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スタートボタン/ストップボタン(同意確認行動)


歯磨き/爪切り/耳掃除/ブラッシングなどのホームケアを愛犬にとって心地よく自ら協力してくれるものにしよう

私はコーポレーティブ(協力的な)ケアと呼んでいますが、多くのトレーナーのみなさんが今”ハズバンダリー”と言っているものを、更にもう少しエシカルにする、とても新しいコンセプトです。(2020年執筆なので今ではずいぶん日本でもよく聞かれるようになり嬉しいです!)

(今回は「コンセプト」がメインのお話しです。チンレスト/ターゲットetc “行動そのもの” を教えたいという方はまずコチラをどうぞ)

スタートボタン行動(同意確認行動)とは…動物から人に意思を伝える合図の行動です。

主に、歯磨きや爪切りなどの様々なホームケア、動物にとってなにか怖かったり痛かったり嫌悪する”可能性”がある行為を人が行うときに、それを受け入れる準備ができているかどうかの同意を取るために使われます。

私たちが犬の訓練(トレーニング)ときくと、犬に人の命令をきかせるというイメージがまずはじめに浮かんでくると思います。

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「おすわり!」
という指示(キュー)で、犬が座る。

例え、座った後におやつをあげたとしても、確かにこれだけでは人間から犬への一方通行の指示(コミュニケーション)です。

これからご紹介するスタートボタン/ストップボタンは「人から犬」だけなく「犬から人」のコミュニケーションをおおいに推奨することで、相互の会話を成立させようと試みる新しい動物のトレーニングの形のひとつです。

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動物のトレーニングの世界は、
一方通行の「トレーニング」ではなく、人と動物お互いが、お互いの言葉を学び、またお互いに話しやすい合図を決めて意思疎通する「コミュニケーション」の模索におおきくシフトしています。

何のためにスタートボタン/ストップボタンを教えるの?

動物に選択肢と主導権を与えることで、よりケアに協力的になりやすいから。

スタートボタン/ストップボタンを導入することによって動物が、嫌悪感を抱きやすいケアにもより協力的になる理由は…?

ひとつ例え話をしましょう。

あなたが歯医者さんに行くことになりました。

しかし歯医者さんに行くというのとはあなたにはわかりません。これから何をされるのかもわからず、拘束され、とつぜん口をこじ開けられ、機械を突っ込まれる場合。

この治療のあとに自分にとっていいことがある(虫歯が治る)という利益を知っていてモチベーションがあり、これからどんなことが起こるか説明してもらえて、
「準備ができたら、口をあけてください。痛かったら、右手上げてくださいね、一旦止まりますから」と言ってもらえる場合。(しかも歯医者さんは大大大好きなあの人…♥️)

治療そのものは変わらなくても抱く恐怖感や嫌悪感は大きく変わってくるとおもいます。(私も、歯医者は大嫌いですがジョニーデップが優しく歯石をとってくれるなら、毎週駆けつけます)

つまり…

自分から口をあけるまではじまらない。→スタートボタン
一旦休憩したいと思ったときにはいつでも右手を上げれば止まってもらえる。→ストップボタン

なのです。

そして、動物には歯磨きなどの長期的な利益(例えば虫歯にならない)はわからないので、おやつをあたえるなどして、歯磨きするといいことがおこるという動物にとっての利益(いいこと)を人が提供してあげるようにします。


ホームケア(歯磨き/爪切り/耳掃除など)のあるある

犬は常にボディランゲージで会話をしています。ただし人はどんなに頑張ってもどうしても犬のボディランゲージを読むのが下手くそです。

多くの飼い主さんが、愛犬の発している
小さな「怖いな、嫌だな」になかなか気がつくことができません。

いきなり英語がペラペラにならないように犬語が達者になるにも、時間がかかるものなのです。

そして、ついついあとちょっとと、無理矢理やってしまいます。
そうすると、せっかくの信頼関係が崩れてしまいます (呼んでも来ない、逃げる、触れると緊張する嫌がるetc)

または、動かないことを嫌がってない/慣れたと勘違いし、犬が耐えるしかない状況になっていることに飼い主さんが気づけていないこともあります。
そうすると、あとあとになってだんだん嫌がって 逃げたり暴れたり口が出たりしはじめ、大きな問題につながることも多くあります。
人にとっての問題行動に繋がらなくても、愛犬が学習性無力感※1に苦しむ場合も。(精神的苦痛 生活の他の部分にストレスによる悪影響)

