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LOCUS GEARのKhufuは山岳テント足り得るのか その5<冬山メリット編>

冷静に考えると冬山で使うもんじゃないKhufuくん。
それでも使いたい、そう思わせる魅力とはいったい何なのか。

では<冬山メリット編>です。

冬山でKhufuを使用するメリット

① とにかく軽量
② 幕内に雪がある
③ 靴を脱がなくてもよい
④ 設営に困らない

①とにかく軽量

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雪山のテント泊はとにかく荷物量が膨大です。

夏山の基本装備に加え、
1 kg以上の寝袋、分厚いマット、水作りのための燃料・大鍋、ピッケル、アイゼン、ワカンorスノーシュー、分厚い手袋(予備含む)、ゴーグル、整地用ショベル、意外と嵩張る保温ボトル(複数本)などなど……

一泊二日の短い山行でも重量は18 kg程度。
バリバリ現役の山岳部やアスリートにとっては大した重量ではないかもしれません。
一方で週末にしか山に行けない社会人登山家にとっては、20 kgを超えたあたりから体への負荷が如実に現れます。

そんな中でKhufuの重量は400 g前後と非常に軽量です。
もちろん雪の上に直接寝る訳にはいかないので、Khufuの他にグランドシートなども必要です。しかしそれらを考慮しても、400 gという重量は非常に魅力的です。

② 幕内に雪がある

一見、「それメリットか?」と思うかもしれません。しかしこれは明確なメリットです。

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具体的には次の3つ。

⑴ 最初から雪があるので、雪が入り込むストレスから解放
なんのこっちゃと思うかもしれませんが、まぁ聞いてください。ドームテントを雪山で設営する場合、<雪が幕内に入らないように気を遣う>必要があります。
入り込んだ雪が寝袋など幕内のものを濡らしてしまうからです。幕体のボトムそのものを濡らすことも問題です。

一方でKhufuは『そもそもボトムが全部雪』なので、気の遣いようがありません。
つまり最初から『濡れるもんは濡れる』と割り切ることができますし、何より「あっ、幕内に雪入っちゃった💦」とストレスを感じることがありません。

⑵ 水作りが楽

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ドームテントの幕内で雪から水を作る場合、『外の雪を集めてビニール袋などに入れる』→『幕内に持ち込んで溶かす』→『あぁ、ちょっと足りないなぁ。また外に……』面倒くさいな!
一方でKhufuは幕内に雪があるので、ビニール袋なんて用意する必要がありません。幕内の端っこにでも雪を貯めておけば良いのです。
雪が足りなくなっても困りません。ボトムを掘り起こせばいくらでも雪が手に入ります。ズボラなあんかけくんにとって、これが一番のメリットです。

⑶ ボトムの地形が自由自在

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この写真のように入り口部分に穴を掘って凹ませることができます。
なんのために凹ませるかというと、コレは<靴を履く場所>です。
ただでさえ履くのが面倒な冬靴。雪山の冷え切った体で、無理な体勢で靴を履こうとすると高確率で足が攣ります。痛いよね。
このように幕内の地面を掘り下げて、靴履きスペースを作るだけで、靴の脱ぎ履きがとっても楽になります。オススメです。
さらにそもそもKhufuは、

③ 靴を脱がなくてもよい

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そう、別に靴脱がなくても良いのです。

冬靴を脱ぐのはとっても面倒です。
加えて冬山ではゲーターを着けていることが多いので、面倒さ倍増です。
一般的なテントの場合、幕内では靴を脱がなければなりません。当たり前ですね。

一方でKhufuは幕内も雪面なので、別に靴脱がなくても良いです。
寝袋に入るまでは靴を履いたまま過ごしても良いですし、それによって気軽に外に出て「ちょっと写真でも」なんて過ごし方が可能です。
欧米スタイル万歳。

④ 設営に困らない

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この辺りはその2に詳しく書きました。

ペグなどでしっかり固定しないと自立しないKhufu。しかし雪山においては、雪がある限り設営場所に悩むことはありません。
しっかり踏み固めること前提ですが、基本的にどんな場所であっても設営可能です。これはKhufuとしてのメリットというより、夏山と比べてのメリット、ですね。

総論:冬山のKhufuはズボラ向けのテント

前回その4では以下のように書きました。

したがって雪山におけるKhufuの立ち位置は『幕営地の地理特性、天候条件などのリスクマネジメントを実施できること。その上で生じる可能性のあるリスクに適切に対処できるスキルを有し、加えてリスクとメリットを天秤にかけて適切に判断できる人が使える幕体』であると考えています。
要約すると<ハードモード>です。

Khufuを冬山で使うには、気をつけなければいけないことは沢山あります。
しかしそれを乗り越えた先には『水作り用の雪が幕内に無限にある』『靴を脱がなくてもいい欧米スタイル』『ボトムの形は自由自在』などなど。非常に自由度の高い運用が可能です。

また軽量であるが故に日帰り冬山におけるエマージェンシーシェルターとして気軽に持っていくことができます。

前回からの繰り返しで、Khufuは冬山において「最良の選択ではありません」。
しかしテクニカルな使い方をしたい人にとっては、選択肢の一つになるでしょう。

次回予告

次はいよいよ最終回。
Khufuについてほとんど語り尽くしたので、インナーやダブルポール化などのオプションについて補足説明します。