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HGUC Zeta Gundam (Evolution) レビュー

開発意図や目標は判る。それを実際上手く設計に落とし込んでるが……

そもそもその目標が無理

1.Zの時代

Zガンダムやってた頃って、バルキリー(マクロス)の影響で変形ギミックがウケてたんですわ。(1stガンダムが1979年、マクロスが1982年、Zガンダムが1985年ね。因みに1983年にモスピーダ

どぅーゆーりめんばー?

同1983年にドルバック

星のーぴーあすー♪

モスピーダの流れ?のバイクが強化服やロボ変形するメガゾーン23がZと同じ1985年)

あれからごー無沙汰ーしーてーぃるけーれどー♪

当然Zガンダムやる頃には時代の要請として「変形メカ出して☆」というものが「大前提として」存在する。尚、サンライズ的には1982年(マクロスと同年)にザブングル→ダンバイン(1983)→エルガイム(1984)で、変形ロボ主人公は出していた。しかしこのラインナップ見ると判るが、変形に「ビックリドッキリ感」は無いんですわ。無理がない変形というか、商品化し易い変形というか……マクロスのバルキリーの優秀な所は「変形の意外性」「変形をアクションに活かす」という辺り。

で、あの永遠のチャレンジャーである富野はZガンダムやるに当たりバルキリーの秀逸なトコを取り入れる事にしたのだと思われる。

2.若者たち

もう一つ、マクロスが与えた衝撃ってのが、若手の採用。ガンダム制作秘話的な話を見ると、安彦がマクロス見て「なんでサンライズには美樹本がおらんのんじゃい!」とキレた話などが出て来る。若手の新しい感性とか発想も欲しかったサンライズでも、新人発掘や積極的な登用をするのであるが……諸君は古の賢人の言う

「類は友を呼ぶ」

と言う言葉をご存知だろうか?
サンライズである。あの富野を筆頭として貴族流離譚製造マッシーンの赤い男「安彦良和」とか変人と奇才が溢れて困った事になってるサンライズである。召喚した新人が揃いも揃って変人・奇才である事はいうまでも無い。

で、Zのデザインワークは大御所である大河原邦雄氏に加えて様々な若手がぶっこまれた。ガンダムのイベントで彼女と一緒にコスプレしてた「永野護(当時26ぐらい。エルガイムでかなりの部分を担当した。尚かなりアーチストであり扱い難い)」、「小林誠(当時26歳ぐらい。ドルバックとかでブイブイ言わせてた。やはり扱い難い)」、そしてボトムズのアニメーターやってた最若手、藤田一己(当時22歳ぐらい。多分一番扱い易い)

さぁ想像してみよう! 余りにピーキーな富野の下に個性が強すぎる作家性の高い連中が集結して、周りを固めるのが画業超人安彦とかガワラさん。そしてデザインの調整任されたのが最若手の藤田だ。

むっちゃやりづらいわ!

こんな蠱毒の様な環境で藤田を生贄に生まれたのがZガンダムなのである。

でね、Zガンダムでは変形メカのデザインやらせてるのに「なんで変形してるのか理由を述べよ」とか富野が注文付けたという。いやそのバンダイ方面からの注文なんだが、これは「どう動かすか、どういうシナリオ組むか考えろ」って話ですな。例えば採用されたZガンダムでは「単騎で地球降下出来る」とか、サブフライトシステムになるみたいな要素があるが……ただ変形して速く移動できますの場合、同時に出撃しても先に戦地に着いてフルボッコにされますわ。単独で速く移動するのではなく、僚機を連れて移動しないとまずい訳。先に挙げたデザインワーク関係者の内、永野や小林には無く藤田のみが持つのが「動画を描ける」という部分(アニメーターだからね) 最若手でありながらデザインの取りまとめ出来た(やらされた)のは、メカデザインに「魅力的な動きを付けさせる」事を期待されたからでは無いかと愚考する。

