私の中の缶詰の話

一つの缶詰の中には波々の液体が溜まっていて
私はその中でぷかぷか浮かんでいる

それは忙しさに身を任せて
本当に大切なものから目を背けている間は
どこからか吸い取られてカラカラになる

1日をバタバタと終え一息ついたとき
どこからともなくまたその液体はやってきて
私の胸の缶詰を満タンにする

こぼさないように水平を保とうと
必死に肩に力を入れるけど
それがふとしんどくなってしまう
糸がぷっつり切れてしまいそうになる

もうやめてしまいたい、と無意識に呟く
もうこの溜まった液体をこぼしてしまいたい、と思う
そのさきにどんな未来が待ち受けているかは
誰も分からないけど

その先を知る人が誰一人として
存在していない、というのが一番の答えなんじゃないだろうか

溜まっている液体は決して水のようなものではない
もっともったりとしていてとろみのある
無色透明ではないいろんな色に変化する液体
密度の濃くてその中に入っている物の
動きを鈍くする液体

それは私の胸の中にあって
同時に私も中にいるもの

胸の中の缶詰の話でした


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