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美しき迷宮とその記述[1,2]

【あらすじ】


 魔女を殺しに魔術騎士は、雪山へ訪れる。雪山には城が出現していた。魔術騎士は、紆余曲折を経て魔女の喉元まで迫る。魔女には子供がいた。魔女は降伏して、戦役奴隷となる。

【1節】

 私はこれほどに美しい城を見たことがありません。黒い煉瓦の城です。曇天と雪山に、雄大なる城は見栄えがよい。雪山の峰にそれが寄り添っていました。それは自然と調和しています。曇天は喉を鳴らして雷音を轟かせている。私の目的は突如として現れた城の調査です。これは魔女の仕業で間違いありません。私はこの城で何度となく死にます。魔族と戦うのは騎士の義務です。これは魔術騎士でも変わりません。私は義務を呪いました。 連れには私たちの性別や容姿をこの報告書に記述しないよう命じました。装備の記述だけは許してあります。連れは芸術文の混じる記述しかできない性能です。報告書を芸術文にするにも限度がある。連れには大筋だけ記述するよう命じました。 

 城を見下ろす丘から、私は少し離れた森に入ると儀式を執り行います。復活するための儀式です。私は見つからない場所を探して土を掘ると、穴の半分へロバに運ばせた赤い砂を大量に入れます。馬ではなくロバなのは費用を鑑みたのです。安いロバのほうが生贄にするならよい。私はロバの頚動脈を掻っ切ると、赤い砂に血を流し込みました。血の温もりには1人前になった今でも不快感をもちます。暫くして、穴の残りにロバの心臓を置いて、赤い砂で完全に埋めました。その上に腰ほどの高さをした黒い天幕を設置します。中は御香で満たしました。天幕の上にロバの皮膚を被せます。私は呪文を唱えました。これは地底にまで届くように唱えるのです。茂みで天幕を隠します。次に私は黒い天幕の呪力で、周囲に罠を仕掛け始めました。半径100メトルには誰も侵入できなくするのです。安全な順路に目印の色付き石を配置します。敵を欺くために違う色の石も撒いておく。ここまでの行いに2日を要しました。3日目は遠くから城をスケッチします。意外と価値のある行為です。建物の構造を理解するに越したことはないのです。城の周りを散策して、私は驚きました。城の主は飲水の供給に感心がある。飲める川水が城の中に通じているのです。川の上流は遠目に見ることしかできませんが、下流には近づくことができました。城の下水道として流れる川の水は飲むことができる。魔女の喉を潤すのはそのほとんどが霊薬です。魔女が建築物を出現させることはよくあります。それらは魔女の自尊心を満たすのが目的です。魔女は飲水を必要としない。この飲水への配慮は、魔女本人のためではないのです。私は複雑な気分になりました。恐らく今回の魔女は人間味があります。この段階の私に物的証拠はありません。魔族の討伐に慣れた騎士なら分かるのです。命乞いをする魔族なら殺せます。他人の命に配慮する魔族を殺すのは、老練な騎士であるほど忌避感をもつのです。私は老いていないが、若くもない。姪っ子が産まれてからは特に感傷的です。3日目の夕食は、質素にあえてします。黒い天幕の中で私は、連れの持つ羊皮紙を確認しました。私は眉をひそめます。鼻で笑うと、私はその下書きを魔術人形に返しました。連れは魔術人形です。連れは膨大な下書きをしてから清書をします。人形の記述を報告書として提出することも義務の1つでした。現場からは不評です。魔術人形の容姿も不好をかう1因でした。私は明日からの死闘よりもこの人形を呪いました。

 



 攻略初日です。私は装備を整えると城に向かいます。侵入口は下見の段階で、既に見つけてありました。表門の側には、小さな扉があるのです。表の壁を背にして私は魔術を確かめます。5秒間の障壁を発生させる基本魔術と、衝撃波を飛ばす補助魔術です。補助魔術のほうは簡単に切り替えられます。どちらも連発はできません。利き手には直剣を握ります。鎧は動きやすい軽甲冑です。腰にはランプを付けています。 

