草薙少佐よ永遠に!攻殻機動隊の思い出
田中敦子が亡くなった。最近有名声優の死去が多く報じられてきたが、彼女の死ほどショックを受けることはなかった。61歳だと言う。年下のくせに先に死ぬなよと思った。彼女については声ばかりではなく、切れ長の鋭い目つきの美人の姿が浮かぶ。
彼女の声を聴きながら、本人の映像が草薙少佐と二重写しになる。私にとっては彼女自身が草薙少佐だったのだ。
最初の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』。公開時には日本ではまったくヒットしなかったが、1996年のアメリカのセルビデオで一位の売り上げを記し話題になった。講談社に勤めていた友人がそれでも赤字だとぼやいていた。凝りすぎて金がかかり過ぎた映画だったのだ。
映画「マトリックス」を創ったウォシャウスキー姉妹がオマージュを捧げたオープニングシーンから目が離せなくなり、見終わった時感じたのは、ショックだった。正直に「凄い」と思った。監督押井守の才能、音楽川井憲次の凄さ。傀儡謡(くぐつうた)は忘れられない曲である。日本の古来民謡をテーマ曲にした神話的なその歌詞は今でも諳んじられるほどだ。
その後何度この映画をみたことか。テレビドラマシリーズの「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)」も実に完成度の高い物語で未だにいくつかのシーンは脳裏に浮かぶ。(バトーの目前でAIタチコマが息絶えるシーン、サリンジャーのライ麦畑を思い起こすシーン等)
その後「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」
公安9課が結成される経緯を描いた「攻殻機動隊 ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE」。9課のメンバーがどうやって集められるかが描かれとても興味深い。
ネットフリックスに入り観たのが「攻殻機動隊 SAC_2045」だった。
公安九課のメンバーに再会できて血湧き胸踊った。荒巻課長以下、誰もがかけがえのないメンバーだったのに、
その中心人物が亡くなったとは。彼女が亡くなって気がついた。いつの間にか私は彼女の大ファンになっていたのだ。
ハリウッド版の「攻殻機動隊」を映画館で見た時も滅多に見ない吹替版で鑑賞。スカーレット・ヨハンソンを吹替していた。
私はヨハンソンを観ながら、田中敦子をそこに見ていたと言っても良い。
草薙少佐はどんなに追い詰められても死なない。数々の死地を潜り抜けてきた。大男のバトーと殴り合っても一発でのしてしまう程強かったのだ。
それが亡くなってしまうとは。
昨年公開された「攻殻機動隊 SAC_2045 」。その舞台挨拶で彼女は涙を浮かべて
これは今となってはもう草薙少佐を演じるのは最後だと死を予感した彼女の遺言にしか見えない。
本当に残念である。傀儡謡をレクイエムとして聴きながら祈る。
合掌田中敦子さん、やすらかに。遠神恵賜。遠神恵賜。
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