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これからの創作(せかい)

「拳の傷はじゃくねーんじー♪
風呂場でコケた傷のあーとー♪」

入浴により血行が良くなり血がドバドバ出た。風呂場のガラスは危険がいっぱい。危うく出血多量で死ぬとこやった(ほんとう)
季節感満載だネ

バーでテキーラをチビチビやりながらお気楽な歌を口遊くちずさむ。
クエルボ残量は1/3程度か。よし、まだボトルキープは出来る。3回飲めれば上等だ。この間のニッカは美味すぎて2日で終わりおった。お前は長生きしてくれよ……と目を細めていたらカウンターの会話が耳に入った。

これで「ホセ・クエルボ」と読む。メヒコ語だね!
メキシコ語ってなんだよ?(スペイン語スパニッシュやろがい)
ハードボイルドにはスパニッシュ必須派(原理主義)

まぁ、そりゃいいんだ……キリッとした顔だが顔は割と赤いアラフィフは脳内で呟く……

昔はともかく、今そして「これから」は、万人に読ませて百人の嬌声を浴びる事がより困難になる。やがて千人のうち15人、百人のうち二人に向けた物語を書く羽目になるだろう。

キーワードは多様化とプラットフォームの分化、拡散だ。

誰でも書けて誰でも公開できるようになった今、手に取る事が出来る物語の数は指数的に増加した。

今もうx=3ぐらいやねん。

かつては発表の場が極めて少なく、媒体にさえ掲載されれば取次により「確実に数万」の読者に配布され、読者は媒体に掲載された僅かな……つまり幸運を掴んだ……作品の中から「好きなものを選んだ」

これが昨今の世界では成り立たないのだ。UGC(ゆーざーぢぇねれいてっどこんてんつ)の荒波は出版業界を津波のようにして破壊し、読み手は日本海の荒波の様にざっぱんざっぱんした電子の海の中から、難破船の破片の様な木端にしがみついて良作を探している。

この魔の海域バーミューダには難破船のカケラが無尽蔵に浮かんでおり、「読み手」の嗜好は気持ち悪いぐらい様々だ。もうそこには巨大な客船は存在しない……媒体という船は全て嵐で砕かれ、雷に焼かれ、ネットに浮かぶ氷山にぶち当たってタイタニックした。
今はまだ兄弟船みたいな漁船が浮かんでいるが、板子一枚下は地獄であることには変わりなく……荒波の中で操業する鳥羽一郎は投網でえいやっと瓦礫を集め、瓦礫の中の最良を「選んでしまい」漁協職員を落胆させている。

メキシカンなウエスタンバーの丸テーブルの上を襲う日本海のド演歌。ハードボイルドだぜ。
そうか?

今この時期に「ベストを選ぼう」とするからコケるのだ。それはクィーンエリザベスやタイタニックの時代のやり方で、趣向や嗜好が散乱した「今のやり方」ではない。個々の選択や関心領域、それらにビッグデータを重ねて統計とAI分析により「その、たった1人」に対するベストを提供する……コンシェルジュの様なサーヴィスが必要なのだ。ぶっちゃけAmazon。

大きな括りは今後、意味を段階的に失って行く。以前サルーンで「言わば蛮人コナンもハードボイルドであり、全ての男の物語はハードボイルドである」という会話を耳にしたが、その様な「大きな括り」はハードボイルドという作風を探す為のタグにはならないのだ。より先鋭化した、細かな小分類をしなければ「その物語を探す為のタグ足り得ない」……括りの意味がなくなってしまう。

カバラの昔ならセフィロトの樹で済んだがね、カンブリア爆発めいた「創作物の爆発的増殖」は現代生物学が提示する系統樹じみた複雑さを露呈している。

これでもまだ雑というネ……

この系統樹の枝の先一つ一つが「我々の創作さくひん」だ。ここに辿り着くまでに何重のフィルタリングが必要だろう? あなたの「書きたいもの、作りたいもの」と読者の趣向が重なるのはどれだけ低確率であるか分かるだろうか? その先に「出来」がある。はっきり言うと出来なんぞどーでも良くなるぐらい「趣向の分化、拡散」が発生しており、現実問題として所沢さくらタウンの残念な連中など「趣向が好ましいか否か、マスを狙える要素集合であるか」しか見ずに作品の文字列としての優劣など見ていない。(だから結果的に売れ行きや返本率がアレ。開始1週間の初動がキモとか言うのは、出版業界が良作を見抜けないという残念な事実のネガである) 逆噴射総一郎が「初手800字」に傾注するのは「もうコレは目が合った瞬間に殺さねば読まれない」というガンフロンティアかつ「細かいことはぶっ殺してから考える」というアパチャイ式ムエタイ理論である。

沢山読まれる、沢山星が付く……まぁある意味創作者の原動力ではある。たった一つの輝きでは満足できない向きもあろう。

しかし空に輝く一つ星、数多の星の中で輝き「時の流れの中不動を保つ北極星」を見つけられねば誰も夜の海を渡る事は出来ない。

その一つ星が見つかれば……(ヒック)

ホセ、どうしたんだホセ! なんでいつの間にか消えてんだおい! 返事しろ、1/3残ってたじゃん! なんで……なんでぇぇえ!

流れよ我が涙、と警官は言った。
流れよ我がテキーラ、と私は瓶を振る。

方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!