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デンソーが挑むQRコードでCO2排出量管理サービス!

デンソーが新たに着手した、QRコードを活用した自動車部品の二酸化炭素(CO2)排出量データの管理・追跡サービスは、同社にとって大きな転換点となる取り組みです。このサービスは、欧州を中心に強化されつつある環境規制に対応し、今後の自動車産業の持続可能性を支援する重要な役割を果たすことが期待されています。

この投稿では、デンソーの取り組みの詳細や背景、今後の展望について、分かりやすく解説します。


1. デンソーの新たな挑戦 QRコードを活用したデータ管理サービス

デンソーは、1994年にQRコードを開発した企業として知られています。これまで特許を開放し、直接的な収益化には至っていませんでしたが、今回、新たなQRコード活用のビジネスモデルを通じて、収益化に挑戦します。

この新たなサービスは、QRコードを用いて自動車部品のCO2排出量や素材データを管理・追跡するものです。部品にQRコードを付与し、そのコードを読み取ることで、部品の生産履歴やCO2排出量などの詳細なデータにアクセスできる仕組みです。データの管理にはブロックチェーン技術が使用され、情報の改ざんを防ぎ、透明性と信頼性が確保されます。

2. 環境規制に対応するデンソーの戦略

欧州連合(EU)では、2027年に「電池パスポート」という規制が導入される予定です。この規制では、自動車メーカーやサプライヤーに対し、QRコードなどを通じて電池の状態や素材の生産履歴などのデータを管理し、提供することが求められます。デンソーはこの規制に対応するため、2026年から欧州でサービスを開始し、まずはEV(電気自動車)やハイブリッド車(HV)の電池データ管理を対象にしています。

デンソーのトレーサビリティビジネス開発推進課長である由里浩大氏は、EVだけでなくHVにもこの規制が影響を与えると指摘しており、日本企業にとっても大きなインパクトがあると見ています。デンソーのこの取り組みは、部品メーカーや素材メーカー、さらにはリサイクル業者までを含む幅広い業界に対しても導入が期待されています。

3. デンソーのQRコード管理システムの仕組み

デンソーの新しいサービスでは、部品にQRコードを付与し、そのQRコードを通じてCO2排出量や素材のデータを追跡できます。具体的には、以下のような仕組みが採用されています。

  • QRコードによるデータ管理
    各部品にQRコードを付け、そのコードをスキャンすることで、製造時のCO2排出量や素材の生産履歴などの情報が確認可能になります。

  • ブロックチェーン技術の活用
    データの透明性と改ざん防止のために、ブロックチェーン技術が採用されています。これにより、サプライチェーンが分散していても、データの正確性と信頼性が確保されます。

  • SaaSモデルによる継続課金
    デンソーは、このサービスをSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)形式で提供し、継続的に課金するビジネスモデルを採用しています。これにより、顧客は定期的にサービス利用料を支払い、データ管理を行うことができます。

4. 車載電池以外にも広がる展望

デンソーは、2026年のサービス開始時には主に車載電池のデータ管理を対象としていますが、2030年頃には電池以外の自動車部品にもこのシステムを広げる計画を持っています。

自動車業界全体では、今後「デジタル・プロダクト・パスポート(DPP)」という仕組みが広がると予想されており、電池以外にも広範な部品に対して追跡可能なデータ管理が求められるようになります。現在、車の部品は製品番号で管理されているものの、サプライチェーン全体を遡って情報を照会するのは非常に手間がかかります。デンソーのシステムは、部品ごとにひも付けられたデータを活用し、リサイクルや資源の有効活用、温暖化ガス排出量の管理を容易にする効果が期待されています。

5. サービス開発に向けた競争環境

このデータ管理サービスに関しては、デンソー以外にも多くのスタートアップやIT企業が参入しており、開発競争が進んでいます。しかし、デンソーはQRコード開発で培った技術力や、自動車業界での強い影響力を活かして、他社に対抗する戦略をとっています。

デンソーは、QRコードの技術進化にも注力しており、例えば透明なQRコードや、複数の識別情報を含むQRコードなど、より高度なニーズに対応した新しいQRコードも開発しています。これにより、顧客ごとの要望に柔軟に対応できるサービスを提供することが可能となっています。

6. 収益目標とデンソーの新規事業戦略

デンソーは、このデータ管理サービスを含む新規事業で、2030年度に売上高3000億円を目指しています。QRコードの開発から約30年が経ち、今回、デンソーはついにQRコードの収益化に本格的に挑むことになります。

新たな技術と市場のニーズに応じたサービスを展開することで、デンソーは自動車部品以外の領域でも大きな成長を目指しており、今後の展開が注目されます。

まとめ

デンソーのQRコードを活用した新しいデータ管理サービスは、CO2排出量の追跡や素材の生産履歴管理において、環境規制が厳しくなる欧州市場で特に需要が高まると予想されます。
デンソーは、このサービスを通じて、自動車産業のサプライチェーン全体にわたる透明性を提供し、環境負荷の低減に寄与することを目指しています。

QRコードの開発から30年、デンソーはその技術を再度進化させ、収益化に挑むという新たな一歩を踏み出しています。この挑戦がどのような成果を上げるのか、今後の展開に注目が集まります。

*デジタル・プロダクト・パスポート(DPP)とは?
デジタル・プロダクト・パスポート(DPP:Digital Product Passport)とは、製品や部品に関する情報をデジタルデータとして管理・追跡する仕組みです。製造から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体にわたる情報が一元化され、サプライチェーン全体で共有されることで、持続可能な製造やリサイクルの促進を目指しています。

このシステムは、特に環境規制が厳しい欧州での導入が進んでおり、製品のCO2排出量や素材の使用状況、リサイクル可能性などの情報が追跡できるようにすることが求められています。

QRコード収益化挑む デンソー、部品のCO2管理・追跡 まず欧州車載電池に対応 SaaSで提供し課金 - 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO83533450Y4A910C2L91000/


#デンソー #QRコード #CO2排出量 #サプライチェーン #電池パスポート #自動車業界 #環境規制

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