ご商売としてのプラモデルの話
初動の数万個ぐらいで「売れている」判定はいかがなものかー
一応私はその昔メーカーに在籍してて、日本国内からのOEMの話なんかも本社に取り次いでたからある程度収益構造も理解してるんだが、イマイチこの辺の理解が薄い人もいるようなのでちょこっと書く。
ガンプラとかで、第1期生産分とか第2期生産分ですぐ売り切れたりすると「売れてる」イメージあるじゃない? 特にプレバン。あれはプラモデルとしては余り売れてないと思うんですよ。
どんな商品も生産原価とイニシャルコストがある。物によっても異なるが、パソコンのマザーボードなんとのは大体開発コスト(設計やテストやソフトウェア開発などなど)で、ざっくり500万ぐらい一製品毎に金が掛かる。更にそいつを生産すると基板やICチップやらのコストがかかる訳だよ。まぁ10000円ぐらいが原材料費としようか。
ワンロット5000枚生産した場合、生産原価1万にイニシャルコスト500万を生産数で割った1000円がざっくりとしたマザーボード1枚当たりの「原価」だ、ここにメーカー側利益を載せて「問屋への卸価格」が決まる。
で、プラモデルというのは生産原価がべらぼうに安い。HGのガンプラに使われてるプラ材の原価なんかアホほど安い。だからプラ材が入って来なかったりして困ることはあるが、原材料費の値上げによりガンプラの販売価格が変わることは余り無いんだ。プラモデルの原価を引き上げるのは、実はイニシャルコスト……特に型の金額なのね。
聞いた話によると、大体HGとかクラスの型の原価は1000万とか行くらしい。バンスピはスライド金型とか使うから型のコスト他より高めかもしれない。で、その型から生産されるプラモの価格は「どれだけ売れるか」で激しく変わるのである。
例えば初代ガンダムのキット出すとするじゃない? 販売予想数は累計100万とか行く筈である。全国津々浦々にガンプラ売ってるとこが5000ヶ所あるとしたら、何年か掛けて各店平均200個売れたら100万行くからね。仮にスゲー高額な型(3000万円ぐらいとするか?)を起こしても100万個売れたら一個当たりのイニシャルコスト按分は30円ぐらいだ、屁でも無い。これが初代ガンダムのキットが不可思議なぐらい安価な理由である。
次に同じくらいの型代を掛けてガンキャノンを作ってみよう。初代シリーズとは言えガンキャノンだと10万個売れたらいいかなぁ……ぐらいだとする。するとイニシャルコスト按分は300円に跳ね上がる。もしも仮に同シリーズだから同価格帯という値段設定をした場合(600円としてみようか?) プラ材その他のコストがざっくり200円/個だとして、ガンダムは230円のコストで370円の利益が出て、100万個予定通り売れたら3億7000万の利益が出る。ガンキャノンは原価500円で売価600円だから一個当たり100円の利益で10万個だから利益は1000万ぐらい。実にガンダムの1/37というしょーもない金額になる。
で、大体流通から小売にプラモ売ると、定価(本当はこの言葉使うと公取に怒られる)の6掛けぐらいらしいから、ガンダムもガンキャノンも定価1000円で店頭に並ぶ。
さて、ここで考えてみよう。ナンボなんでもガンキャノン儲からな過ぎであろう。一個売って利益100円って、あーた。こいつをプレバンで直売したら、定価1000円で売ったら500円儲かる! よーしプレバンで売っちゃろ! ……だが、送料や手数料が「キットの単価の割に」高額なプレバンだと販売数自体が減るのである。店頭売りなら10万個売れるガンキャノンも、プレバンだと5万個ぐらいしか売れない。すると生産原価按分も600円に跳ね上がり原価は800円に急上昇、1000円で売っても利益単価は200円で利益も1000万で動かない。そもそもイニシャルコストが莫大な金額になるプラモデル商売では、万や10万単位で売れたぐらいじゃあんまり儲からないのである。
が、プラバンさんとかプラガブさんがガンキャノン大絶賛して5000個ぐらい追加需要が生まれたとしよう。「型代は5万個作った段階で償却されている」から、原価は生産コストの200円のみ! プレバン販売で一個あたり800円利益が出て5000個売れたら400万円! なんと「新造したキットの型が」生み出す利益は1.4倍だ!
