厨房の頃
それはまだ私がPC9801UX21と出会う前、日本に消費税なんてものが無かった時代の話だ。
当時コンピュータというものは然程世間に浸透しておらず、パソコン持ってるというのが割と高所得家庭に限られていた時代。私はパソコンに憧れるものの「実際のパソコン」を知らぬ「まさに厨房」であった。
どんだけアホだったかというと
「パソコンが有ればプログラミングが出来ると思ってた」
「MS-DOSってなぁに?」
まぁ、98単品でもプログラムは出来る。奴にはn88日本語Basicが搭載されており、ワイはアリオンのムックに掲載されてたペガサスの少女をプログラムで鳴らしてた。当時はこんぴーたー手に入れたんだからプログラム書いてガッポガッポよ!と意気込み、ランダマイズというコマンドでとりあえず乱数出したりしてたが、シードという乱数生成の「種」を時刻表示の末尾から引っ張ったら1〜60までの乱数しか取れないと気付いて男泣きに泣いたりした。乱数使えなきゃゲーム作れんやんけ。ワイのプログラミング経験はここでほぼ終わった(数年後にVB5触る機会があってちょっと役立った)
で、困ったのがMS-DOSですよ。ゲームするにもワープロ立ち上げるにもこいつが必要。値段見たらびっくりするほど高い! なんやお前! ナニモンだ!
で、悩んでいると同輩からどこからともなくMS-DOSが湧いてくる。
システム転送出来たらえーんや。なんかよく分からんがコマンド打てば任務完了。ワイはゲームで遊んだ。
当時はコピーばっかだったんよ。いやもう海賊版ばっか。何故皆PC9801を買うかと言えば、周りがみんな98買って「ソフトを融通していたから」に他ならない。
また、これは私の親父と同年齢のライターから聞いた話だが……98全盛期に新商品レビュー書くじゃん? まず、当時しこたま高かったレビュー用の98はそのままライターに譲渡された。更に4Pとか記事書くとNECから「4Pの広告書いてもらった」と見做されて「4P分の広告代金が振り込まれた」 大体広告1Pで50万ぐらい。4Pで200万円だ。誰がPC9801様の悪口書くかよ!
氏は都内にアパートを建てた。家が建つなんてレベルじゃねーですよ、ライターしてたら23区にアパートが建つ! だから98あんなに高かったんやなぁ、と。
こんなズブズブの世界で皆が98を買い、原始共産制じみた感じでソフトをコピって遊んでた。まだ98はシェアが合って少なからずソフトを買う奴もいたから良かったが、問題は目の付け所がアレな会社の出してたツインタワーじゃ。
メーカーがアレなのでこの機械も大変素敵なパソコンなんだが、メーカーがアレだとユーザーもやはりアレであり、特にエンスー気質の奴らが好んでこれを使ったと聞く。そしてアホユーザーばかりの98ユーザーとは異なり「目の付け所がシャープ過ぎて」ソフトをコピりまくってシェアしまくったらしい(ASAジャパン店長から聴いた)
結果、対応ソフト出しても売り上げが残念過ぎて「x68はソフトウェア不毛の地となった」
短期的にはコピーソフトは(個人レベルでは)良い様に思える。しかしそれが本当に「一般的になると」界隈巻き込んで消滅してしまうのだ。私はこの様な古老たちの箴言を聞いてWin95時代には既にコピーソフトから足抜けした。マイナー好きだからこそ「買って支援しなければ続編が出ない」という極めて当たり前の話に気が付いたのだ。
まーね、その前史としてレンタルビデオダビングとか、音楽テープやCD貸し借りしてコピーしてたもんなぁ。(CDは私が小学生の頃に製品化されて、高校の時にはCD Walkman持ってた)
著作権がうるさくなった(と、当時は言っていた)のは95辺りからではなかったかしら。
一応コンピュータ界隈では気軽なコピーができない様にプロテクトが掛かってたんだけど、アホでもコピー出来る様にコピーツールというものも出回ってましてね……これでアホでもソフトをコピー出来たんだわ。昔ソフマップってパソコンソフトのレンタル屋だったんだが、借りてコピってみんなでドーンよ。余りにそれが酷いんで各社色々知恵を巡らせるのだが、先に述べたリングマスターなんかは「プレイ時に入れる暗号表を、コピーしたら判読できなくなる特殊印刷」にしていた。それも流行らなかった理由かもしんない。
インターネット以前のネットの話は次回予定です。
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