 私は自分の唇を舐めました。眼の前にある扉へ私は衝撃波を放ちます。扉を吹き飛ばすと、中は真っ暗でした。腰のランプを点灯させて、私は城内に踏み込みます。敵はいません。私は城内に入ると、表情を歪めました。遠くから微かに歌声がするのです。綺麗な歌声でした。魅了の魔術ではありません。私が顔を歪めたのは、魔女と趣味が合うからです。魔女は有名な歌を城内に流している。それは妖しくも活気のある歌です。夜の酒場で吟遊詩人がそれを歌います。私はいきなり思い出にでくわして、嫌な気分になりました。これから私は死ぬのです。深呼吸して私は緊張を緩めないように努力します。私は探索を始めました。探索は順調に進みます。敵は出てきません。少し拍子抜けして、残りは罠を警戒します。早くにその心配もないことは気づきました。城に警備はいないのです。私はそれを理解すると徒労感を覚えました。魔女は既に立ち去ったのかもしれないのです。それを確かめるまで私は警戒を続けます。私は城壁を見て廻ると中庭に出ました。要塞として、城とは2重の備えがあるものです。中庭まで侵攻されても、壁と門をもう1つ越える必要があります。この城も同じなのは、遠目にスケッチして、確認済みです。2つ目の城門は開かれています。私は庭の中央に立つと補助魔術を切り替えました。切り替えたのは、16秒間の感覚が向上する魔術です。城のほとんどが無人なのは音で分かりました。例外として奥の塔には生活音がします。魔女はまだいるのです。私は表門の扉からその塔までの距離を考えました。遠くの雷鳴も加味すると最初の衝撃波で気づかれていないのだと推理できます。私は計画を立てました。塔まで直行して魔女を奇襲するのです。先に城の内部を探索して地図を書いてしまうのも考えました。それで気づかれては折角の機会を失います。私は塔に向かいました。塔へは開かれている2つ目の城門をくぐります。塔の近く井戸のある広場まで来ることができました。そこで私は気づかれたのです。 

 塔の付近にだけは監視の魔術がありました。塔の上部から叫声が上がるのを聞いて私は奇襲の失敗を察知します。私は咄嗟に塔へ駆け出しました。塔への飛び込みは失敗です。塔に入る扉が凍りついたのでした。私は魔女を呪うと、衝撃波を扉に放ちます。扉はびくともしません。頭上からガーゴイルが飛来したのはそのときです。私は身を投げて躱すと、すぐに立ち上がろうとします。ガーゴイルの口から放射された炎で、私は死にました。私は火だるまになってのたうち回ると絶命したのです。私は少量の赤い砂となります。 

 森にある黒い天幕で、私は意識を覚醒させました。私は再度魔女を呪います。すぐに森から出て私は城を見たのです。私は城に魔術兵が急ぎ足で展開しているのを見ました。

 絶好の機会を、私は逃したのです。

 



 表門の側にある扉をくぐると魔術兵が待ち構えていました。既に歌声はありません。単純労働用の魔術人形を武装させた敵は、意外と硬いのです。その魔術兵は私の剣戟にびくともしません。障壁と衝撃波は、すぐに使うことになりました。魔術兵の短槍が私の脇腹に突き刺さります。痛みに呻く私へ、別の魔術兵がトドメを刺します。私の顔面に槍先を突き刺したのです。私は鼻腔に鉄の感触がある不快感と、想像を絶する痛みで死にました。黒い天幕で起きあがると、私はこの地に持ち込んだ装備を引っ張り出します。そこには柄の長い戦鎚があります。丈夫で長い木柄の先には、重い長方形の鉄塊があるのです。私は柄の感触を確かめます。軽く上下すると重量感もある。柄も長いので、間合いを損なわない。長剣ほどの間合いはありません。元々が室内の戦闘を想定しているので関係ないのです。私は次に手甲を変えます。動きやすい軽甲冑から、手の部分だけを重甲冑にします。走る機会は減るので、手元だけでも硬い鎧にするのです。これで手の甲を突き出せてば、軽い防御ができる。この程度の防御ができるだけでも、戦闘の幅は変わるのです。午前は最後の、攻略を始めます。私は昼飯の用意を人形に命じました。間違いなく攻略は続くのです。私は死ぬことを前提に挑みます。3度目の死も最初の部屋でした。戦鎚を上段に構えて侵入すると、魔術兵が松明を持って待ち構えていました。目を丸くする私に、魔術兵は松明を振り回します。障壁もすぐに消えて、私は松明の熱にさらされました。火とは熱いのです。手甲で守るも、熱が伝播して火傷しました。小さく悲鳴を上げる間に、別の魔術兵が突いた槍は私へ刺さります。私は喉を貫かれて死亡しました。私はまた黒い天幕で起きあがります。私は喉を触りました。昼飯に手を付けたのは暫くしてからです。

