見出し画像

エリカの暴露 第2話 「運命の出会い」



 自分ほどの美貌があれば、すぐに人気になるとエリカは思っていた。

 だが、現実はそう甘くなかった。

 エリカからすれば、メンズエステで働いている女たちは綺麗でもなんでもない。


 「中の下」か良くて「中の中」だ。


 それなのに、自分よりも遥かに容姿が劣っていて、太っていて、コミュニケーション能力も低そうな女たちが本指名客を取っていた。


 メンズエステの世界にいるから、ちやほやされるような子たち。


 確かに以前いた風俗店の女たちと比べれば随分マシではあるが、それでもこの女たちがなぜ自分より売れているのか、さっぱりわからなかった。




 特に、店で一番人気のある、"あいり"という28歳のセラピストが最も不可解だった。


 ホームページやツイッターに載せている写真ではあまり美人だとは思えない。


 それに28歳じゃ年齢もまあまあいっている。


 それなのに、あいりはたとえ台風の日でも事前予約でいっぱいで、出勤の予定を店のホームページに載せると、1時間以内に2週間分の予約が一気に埋まる。


 エリカも本指名客は取れているが、あいり程の人気はなく、お茶することも(※1日に客が1人もつかないこと)チラホラあった。

 なにより部屋に置いてあるパソコンで、店の予約状況をセラピスト全員が確認できるので、出勤するたびにあいりの予約でいっぱいになった出勤表を見るハメになり、とても腹立たしく思っていた。



 エリカとあいりは12時から20時という同じ時間帯に出勤しており、普段顔を合わせることがなかったが、ある日あいりがたまたま遅番で、エリカと同じ部屋を使うことになり、初めて顔を合わせた。




 あいりは蛙のように目が離れていて、口がやたらと大きく、なにより地味な顔立ち。思っていたよりもブサイクだった。


 年齢もプロフィールよりずっと上な感じだ。



(この女、客とセックスしている)



 水商売の世界に長くいるエリカはすぐに感づいた。


 そうでなければ、こんなに人気が出るわけがない。



 エリカは元来負けず嫌いである。


 自分よりも遥かに容姿が劣っている女に負けるのが悔しかった。


 そして、なんとしてでも、あいりよりも人気になってやろうと心に決めた。






 そんな時、客としてきた30代後半の経営コンサルタントの男との出会いがエリカを変えた。






 予約の時間通りにインターホンがなり、モニターを見てみると、30代半ばくらいの背が高くて、顔の彫りの深いスーツ姿のイケメンが立っていた。



 解錠をして、2分後にもう一度チャイムがなった。

 エリカは玄関の扉を開けると、爽やかな笑顔と共にほのかにシトラスの爽やかな香りが入って来た。



(この人好きかも)


 エリカの心が浮き立った。


 すぐさま彼の指を見てみると、左手薬指に指輪がはめられている。


 結婚しているくらいがちょうどいい。


 面倒な関係にならない。


 それに、エリカにも金目当てだけど、一応彼氏はいる。


 エリカは最大の笑顔を振りまきながら、



「お鞄お持ちします」



 荷物を手にし、もう一方で彼と手繋いで奥の部屋まで案内した。



「ありがとう。あ、手冷えてるね」



「すみません、さっき手を洗ってて」



「いいんだよ。手が冷たい人の方が好きだから」



 彼は白い歯で笑顔を向ける。言葉の端々からも自信があるのだろうとわかった。


 自分と同じにおいがした。






 ソファに座ってもらい軽い自己紹介をする。


 客は萩原と名乗った。



 会計の際に取り出した財布はエルメスの黒いワニ革で、中には万札がびっしりと詰まっていた。

 近くで見ると、光沢のある黒いスーツからも高級感が漂っている。どう見てもハイブランドの高級スーツだ。




 シャワーを浴びてもらい、部屋に戻ってきた萩原にマットの上に横になってもらうよう指示した。

 施術を始めようとすると、


「マッサージはしなくていいよ」


 萩原がエリカの横に座り、肩を抱き寄せて言った。


「え?」


 エリカは自分の耳を疑って、聞き返した。


 中には何度か来ている客で、今日はマッサージを受けないで話しをするだけでもいいという場合もあるが、最初からマッサージを受けなくてもいいと言ってくる人には出くわしたことがなかった。



「わかりました。じゃあ、何をすればいいですか」



 エリカが聞くと、エリカの唇は萩原に塞がれた。





 それからはマットに雪崩れ込み、事に及んだ。


 メンズエステで金を貰ってヌキをしたことはあったが、セックスまでしたのは萩原が初めてだった。

 続く....

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?