という訳で、プラモデル販売というのは想定した損益分岐点を「どれだけ超えるか」で儲けが随分変わって来る。型代償却した後はボロ儲けになる訳ですなぁ。
つまり、だ。
古い(そして単価がものっそい低い)古いHGのガンプラは予想に反して収益性がかなり高くなるし、新作キットは案外(金型代金償却済むまでは)儲からないのである。
で、水星の魔女ですわ。
ガンプラ販売開始後の初動はかなり良かったと見る。恐らく少なくとも初動だけは品薄状態続いてたからバンダイの予測より売れていたのであろう。予想外に売れたのでバンダイは販売予測をし直して増産に励んだ事だろう。ここまではいい。しかし今年の頭ぐらいからかなぁ……消費に翳りが見えてきた。我々ガンプラ好きには嬉しい事なんだけど、店頭在庫が復活していつでも買える様になって来たのである。すぅっとバンスピの営業から血の気が引いたのは予想に難く無い。普通なら終盤に向かって盛り上がりは初期の何倍にも膨れ上がり、その勢いで累計販売数も更新し続ける筈が、勢いが鈍化した。相変わらず再販した古いガンプラはそこそこ売れる(そして利益率としてはめちゃんこ高い)のだが、水星の魔女キットは初動の読み違いからライン押さえて増産したのに「2022年11〜12月頃の想定」に比べると明らかに市場在庫が増え過ぎている。
確かにミニマムで見たら「水星の魔女キット」は売れてると思うんだよ。それは間違いない。ただ、メーカー側としては型代償却して「その先いくら売れるか」が肝で、2023年1月ぐらいが需要のピークで2クール目始まったのに需要が爆発しないのは想定外だと思うんだわ。数は出ているがバンスピの予想よりは低い……これは致命的であるかと思う。
これがバンスピがおこになる理由だ。
話が進むに連れて需要が減る作品を誰がスポンサードするというのか。例えば未だ明かされていない新製品Bがキャリバンだと思ったらMAユニット付きガンドノートだったりしたらどうしよう? ネットではふざけんなバカ!キャリバンと交換しろ言説が溢れ、バンスピへのヘイトが高まったりしないか? 急いでキャリバン作るにしても、型作って生産しないのはあり得ない話だ。少なくとも生産した型は減価償却できる程度に売れてもらわねば困る。新製品Bがガンドノートフルパックでヘイトを高めた後、また別にキャリバン出しても余程の事が無い限り「ふざけんな死ね!」となりはしないだろうか?
その傍証がこれですわ。
作品展開読ませない為に一切情報出さなかったら「何か不都合が起きた」
だからビルドメタバースでは展開を隠さず?「リライジングみたいに合体やるやでー」を先行して匂わせて、「どんなになるか分からんけど、巨大機体でサイコGMみたいな筋はないだろう」で釣る。
また、「まだ水星の魔女」が終わっても居ないのにCMは水星DVD激推しではなく過去作品のも同時展開する(先にも述べた様に、飽きるほど売って減価償却が終わり、追加生産するキットは利益率高いのでチョー嬉しい)
まぁ、真相は分からないが水星の魔女がバンダイグループ内ではかなり微妙な立ち位置でプラモの売上規模的には鉄血に劣ってしまった可能性は否定出来ない。なんか初期エアリアルとダリルバルデだけしかワイは買わなかったが(欲しい時に売ってなかったからな!)、正直キャリバンに関してはビミョーである。つか水星にジムっぽいのが無いのが、その……(ディランザがザクかドムポジで、ザウォートがジムという想定なんだろうが……ザウォートで活躍したキャラは焼きとうもろこしになってしまいまして、その……地球寮対グラスレー寮戦では作戦とは言えザウォートがカスですし……)
方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!