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クリームソーダについて考えながら私はカツサンドを待っていた

幼少の頃からスイカは好きだけどメロンが嫌いで、メロンの名前を冠するメロンソーダとその延長線上にいるクリームソーダを毛嫌いしていた。
鮮やかな緑色をしたソーダ水にぽっこりと浮かぶアイスクリーム。
ソーダとアイス、子供が好きな二大巨頭を一挙両得に得られるこの飲み物を飲める人が羨ましかった。
子供心に「メロンが食べられたら飲めたのに」と悔しがりながら見ていた記憶がある。
恥ずかしながらある程度大きくなって、どうやらこのソーダ水はメロンの味がしないらしい……と気がついた時は自分の無知を恥じたものだ。

浅草にある喫茶店、銀座ブラジル。
昭和レトロな雰囲気漂う素敵な喫茶店へ入って料理の提供を待っていたら、後からご婦人方が二人やってきた。
メニュー確認もそこそこに「クリームソーダとコーラフロートをくださる?」と優雅に注文する彼女たち。
スマホを弄るフリをして周囲の話に聞き耳を立てていた私は、クリームソーダとは言うけれどクリームコーラって聞いたことないなと間の抜けたことを考えていた。
(日本津々浦々、探してみたらそんなメニュー名のコーラフロートもあるかもしれないけど……)

中学か高校生になった頃だろうか。
どうしても誘惑に勝てなくて、飲みきれないかもしれないと警戒しながらクリームソーダを頼んでみた。
なんでそう思ったかの理由は忘れた。ただ、あの魅力に負けたのだと思う。
飲んだ瞬間の感想は、うわっ甘い。
甘い物が得意じゃない人間が飲んだのだから、当然の反応だった。
アイスの上に乗った缶詰めのさくらんぼは、意外と味がしないと思い知ったのもその時だ。
けれど、それと同時に知った。
氷面に接し続けたアイスの底がシャリシャリして美味しいということと、アイスが溶けてソーダに混ざると味変が起こって二重にも三重にも楽しめる飲み物だということを。
今だから言える。クリームソーダは美味しい。
あとメロンの味はしない。

私よりも後にやってきたはずのご婦人方は、私の料理が出てくるよりも先にクリームソーダとコーラフロートを飲み終えて去っていった。
去り際に店員さんたちと昔話を楽しんでいたあたり、長く続いているこの喫茶店に懐かしい思い出があるのだろう。
弾んだ声が耳に心地よくて、思わずひっそりと微笑んだ。

――なんてことを書きながらカツサンドを待っていたら、ようやく一緒に頼んだ紅茶が出てきた。
って書いてたらお目当てのカツサンドも出てきた。
いただきます!

追記:カツサンド、滅茶苦茶美味しかったです……!

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