「まんじゅうこわい」の噺
ぷらすです、こんばんは。
「寿限無」の時にも名前を出したんですが、今回の「まんじゅうこわい」は「寿限無」「目黒のさんま」などとともによく知られた噺で、東京では若手が鍛錬のために演じるいわゆる「前座噺」のひとつとされているそうです。
ストーリー
暇を持て余した若者たちが数名集まって駄話をしているうちに、それぞれが怖いモノを言い合うという展開になっていきます。
ある者は「クモが怖い」と言い、またある者は「俺は大抵のモノは平気だが、蛇だけはダメだ」と言い、「なら俺はアリが怖い」と言い合う。
するとの中のひとり(主人公)が「大の大人がくだらないものを怖がるとは情けない。俺は世の中に怖いものなどない」とうそぶきます。
それにカチンときた若者たちが男に「お前本当に怖いものはないのか」と詰め寄ると、男は渋々、「本当はある」と白状します。
普段から偉ぶって仲間を小馬鹿にする主人公の弱点をなんとか聞き出してやろうと、みんな口々に「なら何が怖いんだ」と訊くと、主人公は小声で「まんじゅう」と言い、「まんじゅうの話をしただけで具合が悪くなった」と、隣の部屋で(あるいは、自分の長屋へ帰って)寝込んでしまいます。
残されたみんなは、普段から気に入らなかった主人公の弱点が分かって大喜び。
早速みんなで金を出し合って、彼をまんじゅう責めにしてやろうと、大量のまんじゅうを買い込み、寝ている男の部屋に投げ込みます。
「ぎゃああ」と目が覚めた男は悲鳴を上げて狼狽しながらも、「こんな怖いものは食べてしまって、なくしてしまおう」「あぁ、美味すぎて、怖い」などと言いながらムシャムシャと全部食べてしまいます。
ここにきて、主人公に騙された事を悟ったみんなが怒り、「お前、本当は何が怖いんだ!」と詰め寄ると、主人公は満足げに一言、
「今度は熱いお茶が怖い」
というオチ。
このネタで一番重要なのはやはり、主人公が美味しそうにまんじゅうを食べるところです。
「怖い怖い」と言いながら、両手に持ったまんじゅうを食べ、たまに喉に詰まらせたり、指についたアンコを舐めとったりと非常に忙しく、その上で、まんじゅうを美味しそうに見せなくてはならないあたりが、若手の練習ネタとして丁度いいんじゃないかなと思ったり。
ネタ自体は短いし、「前座噺」として有名な本作ですが、五代目柳家小さんや、三代目桂三木助は晩年まで得意ネタとして長く演じたようです。
また上方落語では、冒頭の「怖いもの」を話す場面で狐に化かされた話や、若い頃に自殺の名所で女の幽霊を目撃した(夢を見た)老人の回想を、怪談話のようにたっぷり盛り込むバージョンもあって、そっちは30分以上の大ネタとして語られる事もあるみたいです。
シンプルだけど実に上手い構造で、ある意味、落語のお手本のような噺ゆえに、色んなバリエーションがつけやすいのかもしれませんね。
ではでは。
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