スケッチ 「旧天文台」



町の中央にある、常磐公園は僕の子供の頃からの遊び場だ。
冬のあいだは雪に閉ざさて人影もないけれど、雪が溶けると平日でも散歩がてら色んな人がくる。

そんな常磐公園内にある施設は、老朽化にともなって少しづつ改装されて形を変えていくけれど、僕が子供の頃からまったく形を変えていないものも幾つかある。
公園の中央にある大きな人造池の「千鳥ヶ池」、公園と離れ島を繋ぐ太鼓橋、上川神社頓宮。そして人造の小山の頂上にちょこんと乗っかった、小さな小さな「旧天文台」だ。

今は別の場所にできた科学館に立派な天文台ができて、実質お役御免になっているけれど、僕にとっての「天文台」はこの、縦に置いた土管の上に丸い帽子を乗っけたような形の建物なのだ。

と言っても、小さかった頃はこの建物が何なのか、さっぱり分からなかったけれど。

ただ、好きだったのは覚えている。
直径4.5mというサイズと、なんだか秘密基地を連想させるデザインが子どもの心に響いたのかもしれない。

常磐公園に遊びに行くと、この小山を上って天文台の横に立って、必ず千鳥ヶ池を眺めた。
僕の号令で、千鳥ヶ池から巨大ロボットが出てくる妄想をしていたような気がする。

小学校3、4年生のころに、この天文台で月のクレーターを見るというイベントがあって、初めてみる天文台の内部に僕は興奮した。
ドーム中央がスライドして星空が見え、その中央には五藤光学製15cm屈折望遠鏡がドンと置かれていた。

超カッコイイ。

月のクレーターそっちのけで、小学生の僕はドームの中やいつもと違う形の天文台の周りをグルグル駆け回った。

それからずっと、「旧天文台」は僕にとっての特別で、お互いすっかりくたびれた姿になった今だって、やっぱり特別なのだ。

#スケッチ  



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