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ドミニコス隊とは?

さて、とーとつに哲学や思想史の話を書く。

水星の魔女にカテドラルって組織があり、そこの監査チーム?にドミニコス隊というのが出て来る。10話冒頭でサリウスが話してた魔女狩りしてた連中だ。これは何かっちゅーと……

キリスト教カトリック教会の一派、ドミニコ会のオマージュであるよ。

大体に於いて修道会ってのは、すごーい厳格な感じで学識豊か、クッソ真面目を絵に描いたようなパターンが多い。ドミニコ会もその例に漏れず、中世ヨーロッパの後期にフランス南部やスペイン辺りで熱心に布教をし、魔女裁判なんかもやったりした。

んで、多分この「魔女裁判やったりした」辺りから名前が取られたのだと思うが、ドミニコス隊を率いるデリングはなんちゅーかスペイン宗教裁判に出てくるヒメネス枢機卿に近い。

幅広帽子を被り、数が数えられないのがヒメネス(ベイリン)

ヒメネス枢機卿は実は実在の人物なんである。

清廉潔白で厳格で、やると決めたらやり通し、異端審問したり異教徒の改宗を強要したり、摂政やったり学校作ったりした。

なので個人的にはドミニコス隊ではなくフランシス隊にしてやるとデリングのヒメネスっぽい部分が強調されてベネではないかと思う訳だ。ベネリットグループだけに(親父ギャグ)
しかし一点、ドミニコ会である方が水星の魔女に向くポイントがありまして……

アルベルトゥス・マグナス

ドミニコ会は後にトマス・アクィナスというキリスト教神学に多大な影響を与える偉人を輩出するのだが、その師が上記「アルベルトゥス・マグナス」である。
このおっちゃん、割と高位のキリスト教カトリック教会の坊さんなんだが、錬金術や魔術の蒐集を行った珍しい人なんよ。

たまーに創作に出て来るど偉い魔法使いが〜マグナスとかマグヌスなんて名前のことがあるが、ワイの知る限り元ネタはこのアルベルトゥスだ。

大体のふんわりした話だが、超古代帝国ローマの知識や学問はローマ崩壊後に散逸してイスラム圏に継承される。塩野七海辺りのローマ崩壊時〜崩壊後の著作を見ると顕著に記されているのだが、所謂中世ヨーロッパ、特に十字軍やってた頃のヨーロッパはイスラム国家と比較して蛮族だった。

んだもんで、ルネサンス以前のヨーロッパはかなりの知識や学問をイスラム圏から輸入しており、修道会というキリスト教を学問面から攻める連中はイスラム圏からギリシャ・ローマ時代の学識を再入荷したりしてたんよ。その中に錬金術や化学、哲学や魔術の話があり、その辺の学識持ちだからアルベルトゥス・マグナスがなんか魔法使いの偉い人扱いされてるって訳だ。

なお、筆者はその辺の「リアルな中世の魔法」を学ぶべくマグナスの著作の翻訳本を買って読んだことがあるが、その魔法の大半が「浮気を見破る魔法」というしょーもないものだったりしてひっくり返った。いやマジで。

で、魔法に詳しいマグナスであるが、実際にしょーもない魔法を数多く蒐集したり、錬金術なるものを実践して超しょんぼりしまくった事は間違いなく──割と魔法に対して(しょーもないのが大半であるという現実を知ってたから)寛容なのである。ある意味では大変科学的な視野を持っており、魔法は知識であり「それ自体に邪悪も正義もない」(→正義や悪は宗教や哲学の範疇である)という感じなのだ。

フランシスコ会とドミニコ会は思想潮流としては対になる感じで、共に清貧を旨として学問に励み、布教に努める姿勢は同じだが、フランシスコ会が在家でも参加できたり「私財を持たない」系のドMカトリック系であるのに対してドミニコ会はそこまででは無い。(フランシスコ会はボロ服一枚で托鉢する様な連中だが、ドミニコ会は黒服が制服)

そこまで深く大河内氏がシナリオ練っているかは疑問だが、水星の魔女をきっかけとして色々な知識を学んでいけるのだとしたら素晴らしいのではないかなと思ったりする。

尚、拙者は割と日本ではマイナーな「神道」を自宗とする神徒であるが、父方のパーちゃんは北海道で女学校に学び讃美歌を歌ったりしていたし、親父はその縁で札幌のマリア会系の高校出てる。
その為結構神徒の家である割にクリスマスには十戒強制視聴させられたり、キリスト教系の話を親父に聞かされたりなどした。

オマケ知識

ドミニコ会のマークの真ん中にある盾型のマークあるでしょ? それ「エスカッシャン」って言うやで。

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