★まずはストレスシグナルが出ていないかボディランゲージをチェックしてみてね

https://drive.google.com/drive/mobile/folders/0B2efy8iArMEmcVM4VVlfV1cwOG8?usp=sharing

ケアのやり方でよくあるのが、どんなふうにおさえるか、を練習してしまうこと。

嫌がる犬を「上手に抑えるテクニック」※を飼い主さんが練習しては危険です。
例え暴れなくなっても、「そのケアが嫌だ」という気持ちは一生そのままその犬を苦しめ続けます。
(※高い台に乗せて身動きできないようにする/マズルや身体を物理的に抑えるようなテクニックは、あくまでもでも獣医師やトリマーさんが、やむおえず行うテクニックと捉えてください)

日々のホームケアに大切なことは…♥️

信頼関係を壊さないように行う
そのケアが「怖い」「嫌だ」という気持ちをケアすること
自発的に協力してもらえるような優しいケアの導入の仕方を工夫し取り組むことです。

何より、怖いものがひとつでも減るようにコミュニケーションをとっていくことが大切だと考えます。怖いものがある、それに日々怯えなくてならないということは犬のQOL、心身の健康そのものにおおきく関係のあることです。

どうしたらいいの?
⬇︎
スタートボタン/ストップボタンのコンセプトを取り入れてみよう!
すでに嫌な印象がついているケアにはDS-CC(拮抗条件付けと系統的脱感作)※2
をしよう。

★すでに嫌な怖い印象があるものを、やみくもに繰り返し行っても「だんだん慣れて平気になってくる」ことはほぼなく、問題が出てくるリスクがとても高いのです。

※1、※2についてはトレーニングのしくみのセミナーで詳しく解説しています


スタートボタンの行動

動物が、実際の「ボタン」を押す必要はありません。
●手に顎をのせるチンレスト
●バケツを見る(チラグパテル氏のバケツゲーム)
●何かに鼻でタッチするターゲット  

●前足を台のうえにのせること

など、さまざまな行動をスタートの合図として使うことができます。
これは動物が積極的に「何らかの行動をとる」合図である必要があります
「そこから動かない」などはスタートボタンの合図としてふさわしくありません
ストップボタンの行動は、チンレストから顎をあげる、バケツから目を逸らす、ターゲットから鼻を離すなど動物が自然ととりやすい行動がいいでしょう。

歯医者さんでの
「準備ができたら、口をあけてください。(スタート)
何かあったら、右手上げてくださいね、一旦止まります (ストップ)」

を、動物に言葉で伝えることはできないので、口をあけることにあたる行動そのもの(チンレストやターゲット)のやり方を事前に教えてあげて、それからそれがどういう意味を持つのかという「コンセプト」を言葉以外の方法で伝えなければいけません。


これは、台のうえや私の膝のうえに顎を乗せることをスタートボタンとして、ブラッシングをしている様子です。

スタートボタンの行動そのもののやり方を教えることは、おすわりを教えるのとおなじようにシンプルです。

行動を教えることに手助けが必要な場合はまずこちらhttps://note.com/pwithp/n/nd230cfaa2f8a

トレーニング(正の強化で犬になにかを教えること)をしたことがない方向けに基礎が詰まっています。カチカチ鳴っているものはなぁに?という方はぜひ上の記事を併せてご覧ください。

(※こちらのスタートボタン/ストップボタンはトレーナーさんや、ある程度リワードベースのトレーニングをしたことがある方向けの難易度かもしれません。全くのはじめての方はぜひプライベートレッスンでお尋ねください💕)


それでは、「準備ができたら教えてね、止まって欲しい時には教えてね」という、「コンセプト」を動物に伝えるために、大切な約束ごとをご紹介します。

(有料コンテンツのなかで、テキストの他に、コンセプトを教える過程の動画、ストップと言われた時の対応の動画などが含まれます。また、「協力してくれないならおやつはあげない」ではない真の選択肢 の作り方ついてご説明しています。私ははじめてこのコンセプトに出会ったとき、大きく考え方、犬への接し方が変わりました。)

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コンセプトの大切な点
双方向のコミュニケーションであること
「やる」か「やらない」かは犬が決める
犬に真の選択肢があること

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