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Johnny, Be Good! (10)

それは例えばこんな事。
朝が来て起きなきゃいけないんだけど布団があったかい。起きなきゃ起きなきゃと誰かが囁くんだけど起きたくない。起きないと朝食に間に合わないし、朝の礼拝に間に合わず、シスターに怒られるけど起きたくない。刻一刻と叱られる未来が現在に近づいて行くのを感じながら布団の温もりに癒される。ああ、こうして僕はダメになっていくと理解しながら温もりの中で夢に戻るドアを探す。そのドア開けたら……

「何やってんだよ、ジョニー君。起きなきゃ。さ、顔洗って元気に行こう!」

ドアの向こうから現れたいつもの誰か。顔は分からない。声は小さい頃から聞いていた。悪魔だって言われてたけど、おじさんはいつも光の向こうからやって来てドアを開ける。そして僕は怖くなってドアを閉め、また布団に戻ろうとしたところで目が覚める。

なんのことかわからない人は頭から読もう。
いつものみんなは前の話を思い出せ。

「それは、誰なんだろうねぇ?」

あ、これ夢だ。まだ僕夢の中にいる。でぇくのおじさん、もう街にいないもの。

「私はどこにでもいるよ。そういう人なんだ。夢の中でも、洞窟の中にも、そして君の中にも」
「おっちゃん、僕は僕のように生きたいのに邪魔をする奴がいるんだ。あれ、なんとかならないのかな?」
「うーん、難しいね。さっきの話でいうとさ、少年。最初に『起きなきゃ』って言ってたのは誰だい?」
「そう言えば……あれは誰なんだろう?」
「あれは、君自身さ。すると今この夢の中で君に話しかけているこの私は誰だろう?」
「でぇくさんじゃないの?」
「君の夢の中に出てくる私は、君なんだよ。君が作り出した私。私は私だけど、それは君が作り出したものさ」
髭の男は立ち上がり、身体を点検するように眺める。
「うん、良い出来だ。でも何か足りなくない?」
「あ、道具箱?」
「そうさ」
虚空から道具箱が現れ、髭の男はその重さを確かめるように持ち上げる。
「ドアを開けたら呼びかけてくる人。彼は一体誰なんだろう?」
「分かったらとっちめてやるのにね」
「なんで分からないのだろう?」
「眩しいし、すぐドア閉めちゃうし」
「じっくり見たらわかるのかな?」
「わかるんじゃないかな?」
「そうか、君は分かろうとしなかったから分からなかったんだね」
「どうしたらわかるんだろう?」
「どうしたら分かるかな? 近づく? 話す? よく見る?」

「それは近づく事でもあり、よく見る事でもあり、そしてじっくり話してみる事でもある。恐れずに近づいて、よく見て、よく話す。なぁに、私は彼をよく知ってるが、気のいい奴さ。なんにも怖いことはない。彼を知る為に必要なことを私は愛という。愛してやっておくれ。彼を、世界を、そして自分を」

でぇくのおじさんはそう告げるとドアを開けて出て行ったが、そうするとドアだったものは姿を消して部屋の中に冬の温かな光が差し込んできた。そうして僕は目覚めたんだけど……

◆◇◆◇◆◇◆◇

(ジョニー君パート長すぎない?)

はーい、エブリバディ! エブリデイ元気なジョニーさんだよイェイ! 今日は……薬屋さんでポーション万引きした所を出入りの冒険者に見つかり、スリープクラウドで眠らされて縛り上げられたジョニー君の中からお届けしておりまっす! ジョニー君の「起きたくない」って、それ呪文の力じゃないかな? それに僕、万引きはいけないって必死にブッブーって音を念じてただけで、起きなきゃとか言ってないゾ☆

「坊主、起きろ」
「ふぁーい……あれ?」
「……ん?」
「どうしたマグナス?」
「……ほぅ、面白いことしてるんだな、坊主」
「なんで縛られてんの、俺」
「……知ってるか? 泥棒は縛られて警邏に引き渡されるもんなんだぜ?」
「法の裁きを受けよ。神にも慈悲はある、改悛すれば罪も減じられよう」

 法の神官さんとは不味いな。こいつらガチガチのガチだから話通じんぞ……

「改悛します。改悛します。勘弁してください。なんでもしますから!」
「安易に何でもしますとか言ってはいかん。言葉は選べ、少年よ」
「坊主、ぶっちゃけ俺は弁償するなら許してもいいと思うんだが、金あったら盗みなんてしないだろ? 金策出来るんか?」

無理です(キッパリ)
職人のトコの住み込み丁稚に給与はありません。しかもジョニー君サボり気味なんで前借りとかも無理だと思います!

(お前は誰だ? そこで何をしている)
(え? あらやだバレてる?)
(精神寄生体か? お前が唆したのか?)
(とんでもございません。ジョニーさんは遵法精神を愛するナイスガイですから)
(……妙に大人びてるな? 二重人格という訳でも無いのか)
(……言うなれば守護天使の様な? ちょっと女神様と曰くがありまして……)

パキ……

「なぁ、ボー」
「だから何だマグナス」
「ちょいと、こいつ変わってるぞ。お前……いや、もう一人のお前、魔法使えるな?」
「え?」
「後ろ見てみろ」
あ、バレた。
「テレキネシスか。こっそりブツを戻してしらばっくれるつもりだな」
(Pガイストって言う術らしいんですけどね)
「何これ?」
「悪魔憑きか?」
「いや、悪魔では無いね。本人は守護天使だとか言ってるが」
「天使だと? 何故こんな少年に?」
「さぁな。因みにどれだけの重さを持ち上げられるんだ?」
(試したことないです。ベッドや机ぐらいなら楽勝?)

「金、稼げるんじゃ無いか?」

【続く】

方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!