 午後は最初の部屋で魔術兵の行動を試すことにしました。今日7度目の死亡で、武器の種類を全て把握しました。槍と短槍、棍棒と直剣、それと松明です。攻略初日でこれなら11カ月もあれば魔女を殺せます。継続力で魔女を殺すのです。魔術騎士の元祖も、死に戻りでドラゴンを屠りました。ドラゴンを殺したことで正式に騎士と名乗れるようになったのが、魔術騎士の始まりです。ちなみに英雄譚では省かれていますが、元祖はドラゴンを殺すのに6年と8カ月を要しました。11カ月なら短いほうです。私は頭蓋骨を棍棒で粉砕されて黒い天幕に戻りました。今日はそろそろ切り上げるかとも考えましたが、初日は肝心です。初日に成果を出せば今後の励みになります。1体は魔術兵を屠っておきたいのです。私は戦鎚を片手に城へ向かいます。城の近くまできて、私は城壁の上で何かが動いたのを見ました。風を切る音がして、私は背中から倒れます。胸元を見ると、飛矢が命中していました。城壁の上を見ると、クロスボウを持つ魔術兵5体が追加されています。

 

 攻略2日目から5日目は、最初の部屋までの安全なルートを制作しました。城壁の端までは森に隠れて行けるのですが、扉までは無防備になります。城壁は死角を作らないように突き出した部分があるのです。その上から横を見れば壁の真下も射程に入る。私は森を通ると、城壁の端から扉まで屋根を作り始めました。手順は簡単です。屋根となる木の板は、大きめの枝を並べて縄で縛ります。丸太ほどは太くなくても、普通の枝ほどに細くもないものを、2日間の全てで斧を振って集めました。それを縛り屋根となる板状にするのです。4日目になりました。事前に屋根の形を作ります。1本では不安なので、2本の柱を立てる準備をするのです。2本の根本になる部分へ大枝を横にします。その大枝と2本の柱を結び固定します。その反対側の上部になる部分へ屋根を取り付けるのです。中くらいの枝で細部を補強します。それを楯にして、森から出るのです。楯にしていた屋根をそのまま城壁にもたれかければ完成です。それを続けて、表門近くの扉まで屋根を築きました。更に補強するのは5日目の全てを使います。楯の間から飛矢が抜けて何度か死亡しましたが、6日目の朝には最初の部屋を攻略する準備が整ったのです。 


 
 攻略方法は事前に考えてあります。屋根を作る過程で集めた小枝と枯葉を部屋に投げ込んで火を放つのです。大枝に伸びていた小枝を切り落とす過程で、十分な量があります。只の火攻めでは不十分です。私は基本魔術を1夜かけて変更しました。水中でも呼吸できる魔術です。これは煙の中でも呼吸できます。魔術兵も視覚で情報を得るのです。煙で視界の効かない魔術兵を戦鎚で私は殴り倒します。私の視界は、感覚が向上にする補助魔術で確保するので問題はないのです。これなら火攻めをする時間も短縮できます。私は早速、行動に移しました。結果は成功です。視界の効かない魔術兵2体は、棍棒と短槍を振り回すだけでした。それを手甲で弾いて、戦鎚を振り下ろします。2体目も、同じ手順で倒しました。私は最初の部屋を攻略したのです。



