〜絶対売らない100枚〜 No.3

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Null & Void / Ground Zero

若かりし頃の大友良英のバンド、グラウンドゼロに関しては大小様々な思い入れがあり、とても端的に語り切れるものでもないが、声を大にして言いたいこととしてはこのNull & Voidも含めた一連の作品群は過去の遺物みたいなものとして片付けてはならない、ということに尽きる。容易に入手できるCDではないが、末長く、それこそ永遠に、私も含めて聴くべき誰かが聴き続け語り継いでいかなければならないと思っている。

そしてまた確かな事はこの一作から私は大友良英というミュージシャンに出会い、そこからNo New Yorkを知り、オフサイト関連の即興演奏を知り、高柳昌行や阿部薫を知り、スティーブ・ベレスフォードやゲッベルス・ハルトを知り...etcetcと、挙げればキリが無いがつまりは大友良英の存在自体が自分の中のひとつの触媒となっていったことは確かである。そういう訳で、私にとっては無条件に信頼できるミュージシャンのひとりである。グラウンドゼロ以降のONJQでの活動も好きだし、フィラメントやISO、AnodeやCathode等の音響に焦点を当てた作品群も好きだ、劇伴に関しては流石にそこまでラディカルな内容とはならないものの、やはり大友良英の世界がひとつひとつの楽器の響きの中にあり、そちらも十二分に面白い。極論すれば何をやってても好きなのである。

つい熱が入り話が逸れてしまったが、本作Null & Voidは最も過激だった頃の大友良英のイマジネーション大爆発とでも言うべきノイズ、カットアップコラージュ、フリージャズ、チャンスオペレーションが入り乱れるまさに嵐のようなエネルギーに全編が満ちたジャパノイズの金字塔であり歴史的名盤である。私にとっての正しきパンクであり、正しきプログレでもある。ぶった切りのスピード感、キチガイじみた編集の妙味、ありとあらゆる音が等価に並べられミクスチャーされていく容赦の無さ。購入以来幾度も繰り返し聴いてきたがいついかなる時に聴いても痛快だ。とにかく刺激に満ちた音楽を求めていたり、自分の中の何かを木っ端微塵にされたいという願望を抱えた少し入り組んだ人には是非本作を一曲目のターンテーブルのノイズ演奏から耳が千切れるぐらいの大音量で聴いてもらいたい。

ジョン・ゾーンの音楽レーベルであるTzadikよりNew Japan Seriesの中の一枚として発表された本作は肌感覚で言えば流通している数は多くは無いが、どうしても欲しい人は発表元のTzadikより現在も通販で購入する事が出来るので、是非参照されたい。ちなみに私は御茶ノ水のディスクユニオンで偶然見つけて購入した次第である。

話のついでに余談にはなるが、Null & Void以降のグラウンドゼロは「革命京劇」や「Consume Red」等のこれまた凄まじい作品を残していく、グラウンドゼロと言えば「革命京劇」、という方も多いのではなかろうか。この時代の過激さを思うと「あまちゃん」のヒット等で各種メディアに顔を出すことも増えた現在の大友良英とはまるで隔世の感すらあるが、まぁそれは別にどうでも宜しい、近年活動を再開したONJQのライブを私は新宿ピットインで見たが、曲の中のソロパートにフィードバックを織り交ぜながらノイズの塊と化したギターを掻き毟るように弾きまくる大友良英はやはり堪らなくカッコ良かった。あの頃どうだったとか過去の伝説ばかりが語られるようになるとミュージシャンなど終わりである、大友良英は今も最高だ!






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