3.Zのパラドクス

そしてここからが問題なんだが……藤田一己はアニメーターなので、彼は絵で嘘をつくのが上手なのである。変形なども「セル一枚ごとに各部をゲッターロボ的に変形させて、さもちゃんと変形してる様に見せる事が出来てしまう」のである。

藤田には無く(或いは、弱く)、永野、小林、そしてガワラさんには強力に備わってるのが「立体化能力」である。永野はプロモデラー並みにプラモ作り上手いし、小林は実際モデラーを兼業してる。ガワラさんもメカデザイン時にモデル作ってプレゼンしたりする訳さ。

逆転王とか変形解説の為にガワラさんが説明用のモックアップ作ったのは有名な話

結果的に、だが。
Zガンダムは初期設定画(Zガンダム製作時の設定画稿)では、マトモに変形できない。一見マトモに変形できそうだが、アニメーターがやる「絵の為に関節がないとこで関節曲げる」とか「真っ直ぐな脛を曲げて作画」を前提にしているのだから仕方がない。んなもん完全3形態合体変形出来るゲッターロボ作る様なもんだ。(ドラゴンだけとかなら出来ないことも無いのだが)

その無理を、バンダイは無理矢理実現しようとしている。

一見「出来そうに見えてしまう」からタチが悪いのだが、それは藤田のマジックであり、実際には無理なんよ。断言しちゃるが完全変形Zガンダムはゲッター線当てないと完成せんわ。

4.Evolution!

無茶で無謀と笑われようと、道理を蹴っ飛ばして貫き通せば俺の勝ち! まぁ、そんな感じで設計されてるのがZのプラモですわ。だがしかし非ユークリッド幾何学的な造形はインジェクション金型では再現できないので、変形要素を入れようとするとどうしても「デザインを変える」必要がある。

こんなんだったかなぁ、と悩みながら組み立てている。

まぁ、ガンプラも時代の要請を受けて結構デザイン変えるから、Zガンダムのみがそれをやっちゃいかんとは言えない訳だが……ここに問題が一つありましてなー

「再デザインを魅力的にしたけりゃ、元デザインと同等レベルにデザイン出来る人連れてこないといけない」んですわ。

現在ガンプラ界隈ではVer.Kaとゆーカトキハジメによるリファインデザインがかなり多いのだけど、私が見る限りカトキハジメ氏のデザインは「イラスト的で、立体的ではない」
ちょこまか線を足すパターンが多くて「立体や機構設計は凡庸」である様に思う。Zガンダムのデザインやってた連中は藤田を除いて立体化が得意なフレンズであるし、藤田もアニメの動画描く関係上、立体の把握自体は出来るのだ(振り返るシーンとかで立体がキチンと立体的に描けなければアニメーターやれないだよ。ただ彼らは無理な立体も無理矢理画にするというヒサツワザを持ってるだけなのだ)

はっきり書こう。ZはMS形態とウェーブライダー形態の2種1パック構成にして、Z×2でダブルゼータだっ!って売ったらよかない? ウェーブライダーに張り付くZガンダム。んむ、シュールだ(苦笑)

両方の状態を両立させようとして中途半端になるよりも、中途半端な「変形」を捨てて「完璧な2つの形態」求めた方が良いと思うの。このEvoのZも割合MS形態のボリュームデザインは頑張って居るのだけど……

真ん中が高く、中心ラインがテーパーついてるんよ。

このウェーブライダー時の「青い部分」の解釈がイマイチなんよー
Zガンダムって変形するのが第一と思われてるが、背部のフライングアーマー部は「オプション」であり、設定上はフライングアーマー無しの背部画稿は実在する(アニメ放映時に模型情報辺りで見た記憶がある)
しかし令和の現代にその画稿検索しても引っかからないし、背面画稿はフライングアーマー付きのしか見当たらない。だから「仕方ない」のだけど……

なんだこれ?