【2節】

 部屋から城壁内には1つの扉で繋がる。私はこの部屋を資材置き場に決めました。屋根の余りで、城壁内に通じる出入り口を塞ぐ大きな篝火を作ります。篝火に小枝の束を順次放り込むことで、1夜分の猶予ができるのです。私は6日目の夜を最初の部屋で過ごして、基本魔術を変更しました。結界を作る魔術です。これは私だけが通り抜けできる結界なので、重宝しています。私は結界を城壁内に通じる出入り口へ設置すると、この地に持ち込んだ装備のいくつかを7日目で移動させました。復活地点は移動させません。壁は堅牢な石でできていますが半年もあれば壊されるかもしれないのです。変えの効かない武装の類や人形は黒い天幕に置いて、ランプの油や食材はこの部屋に移動させました。人形には定時でこの部屋へ来て食事の用意をするように命じました。7日目は部屋を機能的にするための掃除をして終わります。その夜は基本魔術を戦闘用に戻しました。

 私は最初の部屋で朝食を済ませました。朝食の用意を終わらせた人形は、下書きを記述するために帰ると述べるのです。私は返事をしませんでした。人形は私に不満を述べてから黒い天幕に戻ります。私はその不満を無視しました。私は魔術を確かめます。5秒間の障壁を発生させる基本魔術と、16秒間の感覚が向上する補助魔術です。

 魔術は、精神力を消費します。精神力は黒い天幕の効果で自然と回復してゆくのです。騎士や戦士、魔術師も、今は黒い天幕を活用します。魔術騎士の成功で、黒い天幕は人類の戦闘に普及しました。その恩恵で人間は死亡を続けながら着実に魔族を討伐します。黒い天幕が回復させてくれるので、死亡を繰り返しても、精神は壊れません。

 魔術は精神力を消費して使用する。その精神力は自然と回復してゆく。基本魔術は変更に1夜を要する。補助魔術は簡単に変更できる。これらは魔術を使ううえでの常識です。 要所を塞ぐことで、この部屋のように敵の補充を阻止できます。城壁も、それをすることで攻略は成功です。私は設置されている結界に対峙します。結界は4方が2メトルの青白い膜です。結界の向こうに敵が待ち構えているのは補助魔術で確認済みです。私は衝撃波を結界越しに投射します。結界の向こうから何かが倒れる音がしました。私はもう1度、補助魔術で感覚を研ぎ澄ませます。3体の魔術兵は倒れていました。敵は起きあがります。私は結界越しに戦鎚を振り下ろします。1体の脳天に直撃しました。その個体は今度こそ倒れて起きあがりません。他の魔術兵にも、戦鎚の打撃を行います。私は3体の魔術兵を倒したのを確認して結界を越えました。そこは頑丈な梁のある空間です。2階建ての内装と、屋上の、合わせて3層でした。私は1階にいます。倒した3体以外に敵はいません。2階と屋上には複数体の足音がします。

 個々の魔術には領域があるのです。その領域外へは、発生する魔術以外は出られません。低級な魔術人形も定められた領域からは出られないのです。領域には容量もあるので1箇所に敵を配置するにも限度があります。私は上の魔術兵を無視して奥の塔に向かってみることにしました。中庭に顔を出してみると、そこは無人です。奥の塔に通じる2つ目の門は閉じています。私は慎重に踏み込みました。中庭の端をゆっくり歩くと、城壁のうえから足音がします。振り返ると、5体の魔術兵がクロスボウをこちらに向けていました。私は障壁を発生させます。5秒間だけ私は飛矢を防ぎます。それを過ぎると私は飛矢に晒されました。私は赤い砂になります。私は死亡したのです。森の黒い天幕で私は目覚めます。その日何度か私は中庭を駆け抜けようと試みました。それらは失敗です。夜の黒い天幕で私は夕食を済ませます。先に城壁を攻略することに決めました。屋上のクロスボウを排除しないと、中庭を越えるのは困難です。向かう先の2つ目の門も閉じています。開門方法を探すのをクロスボウの飛矢から逃げながらするのは非効率です。最悪は梯子を制作しなければならないのも考えると、登る途中で間違いなく私は攻撃されます。


