リアリティ重点

この話が妙に面白い。

特に興味を引くのが「鹿を美味しく解体する方法」
早目に血抜きした方が良いというのは知識として知ってはいたが、リンパは盲点であった。

現代日本において、獣肉解体なんてのはまず体験できない知識である。ファンタジー系の物語を書く趣味の都合上、この手の知識は見かける度に脳内にストックしているが、マタギ列伝なんかでも「リンパ液」に関する言及は無かったと思う。

仕留めた獲物は仕留める前まで生きてた訳で、特に狩猟で追いかけ回すと運動により体温が上がっている訳だ。だから仕留めたては暖かいし、暖かいまま放置すると腐敗が進行しやすくなる。故にマタギ(夏場は農耕して農作業出来ない冬から山に入る。そこで山の動物を狩る訳だが、仕留めたら山ノ神に感謝を捧げつつ解体(ケボカイというらしい)し、バラした肉を沢の水に漬けるなどして冷やすのだという。

恐らくは、マタギの皆様もリンパ節なんかは外してるんでは無いかと思うんだけど、取材に対して事細かに「そういう事」は話さず(別に漫画家や小説家が実際獣肉解体する訳では無いからね)、我々がそういう話を高解像度で知る手立ては無くなって行く。

のだが。

ひょんな事から今回みたいに得難い知識が舞い込んで来る。

で、鹿さんより猪さんの方が美味いってのも実にアレである。実際猪さんは美味い上に「可食部が多い」という素晴らしい特性があり、その特性を品種改良により更に伸ばした奇跡の生物が、今我々が食している豚さんなのだ。

牛も美味いが昔は農耕用であり「メイン肉」は西洋でも豚さんであった。生産性が良好であるからこそ安価に流通する訳であり、牛肉(特に和牛)が高額なのは生産性が低いからに他ならない。ありがとう豚さん。(今日の昼飯カツサンドだった)

今の若い人には馴染みがないであろうが、年寄り連中の中には「乳臭い」という理由で敬遠する人もいる。大体食生活というのは「慣れ」の部分がかなり大きなウェイトを占めており、大部分の人は食い慣れない物をゲテモノとして毛嫌いする。今では信じられないだろうが、日本の内陸部育ちの人の中には海産物(特に刺身)食えない人も居たりする。逆に内陸部の人が食する蜂の子は割と多くの人にとってゲテモノだろう(私は普通に食えるが)

食文化とはよく言ったもので、食は即ち文化である。現代社会はこの文化の割と根本である「大規模流通経路に乗る前の?」食材に対する知見がかなり喪失した状況にあり、下手すれば鶏をシメるという昭和初期には石神井公園駅から徒歩1分の家(老母実家)でも散見されたムーブすら知らず、私みたいに釣ったニジマス捌いて燻製にしたり、開いたのをムニエルにするというムーブですら忌避されるかもしれない(暴れるから尻尾の方持って頭をスコーンとだな……)

生き物をシメて食う。ただそれだけの、言ってしまえばただそれだけの話なのではあるが、それは一つの文化である。興味深くない訳がない。そーゆー事に思いを馳せずに近視眼的に肉食良くないとか言い出す慮外の馬鹿も居るけどな。シャンツァイ口に詰めるぞ貴様。



方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!