見出し画像

話題のドラマ「SHOGUN 将軍」1・2話を観た感想

ぷらすです。
2月27日(火)より全10話のリミテッドシリーズとしてディズニープラス「スター」で独占配信されている、『SHOGUN 将軍』の1・2話を観た感想です。
評価サイト「Rotten Tomatoes」では批評家から100%の高評価を得て、「ゲーム・オブ・スローンズ以来の傑作」と話題のドラマですよ。

伝説のハリウッド製時代劇をリブート

本作「SHOGUN 将軍」はジェームズ・クラヴェル1975年の小説『将軍』(Shōgun)が原作。1980年には三船敏郎主演、アメリカNBCで制作・放送のテレビドラマドラマ化され、全米視聴率は平均32.6%、最高36.9%と大きな話題を呼びました。
三船敏郎主演の「Shōgun将軍」は、日本では1980年11月に125分に編集された映画版が公開。翌年テレビ朝日系列でドラマ版が8日連続で放映されたのだとか。
僕も当時、三船敏郎主演のハリウッド製作の時代劇として、日本でも大きな話題になったのは記憶しています。

そんな伝説的ドラマである「Shōgun 将軍」を、現在ハリウッドを拠点に活動する真田広之主演で全10話のリミテッドドラマシリーズとしてリブートしたのが本作「SHOGUN 将軍」です。
真田は「日本人の役は日本人がやり、日本から時代劇専門のスタッフを呼ぶこと」を条件に出演を引き受け、更にはプロデューサーも兼任する形になったそう。
彼が出演に際して上記の条件を出したのは、過去に出演した「ラストサムライ」で正しい日本を伝えられなかったという思いからで、少なくとも1・2話は僕の目から見て、日本の時代劇と比べてもまったく遜色がない出来になっていました。

あらすじ

そんな本作は、「関ケ原の戦い」前夜を舞台にした時代劇。死の床についた太閤(豊臣秀吉がモデル)が5人の有力大名を「五大老」に任命。息子の八重千代が元服して新しい統治者となるまで、合議制で政治を行うように取り決める。
しかし太閤亡き後、五大老の中での確執が表面化。
五大老頭格である石堂和成と杉山・木山・大野らは一致団結、脅威となる関東領主・吉井虎永の権勢を奪わんと反乱の疑いをかけ大坂城に呼び出す。孤立無縁となった虎永は、敵の包囲網が迫る中、石堂らと対峙することを決意するが。
というストーリー。
一応、本作はフィクションですが、吉井虎永は徳川家康、石堂和成は石田三成というように、実在する人物や史実が元になっていて、そんな彼らの覇権争い+アジア圏の貿易を独占していたポルトガルの宣教師や商人らの思惑や陰謀が渦巻く壮大な物語を、三浦 按針の名で江戸時代初期に徳川家康に外交顧問として仕えたイングランド人の航海士ウィリアム・アダムズをモデルにした、ジョン・ブラックソーン/按針の目を通して描いているんですね。

時代背景

この当時、ヨーロッパでは「プロテスタント」と「カトリック」との対立が激化。カトリック国のスペインとポルトガル、プロテスタント国のオランダとイギリスはそれぞれ結託し、激しい戦いを繰り広げます。
また、いわゆる「大航海時代」の先頭に立っていたスペインとポルトガルはアジアでも航路を開拓。最東端の日本とも貿易を行い大きな利益を上げ、同時にアジア諸国に勢力を伸ばすカトリックのイエズス会は日本の権力者を取り込むことで、経済と宗教の両面から日本の植民地化を狙っていたのです。

ジョンはそんなスペインとポルトガルの商船を襲い、彼らの貿易を妨害する任務についていましたが、2年の航海の後に遭難、伊豆に漂着したことで外交を担う虎永と出会う事になるんですね。
そんな二人の間で通訳をするのが、敬虔なキリシタンでイエズス会の宣教師から長年ポルトガル語を習っている戸田鞠子。彼女のモデルになっているのは、明智光秀の娘、細川ガラシャです。

ジョンからの情報によって、ポルトガルの真の狙い、五大老の大名にまでポルトガルの力が及んでいる事を知った虎永は、それを利用して五大老に揺さぶりをかけていくんですね。

