒)

雨が降ったり止んだり。ぐずついた天気だったが、好きなカフェに行くのにはちょうどいい。
あまり混雑していなくて、気兼ねなくのんびりすることができるから。
思い出してみれば、晴れた日より雨や雪の日、風が強くて外出に向いていない日のほうが、チャンス!と思って好きなカフェに行っていた。

お店が営業していることをInstagramで確認し、お店へと向かった。
見慣れた景色なのにどこか新鮮な気がした。一人で歩いたのはいつぶりだろうか。

お店の看板の前。
この看板を見ると「来たな」と思う。
何度も何度も昇った階段を一段ずつ昇り、傘立てに傘を入れ、お店のドアを開ける。

「帰ってきたな…」
自分の家ではないのに、なんだか懐かしくて嬉しかった。
全てが心地よかった。

注文をして、近くにあった仙台のカフェ集を手にとってパラパラとページをめくる。
たしか2-3年くらいのペースで出版されていて、学生の頃はよく買って読んでいた。

9割方知っているカフェだったが、このお店載るようになったんだ、今こんなメニューあるんだ、そっかこういうコンセプトなんだ…などあれこれ発見があった。
今人気のカフェってこの要素かあの要素が入ってるんだな…と考え事をしたり。このキャッシュレス社会でもキャッシュレス決済不可のお店はまたまだ多いんだな、と感じたり(お店の情報欄に表記があった)。

注文したのはコーヒーとチーズケーキ。どちらも期間限定。
迷ったのだが、私はコーヒーとチーズケーキの組み合わせが大好きなのだ。
最初はコーヒーをひとくち。次にチーズケーキをひとくち。
そのチーズケーキの余韻がなくなりきらないうちにもう一度コーヒーを。
するとひとくち目のコーヒーの味わいとはまた別の味わいになるのだ。それが面白くてどんどん飲んで食べて…を繰り返してしまう。
元々コーヒーにお砂糖やミルクは使わないけれど、チーズケーキがあるとお砂糖やミルクがなくてもそれだけで味わいの幅が広がって好き。

カフェの本を読んだり、ぼんやり考え事をしたり、ゆったりとした時間が流れていった。
こんなに静かで穏やかな時間はいつぶりだろう。
日常に追われていてすっかり忘れていたけれど、こういう一人の時間は私にとってかけがえのない大切な時間だった。

ずっと息苦しい感じがしていたけれど、それがスッキリとして霧が晴れたような気分になった。
また明日から、いや次の一歩から頑張れそうな、そんな気がした。

帰る直前に、一人の時間をくれた夫にお土産でコーヒーを持ち帰り用にお願いした。
お店に来るまではそんな発想もできないくらい余裕がなかった。
やっぱり心の余裕は作っておかないと思考の柔軟性が落ちてしまうな、そんなことまで考えられるようになった。

コーヒーを片手に街を歩きながら考えた。
最近夫にあれこれきつく言い過ぎていたな、もっと穏やかになろう、なにか伝えたいことは柔らかい言葉に言い換えよう。少しくらいは目をつむろう。私も相当許してもらっているのだ。

久しぶりの一人の時間。心が豊かになった。
こんな贅沢な時間を与えてくれた夫と、その時間を存分に堪能させてくれたお店に感謝。

なかなか難しいけれど、少しでも思考にゆとりを持って、心の豊かさを忘れないようにしたい。

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