痛みはどうせ忘れる

知らぬ間に大人になっていた私たちを

取り巻く恋愛事情は日に日に複雑さを増し

すききらい、という

二つの単純かつ簡潔な箱には

収まりきらなくなっていて

人間の人間らしい灰汁の部分が

溢れ出て止まらなくなっている気がする

痛くて苦くて目を当てられない


世の中は全部ウルセー

ずっと大切にお守りのように持っていた

ぽけっとにいれた賞味期限の切れた約束を

あと何度灰にされたら

私は自分の愚かさに気づくのだろうか

真面目はいつだって踏み台にされ損をする


ここで待っていてね、と言われた言いつけを

バカみたいに守っていたら

いつまでそこにいるんだよ、と言われ

もういい加減動き出そうとすると

なんで勝手にどこか行こうとするの?と言われる

世の中は全部ウルセー

そして世の中はあり得ないくらい適当で身勝手だ


言葉を信じてはならない

その辺にふわふわと浮いている言葉には

少しの心も込められていない

心とは意思であって意見であって

その時々の感想ではない、気分でもない

記憶から引っ張り出した言葉に縋る事

存在しない未来への期待の偶像が見えるだけだ

いますぐやめたほうがいい


痛みはどうせ忘れる

だから大丈夫、と

あっけらかんと口にした友達は

最近出産を経験した

痛くて痛くて震えて眠れなかった2日間の痛みを

もう既に思い出すことはできないらしい


世の中は全部ウルセー

だけど痛みはどうせいつか忘れるのだ

この喧騒も雑踏も頭の中でうるさい声も

どうせいつかは思い出せなくなるのだろう

せめて抱きしめてあげないと可哀想な痛みたちを

忘れないよう日常の点としてガイドとして

作品を作り続けるのかもしれない


全ては成功するまでの過程にすぎない

もっとたくさんのことを食べてみたり

捨ててみたりポケットの中で腐らせてみたり

後悔もいつかは熟成されて

旨味成分へと変わるはずだから

私の大切な感性を容易に滲ませたりしないでほしい


人それぞれにはいいところがあって

私にはないものがあって

人の魅力を取り入れようと殻を破ろうと

いろんな方向にパンチをしてきましたが

今一度自分の殻にぎっちり籠ってみることにした

私だけの大切なもの

私の中で煮詰まった味の濃い何か

その純度を下げることなく閉じ込めてしまいたい

少しでも世間に触れると酸化してしまうだろうから


もっと作品作りに没頭したい



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