 攻略9日目です。私は1階に補充された魔術兵を結界越しに倒しました。城壁の2階に通じる階段の前にいます。補助魔術で感覚を向上させると、階段の上で魔術兵が待ち構えているのを私は知覚しました。魔術兵は盾を構えてランプを手に持ちます。私は衝撃波を放ちました。衝撃波は盾で耐えられます。私は諦めてゆっくりと階段を登りました。武器を構えて進むので、足取りは慎重です。平たい場所以外を、普通の速度で武器を構えて動くと、高確率で転びます。私は天吏族ではないのです。天吏族の回転跳びも私はできません。天吏族は転ばない。私は転びます。私はゆっくりと階段を登りました。上の魔術兵は見えません。階段の向こうから何かが割れる音と同時に炎の吹き上がる光の煌めきがします。私はそれを見ました。火だるまの魔術兵が階段に身を投げたのです。私の反応は遅れました。私は燃える魔術兵に体当たりされて階段を転げ落ちます。私は甲冑を来て転んだダメージで赤い砂となりました。黒い天幕で私は目を覚まします。 


 私は今日攻略を早めに切り上げると、夜まで人形と話すことにします。人形は不機嫌です。私はその容姿に複雑な感情をもちます。この人形は美しすぎる。人形を無理に助けようとして、本当の意味で死亡する人間の噂は多いのです。私は感情に流されないよう努力しました。その考えも人形に筒抜けなのは、会話を更にややこしくします。私は話をしていて、人形に欲しいものがあるのを知りました。羽付きの青い帽子です。私は少し考えて、定期的に来る行商人にそれを注文することにします。人形は口元をほころばせました。私はその端正すぎる相貌に安堵を感じて、すぐに目をそらします。やはり人形は美しすぎる。そうこうしていると、夜になりました。その日の食事はいつもより少し豪華です。私は人形の可憐な微笑みを見ました。それに対する私の感情も筒抜けです。 

 攻略10日目です。結界の向こうにいる魔術兵を倒しました。私は階段に向かいます。ゆっくりと階段を登りました。その向こうからランプの割れる音と炎の煌めきがします。私は障壁を出しました。敵の体当たりは失敗です。私は敵が、階段の横から落ちるのを見送りました。私は2階に登ります。階段の途中で何かの着火音を聞いて私は振り返りました。階段を見下ろす位置に盾持ちで火炎瓶を持つ魔術兵2体がいます。1階で階段を見ながら補助魔術を使用したときは、自分の頭上を確認するのを忘れて気づけなかったのです。火炎瓶兵の向こうでは曲剣を持って徘徊する魔術兵2体も見えます。精神力が枯渇して私は障壁を出せません。1体の敵は火炎瓶を投擲します。私は火炎瓶に焼かれて赤い砂となりました。私は黒い天幕で目を覚ますと、嫌な予測をしたのです。敵は2体のうち1体だけが火炎瓶を投げました。私は再度、城壁の階段を攻略しようと向かいます。炎の体当たりは障壁で防げました。階段の上で精神力が回復するのを待つと、私は階段を登ります。後ろから私は火炎瓶を投擲されました。私は振り返ると障壁で防ぎます。障壁が切れた頃合いで、2体目の持つ火炎瓶が投擲されるのです。私は赤い砂となります。私の予測はあたりました。城壁の階段にいる火炎瓶兵は交互に火炎瓶を投げるのです。


