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機甲シン・ゼロ 第七話

まえのおはなし

「総理、昨夜魚釣島近海で何らかの戦闘が発生したという噂がありますが、政府はこれを認識しているのでしょうか?」
「ナイカクソーリダイジン」
「承知しておりません」
「どこからのソースだよ……中共か?」
「噂話で国会を空転させないで頂きたい」
「では、その戦闘に参加したというあのロボットは何ですか! J隊基地に着陸……練馬の近くには民家もあるんですよ!」
「だからニュースソースは何処なんだよ、露のプーさんか?」
「逆に申し上げたい。戦闘行為を封印したJ隊にあんなものをどうこうする力はございません。あれは勝手にJ隊に来たのであります」
「戦車を配備するとか……」
「10式の主砲が万が一……精強たるJ隊に打ち損じは無いと信じておりますが、万万が一外したらどうなりますか? 当てて跳ねたらどうなりますか? 先に申された様に周りには民家もあるのですよ?」
「大体あれは何なんですか!」
「これについては既に有識者による調査団を……」
「ダメだこりゃ」
「副総理、私語は謹んでください」
 挙手っ
「フクソーリ」
「えー……、何が何だか分からないものを分からない状態で論じても仕方がありません。先ずは現状を有識者から語ってもらいましょうや」

「えー、ご紹介に預かりました種田と申します。主に巨大ロボットに転用可能な冶金分野、素材工学を研究しております。以降はシキシマ博士とお呼び頂きたい」
「お、鉄人か!」
「流石ですな副総理、お目が高い」
「種田博士」
「誰ですかそれは?」
「シキシマさん、あんた面白いな!」
「先ずは現状を……」
「種田さん!」
「シキシマと呼べと言っただろうが立て襟ぃっ!」

※以降諸般の都合によりエリィ議員/エリィさん(仮名)となります。

「議長、暴言です! 撤回を要求します!」
「こちらは解析でクソ忙しい中『仕方なく』来てるんだ。シキシマと呼べと言ったらシキシマと呼べ。そうしない限りはお前は立て襟子のままだ。以降お前の話は無視する。カブトっ!」
「はっ」
 エリィ議員は自席にフラフラと戻り、カクンと電池が切れた様に座って物言わぬ何かになった。
 PNGZ合金はナノボットと呼ばれる微細粒子状の構造体からなる一種の群体であり、分子構造や原子間結合を操作することができる。つまり鼻腔内に直接麻酔薬を生成して意識を奪い、服の内部に薄膜形状のエクソスケルトン(強化外骨格)を形成して身体操作をするなどという芸当も可能である。
「意義ある時間を過ごしたいですなぁ……他に質問は?」
「……シキシマ博士、基本的な所からお教え下さい、まずアレは何ですか?」
「スパロボだな、スーパーロボット」
「え? いや、その……マジンガーZの様な、ですか?」
「正にマジンガーやゲッターやコンV的なスパロボだな。全高18m、普通に考えてあのサイズのロボが空飛んで走ってパンチするだけで科学的には有り得ない話だ。構造強度と重量と駆動出力的に無理がある」
「お台場にはガンダムがありますが……」
「ありゃ立ってるだけだからな。もしお台場ガンダムが走ったら、アスファルトは穴だらけになるわ足首関節がイカれるわ乗り心地は最悪だわで酷いことになるぞ?」
「それが可能であると?」
「多分な。空飛んで来たとか、着陸したとか、特に補強してない地面に立ってる……実は静止しておらず動的にバランスを取っている様なんだが……100年200年先の未来からやって来たと言われても信じかねるね」
 挙手っ!
「Cギイン(仮名)」
「つまりあれは兵器ですか? どこの国の? 種……いや、シキシマ博士、お聞かせください」
「兵器とは兵器として運用される前提で設計されたものだろう? 例えば大型のショベルカーは停止しているファントムやイーグルを破壊できるが、別にショベルカーは兵器では無い。また、あんな目立つものを兵器として運用するというのも考え難い。空想科学読本でも読みたまえ」
「宜しいですか、カブトと申します。あんなものを作れるのなら、普通はその技術を用いて他の形の兵器を作るでしょうな、軍事目的でやるのであれば」
「では、あれは何の目的で……」
「「趣味
 ……でしょうなぁ」
 ……ですね、間違いない」
「失敬、被ってしまいました」
「趣味にしては……」
「おや、興味が無い? Cさんは無敵共産ロボ、レッドスターリンとか考えませんでしたか。武器が鎌とトンカチの」
「そして気付くはずです。ロボでは共産革命は無理くさいなと」
「確かに、れん…いや、何でもありません」
 挙手っ
「ナイカクソーリダイジン」
「結局あれは何のために練馬に来たのでしょうか?」
「誰が何の目的でやっているのか分からない以上憶測になりますが、昨夜の東武練馬駅での凶行に関係しているのではありますまいか」
「人間以外の死体が見つかった件でしょうか?」
「そう。偶然我々はあの惨劇の場におりまして、人間サイズのウサギが人を拐うのを目撃しました」
「映像記録があります……こちらです」
 戦闘用スーツのデータから戦闘用データと音声を抜いたものをモニタに再生する。ウサギは明らかに野生動物ではなく意思ある知的生命体としての動きをしていた。
「……ピーターラビットの世界だな」
「分野が違うので素人判断に近いのですが、こりゃ地球の生き物では無いでしょうな……」
 挙手っ!
「コーノ議員」
「地球外……宇宙人、ですか?」
「地球にあんなウサギいましたか? メルヒェン大目にワンダーランドからやって来たアリスのウサギとしても良いですが、異世界から来たと考えるよりは幾分宇宙人と考える方が科学的でしょうなぁ」

国会はまだまだ続く(予算審議しろよ!)


チュー1
前回カクヨム掲載後にnoteに転載忘れたからお詫びに暫くnoteを先行します。

チュー2
立て襟子議員に特定のモデルはいない、いいね?(脅迫)

方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!