呪縛霊

目的を見失っていた

目標はあるが目的がなんなのか

小さな道しるべはたくさん持っている

だがそれらが私を導く先を知らない


なぜ音楽を始めたのか、

初めは忘れられないように、

そんな孤独な理由だった

物理的だろうが心理的だろうが

距離の離れてしまったみんなも

私が発信を続けることで私が死なない気がした


忘却、すなわち死であると思っていた

逆に命がなくなることは怖くなかった

いなかったことになる方がよっぽど怖かった

今となればもうどうでもいいことなんだけれど


気に入らないことばっかりだ

なぜこんなにも気が立っているのかが分からない

全身の毛が逆立っているような気分だ

(私が全身毛むくじゃらであればの話であるが)

全身の血液が逆流しているような気分でもある

同時に世の中に存在する

全てがしょうもなく思えて

そんなことを思っている自分が

このしょうもない世の中の中でも

際立ってしょうもなく思えていた


今日先輩が言ってた

呪縛霊はなぜ怒っているかを忘れると

形を失い黒い塊になるらしい

今の俺はそれだ、と

今の私も間違いなくそれである


私の将来展望図は実は完成している

私は自分の能力を使いこなすのが苦手なだけだ

朝目は覚めているのに絶対に何があっても

起き上がることができない

何度頭の中で起きろ!ボケカス!と叫んでも

ぜえーったいに無理です!と

潔い返事が身体中の細胞から返ってくる

だがピーンッと急に

脳みそ目の奥の方に穴が空いて

今ならいけます!というタイミングがくるのだ

もうその時を待つしかないのだ


小学生の頃体育の授業で

登り棒を登り切った後に

頂上で違う登り棒に乗り換えて

地上まで降りてくる、

そんな高所恐怖症にとっては

拷問としか言いようのないテストがあった

私はどうしてもその

頂上登り棒乗り換えができなくて

(あれは本当に危ない)

何度休み時間に挑戦しても

友達にコツを聞いても出来なかった

悔しいが怖いものは怖い


だがそれもある日の放課後

家に帰ろうと準備をしていると

ピーンッと脳みそに穴が空いた

そして私が頂上登り棒乗り換えをしている

その映像がぱあああっと広がったのである

今ならいけます!

そう頭蓋骨を叩く細胞たちに導かれ

何かに取り憑かれたように友達をつれ

登り棒へと向かい

あんなにビビり散らかしていた人とは

まるで別人かのように

スルッと成功させてしまった


昔から私が何かをやり遂げる時は記憶がない

誰か違う魂に乗っ取られているような

どこか他人事のような感覚になる

本当に夢を見ているような、

もしかすると

VRを見ている感覚に近いのかもしれない

容れ物の内側から自動で動く映像を

ただぼーっと傍観しているような感覚


なので私はただ待つしかないのです

いつかの脳みそに穴があき

魂が乗っ取られる瞬間を


私のセンスが爆発し

とんでもなく飛んで行ってしまうその時を

黒い塊から形を取り戻す瞬間を


怒りはパワーになります

そしてそのパワーが伝えるものは

意外とプラスであったりするみたいです






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