彼の流儀、私のスタイル。
我が家には2匹の猫がいる。
白猫と黒猫。
先住猫の白猫は3歳のメス。
後から家族に加わった黒猫は2歳のオス。
2匹とも保護猫である。
この2匹、性格が真逆と言っていいほど全然違う。
玄関のチャイムがピンポーン、と鳴ると、2匹は正反対の方向に向かって瞬時に走り出す。
好奇心旺盛な白猫は、玄関にむかって、てててて、と一直線。
警戒心の強い慎重派の黒猫は、和室の押し入れに向かってびゅーん、と猛ダッシュ。
白猫は私と性格が似ているからなのか、非常にわかりやすい。
遊んで欲しい、おやつが欲しい、眠いからベッドになれ、今は抱っこが嫌なの、などなど、彼女のボディランゲージはおおよそ理解できる。
しかし、黒猫は家族に迎えて1年半が経つが、いまだに謎が多い。
顕著なのがその甘え方。
彼はしばしば、私の膝にずずい、とあがってきて、「撫でて」アピールをするのだが、この膝にあがってくるタイミングが読めない。
そばにちょこん、と座り、さも「膝にのーせーてー」と言いたげに見上げるので、「おいで、いいよ」と膝をトントンと叩く。
そろり、と近寄り、右足を膝の上に載せて、一瞬フリーズ。
「・・・?いいよ?ほら?」
そう言って背中をなぜると、ふいっと膝を乗り越えていってしまう。
あれ?なんか気に食わなかったのかな・・・。
そう思いつつ、ま、そんなこともあるさね、と、飼い主は再びパソコンに向かい、キーボードを叩き始める。
熱中すること数分。
突然膝にズン、と予想外の重みを感じたと思ったら、黒猫がズイズイと膝に乗ってきて、ベタっとスフィンクスのような姿勢で座り込む。
あ、なんか今がタイミングだったんだね・・・。
そう思い、いつものように彼の頭、首横、大好きなポイントをわしわしと両手で揉みしだくと、ものの数秒でぷいっと、また膝から降りていってしまう。
そして、これを数回くり返した後、落ち着いてそのまま膝の上で寝ることもあれば、「なんか今日は違うんだよね」とでも言いたげに、私のすぐ隣にどべっと寝そべり、昼寝を始めることもある。
おそらく、彼の中には「そうそう、コレコレ」という私の膝上での心地よいポイントやフィット感があるのだろうが、それを感じない場合は遠慮なく離脱し、そして気の済むまでその心地よさを求めてTRYする。
はっきり言って、私には彼が離脱する時と、膝の上に留まる時の差がなんなのか、よくわからない。
でも彼には、「なにか」があるのだ。
こんな風に、彼の意思表示はしばしば私の理解を超える。
最初の頃は、何が悪いんだろう?なんか今日は変な匂いでもするんだろうか?などと、いろいろ考えたりもしたが、最近は、考えてもわからないので放置することにしている。
彼には、彼の流儀がある。
私には理解できないけれど、それはそれでよいのだ。
私が彼に合わせる必要もないし、彼は気の済むまで自分のポイントを満たすべくTRYすればいい。
残念なことにその結果が不一致で終わったとしても、彼の満足のいく結果に終わったとしても、彼は文句も言わなければ、感謝の言葉も発しない。
そして次の日も、私の隣にちょこん、と座り、何か言いたげに私の顔を見上げる。
それで私たちの関係は成り立っている。
彼の流儀を受け入れ、私も、自分のスタイルで彼に向き合う。
そんな距離感が、心地よいと感じる今日この頃。
・・・人に対しても、常にそういうスタンスでいられたら、ストレスや悩みも半減するのかもしれない。