セリフとビジュアルとキャラクターの魅力

僕は原作も三船敏郎主演の「Shōgun 将軍」も観ていないので比べることは出来ませんが、まず驚いたのは日本の出演者は全員日本人で、言葉もしっかり時代劇の言葉になっていたということ。一方、日本に漂着したイギリス人ジョン・ブラックソーンは英語とポルトガル語(風英語)を、ポルトガルの宣教師や商人らはポルトガル語(風英語)とカタコトの日本語を話していて、日本との関りが深いキャラクターほど日本語が流暢になっています。

特に個人的に感心したのは、大阪に呼ばれたジョンが最初に虎永と対面するシーン。
二人は当然言葉が通じないので、ポルトガルの宣教師を通訳に立てるわけですが、最初は普通に通訳アリの会話のラリーだったのが、だんだん通訳の声がフェードアウトして虎永とジョンが互いの母国語同士で話しているようになっていき、会話のテンポも上がっていく表現は見事だと思いました。
さらに、その場に家臣の妻でポルトガル語が分かる戸田鞠子を置く事で、宣教師が嘘の通訳が出来ないようにするのも、虎永の老獪さを上手く表現していると思いましたよ。

脚本の共同執筆者でドラマの共同製作者であるジャスティン・マークスによれば、このドラマのテーマは「翻訳」なのだとか。
「何が話されているのか、完全には理解していないことを理解し、あるいは翻訳を通じて知り、彼らが求めるものに、彼ら視点を取り入れるというプロセス」についての物語なのだそう。
とはいえ、本作の脚色チームは大半がアジア系アメリカ人の女性たちで日本語のネイティブスピーカーはいなかったため、書き上げた脚本はまず日本語への翻訳を依頼。
それを確認したプロデューサーの宮川恵理子と真田によれば、脚本は「話し言葉」ではなく「書き言葉」に翻訳されており、そのまま脚本として使うことはできないと判断。
そこで脚本家の森脇京子に「現代的な雰囲気を感じさせつつも、時代劇らしいセリフ」への書き直しを依頼し、現場でもより良いセリフへ調整していたのだそう。
そして俳優たちが言ったセリフをもう一度英語に訳し「演技とドラマを見る人たちの体験の間にギャップが生じないようにする作業」を行ったのだそうです。

つぎにビジュアル。
この作品の撮影はカナダにセットを作って行われたそうですが、屋内外のセット・CGから衣装、小道具に至るまで日本人の僕が観ても違和感を感じるところはまったくありませんでした。しかも、それらがハリウッドの大予算で制作されるわけですから、映像の豪華さや迫力は素晴らしく、あっという間に物語に引き込まれていきました。

そしてキャラクターとキャスト。
吉井虎永は、モデルが徳川家康だけあって知略・戦略に長け沈着冷静で、まさに「SHOGUN」に相応しい大人物。それを演じる真田広之は日本とハリウッドで数々の功績をあげてきた大ベテラン。彼の風格や重厚な演技は流石としか言いようがありません。

浅野忠信演じる樫木藪重は伊豆を支配下に置く大名で虎永の家臣ですが、情勢を読んで主君を裏切る事も厭わないような信用出来ない男。しかし、ただ狡いというだけではなく1話の段階で、藪重が「死」にとり憑かれているような描写もあり、一面的なキャラクターではないことが分かります。
演じる浅野忠信の飄々としたキャラクターも相まって、何を考えているのか分からない不気味さが、今後の展開にどう関わっていくのかが楽しみなキャラクターです。

エキゾチックな美人アンナ・サワイ演じる戸田鞠子のモデルは、明智光秀の娘・細川ガラシャ。虎永とジョンを繋ぐ役目でありながら、メイキングや予告を観る限り、虎永、ジョンと並ぶ最重要キャラになりそうな感じでこれからの活躍が楽しみです。

配信ドラマゆえの弊害

そんな感じで、超面白いので多くの人に見て欲しい本作ですが、この作品って日本ではディズニープラス独占配信なんですよね。
もちろんそれは仕方ない事だし、本作に限らず他のドラマでも同じなんですが、せっかく話題の面白そうなドラマや映画も、配信サイトが抱え込むことで、アクセスが悪くなって広がらなくなってしまうのが残念なんですよね。
この際、独占配信は仕方ないとして、せめてレンタルすれば加入しなくても観られるようにはならないもんですかね。

ともあれ、マジで面白いドラマだしまだ始まったばかりなので、観られる環境の方は是非ご覧ください!
おススメですよ。

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?