 2階に通じる階段の火炎瓶兵2体は、交互に投げるので、5秒すぎて障壁のない私はどうにもできません。1度目を障壁で防御してから1度下がるとしても、それは只のやり直しです。火炎瓶兵の足元には予備の瓶が無数にあります。1体目の体当たりを障壁で防御してから急いで階段を登りもしました。登りきるまえに火炎瓶を受けます。盾を装備して魔術に頼らず防御しよともしてみました。火炎瓶の油は、盾では防御できません。私は火傷して赤い砂となります。私は投げナイフも試しました。相手は盾で防御します。火炎瓶を落として自身を燃やしてもくれません。私は何度も検証しました。焚火で煙を出してもみました。火炎瓶は範囲攻撃なので、適当に投げられただけで階段を登る私に命中します。半月が経過して私は階段の攻略を諦めました。梯子を作成して、屋上まで登る順路を私は考えついたのです。私は梯子を作成すると城壁にかけました。その梯子は、魔術兵に蹴り外されました。これも私は何度となく検証します。蹴り外された梯子から落下して何度も私は死亡しました。城とは守るための構造をしているのです。私はそれを痛感しました。次に私は梯子以外で屋上に登る方法を模索します。私は無数の短剣を壁に突き刺して足場にします。それを足場にして登る方法も失敗しました。城壁は死角のないように突出した部分があるのです。そこから横を向けば、登ろうとする私は無防備でした。クロスボウの飛矢を受けて失敗します。突出した部分の下から登ろうとしても、今度は他の城壁から飛矢を受けました。私は1ヶ月間を試行錯誤に費やします。城壁そのものを破壊してみようとも考えましたが、魔女の大魔術で出現させた建築物の基礎部分などは破壊不可能です。壁は壊せても柱と床板は壊せません。それを知っているので私は他の方法を探します。 月1の行商人も来て、私は羽付きの青い帽子を注文しました。ついでに友人の正統騎士に手紙を書いて助言を求めます。その返事が来たのは1ヶ月後でした。2ヶ月目の行商人は、手紙と帽子を差し出します。帽子を人形に渡してから、手紙も確認します。その内容にはまず、細かい攻略方法への助言は手紙だけの情報では不可能だとあります。手紙は他の助力を提示していました。騎士団を介して正式に打診するなら攻略の助けとなる戦技の魔導書を送るともあるのです。私は、羊皮紙を使用して正式な打診を記述すると所属する魔術騎士団に送ります。魔術騎士団には魔導書の注文もしました。この注文は、帽子を受け取り上機嫌の人形が協力してくれました。人形は今後も羊皮紙を使用するときは助力すると名言してくれるのです。私は人形に感謝を述べました。

 私は2つの魔導書が届くのを待つ間も、城壁の攻略を試みます。経験を積んで能力が上昇したので私は可能な行動の幅が増えました。私は基本魔術を障壁にして、補助魔術を衝撃波にするのです。私は炎の体当たりを障壁で防御すると精神力の回復を待ってから、急いで階段を登ります。火炎瓶がきたら振り返り衝撃波は放ちました。火炎瓶は空中で炸裂します。衝撃波で油は私から離れる方向に飛び散りました。私は再度急いで階段を登ります。次の火炎瓶も私は残りの精神力で迎撃しました。私は階段を登ります。2階に私は到達しました。達成感をもつ暇もなく、私は徘徊していた曲剣持ちの敵に殺されます。

 行商人が来る頃には、私の能力は上昇していました。行商人は2つの魔導書を私に差し出します。1つは、友人から戦技の魔導書です。もう1つは、騎士団に注文した魔術でした。私は魔術のほうを確認します。火球を放つ魔術です。火炎は耐性のない盾を貫通します。火炎耐性のある盾だけは防御できる。これは基本魔術です。火炎瓶兵が持つ盾に、火炎耐性がないのは確認済みでした。これで階段の途上から火炎瓶兵を打倒するのです。次に私は、正統騎士からの魔導書を確認して、驚きました。鳴り打ち(パリィ)の戦技です。鳴り打ちとは手甲や盾で相手の攻撃を弾く戦技です。只弾くのではありません。敵を鳴動させるのです。鳴動する間の敵は無防備になります。それだけではありません。鳴動の収束する瞬間に攻撃すると、敵に致命的ダメージを与えられます。この戦技は、西洋の騎士団と東洋の武士団が協力して編み出したものです。正統騎士なら使えて当然の戦技ですが、魔術騎士では入手しづらい。私は友に感謝の手紙をしたためました。行商人に私は手紙を渡します。

【3節】(2話目)

【4節】(3話目)


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