見えない部分だから、なのか。変形を中途半端に取り入れたせいなのか。確か画稿では背中面もウェストが高い位置で「キュッ」と締まり、緩やかに広がる燕尾服の様なラインだった筈なのだが。

右側みたいなライン

ジムとかガンダムが所謂普通の「スーツのライン」であるのに対し、Zガンダムはテールコート風なんですよ。

なんで腰のフロントアーマー伸ばしちゃうかなぁ……(ここを短くするバランス感覚はガワラさんか永野の影響(どちらも服飾デザインやってる)ではないかと考えてる。ジムのケツはサイドベントだねぇ)

腰部フロントアーマー小さいんだよね

アニメ放映当時の1/144 Zガンダムは、画稿踏襲して背面が超カッコ良かった。

ネットで探してきた

プラモはプラモだから「作ってる最中に、普段は見えない所の美しさ」とか発見したりしてだな、その何気ない造形に「ぞくり」と来る辺りも、なんつーかこー、良いわけですよ。変形ギミックをスッパリ諦めてZガンダムのMS形態の良さ、立体の素晴らしさを追い求めたこいつはマスターピースだった。

壊滅的に動かないけど

いやもー呆れるぐらい動かないんやで(苦笑) でも、多少脛を細くして、一体化してた肩のアーマーを別パーツ化したり、腰の左右フロントアーマーを可動式にするぐらいしか改造しなかった気がする。

Zガンダムは変形せず、動きも限定的でえーんですよ。つーか、デザイン的に動かんもん、あれ。

それでもっ!と無理矢理動かすと無理矢理だから無理矢理な形になる(トートロジー)

しかしバンダイ的には良く動き、変形もして「MS/WR両形態でそこそこカッコいい」を目指してしまった……それが為に「プラモとして一番重視したい『カッコいい』が犠牲になった」

まぁ、ある意味エボリューションだ。ある物事に対して進化、発展して行くのがEvolution。上下ひっくり返るRevolutionではなく、既存のバンダイ戦略である「良く動くガンプラ(その代わり形が犠牲になりがち)」を堅持して発展させたという意味では正にEvolutionである。模型なのに型を模さずブンドドしやすいオモチャを目指してるの。

果たして多くの人がそれを希求してるかは別にして。

改造たーのすぃー☆派としては別に宜しいのだが、昨今の改造せずに組み立てだけするフレンズとか、カトキハジメみたいに形より筋彫りやデティール刻む事に執着してしまうフレンズにウケるんやろか? 素が悪いのはデコレーションしたりデティール書き込んでも効果薄いぞ? 

組んでて思ったが、KPS(強化ポリスチレンの略語らしいが、まさかKyouka PSだったりするのか、これ……)開発も、ポリキャップ仕込めない微細関節構造の保持力持たせる為にやって無いかなぁ? なんかこー、プラモデルや模型ではなく「組み立て式オモチャ」を目指している、様な……

5.未来へ

ちょいと否定的な言葉が続いてしまったが……バンダイの目指す方向性から考えると、本キットは正にEvolutionである。超テクを駆使して高いレベルで目標を達成している。それは間違いない。ど変態プラスチック成形技術を持つバンダイらしい製品だ。

ただ、その目指した方向性が皆に受け入れられているかと言うと、かなり怪しい。なんせEvolutionって2019年発売のクロボンX1までなんだよなぁ。(第一弾のZが2017年で、3年でプロジェクト止まったンゴ……)

リバイブの方が少しは受け入れられてるみたいだが、それでも11種しか無いみたい。

リバイブのデザインやエボリューションモデルのノウハウはいつの間にか「当たり前のもの」として通常のガンプラにフィードバックされる様になったと見ることもできる。

動き(ポーズ)とデザインの両立という部分で、ようやくMSDなどでは「何が重要でどんなデザインしなきゃならないか」勘付いてきた気配はあるが、見てる限りだとまだまだ途上であり道は険しい。人間の様なポーズは人体に似た構造でなければ取れず、この人体構造把握がバンダイの設計部署では弱いのだ。

もうすぐガンダム40周年。そろそろバンダイが「プラモデル屋」になるか、「組み立て式のオモチャ屋」になるかが決まる様に思う。必要なのはEvolutionかRevolutionか。

ワイはconversion(回心かいしん。キリスト教的な用法)だと思うんですけどネ!

方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!