黒澤明を観る! ①「赤ひげ」感想
ぷらすです、こんばんは。
前回書いた、『黒澤明の入口』という記事が思った以上の反響で、さらにコメント欄で何本か「クロサワ映画」を紹介して頂きました。
それで、「ついに僕も、黒澤明と向き合う時が来たか……」と。
この記事を思いついたのも、コメント欄で作品を紹介して頂いたのも、きっとそのタイミングが来たんだなと思いました。(勝手な思い込み)
ということで、まずオススメされた2本をTSUTAYAでレンタルしてきたわけです。
まぁ、やる事はいつもと変わらず、観た映画の感想を書くだけなんですけど。
というわけで、今回観た映画は、黒澤明の「赤ひげ」です。
この作品は、昭和40年に公開された『姿三四郎』から数えて24本目の監督作です。
上映時間は約3時間。例によって上映中に一回休憩が入るわけですが、今回DVDを観てたら、いきなり黒幕白地で「休憩」って入ってビックリしましたw
原作は山本周五郎『赤ひげ診療譚』ウィキによれば前半はほぼ原作通りですが後半はドストエフスキーの「虐げられた人びと」を取り入れているそうです。
出演は、三船敏郎・加山雄三他。
映画の舞台は、江戸時代後期の享保の改革で徳川幕府が設立した小石川養生所です。小石川養生所っていうのは、貧乏で医者代が支払えないような貧民対策として、暴れん坊将軍こと徳川吉宗が建設した無料の診療所のことです。
3年間の長崎への留学を終えて、蘭学医として幕府の御番医になる希望に燃えている保本登(加山雄三)がこの小石川療養所を尋ねるところから物語は始まります。
父親からは挨拶に寄ってこい程度に聞かされていたのに、着いてみればこの療養所で働くことが決まっていて、しかも所長の赤ひげこと新出去定(にいできょじょう/三船敏郎)からは、自分が学んだ蘭学の図録や資料を提出するように言われ、しかし幕府の取り決めなので逃げることも出来ない。
それですっかりやさぐれてしなった登は、制服着用も拒否、一日中仕事もせず、療養所では禁止されている酒を下働きの女性に買ってこさせ……と、なんとか赤ひげを怒らせてクビになろうとします。
そんなある日、所内にある薬草園の奥に建てられた老座敷から逃げ出した若い女に殺されかけたところを赤ひげに救われたのをきっかけに、療養所でふたりの患者の死とその人生を知り、幼くして親を失い女郎屋で虐げられている少女との交流を通して、エリート意識バリバリの登が、自分の無力さや力なき人々の生き様を通して、医師として人として成長するまでの物語です。
一応、主演は三船敏郎ですが、どちらかといえば加山雄三演じる保本登の目を通して見た、小石川療養所の患者や関係者たちの群像劇といった方が近いかも。
赤ひげは自ら物語を動かす演者ではなくて、登=観客に患者の物語を解説する語り部的な立ち位置だと思いました。
原作を読んでないのでハッキリとは言えませんが、多分原作も短編連作のような作りで、映画の方もそれに準じた作りなんでしょうね。
映画っていうより連続ドラマ的な感じです。
ストーリー自体は単純明快で難しいところは一切ないし、三時間と長尺な作品ですが幾つかのエピソードの組み合わせでストーリーが進むので、途中で飽きることはありませんでした。
ただ、一見単純に思える登場人物の言葉は、観客の年齢によって感じる「深み」が変わるかもしれません。黒澤監督は多分そのへんも計算ずくで、各エピソードのメインに据える人物は老若男女それぞれです。
幼い頃、店の者に性的虐待を受けたことで精神を病み、店の男を三人も殺し離れの老座敷に隔離されている若く美しい女。(香川京子)
自分のことは決して語らない無口な末期ガンの老人。(六助/藤原釜足)
自分の体も顧みずに無理して働き、長屋や療養所の人たちから仏のようだと慕われる男。(佐八/山崎努)
幼くして母を亡くし、拾われた女郎屋で虐待され心を閉ざす少女。(おとよ/二木てるみ)
貧乏な家族のために盗みを働く少年。(長次/頭師佳孝)
それぞれに理由があり、そんな彼らを赤ひげは時に突き放し、時に優しく寄り添い、時には非合法ギリギリの手段で彼ら(彼女ら)を救う。そんな赤ひげを通して登は彼らの物語に触れていきます。
中でも僕が好きなのは、おとよの物語で、最初、おとよは誰にも心を開かないんですが、その時の彼女の表情や仕草はまるで、本当の野生動物みたいなんですよね。
おとよ役の仁木てるみさんが当時何歳だったのかは分かりませんが、本当に凄い演技力でビックリしました。
そして、登の看病で少しづつ心を開いていく様子は何とも可愛らしく、登とのやりとりも微笑ましいんですよ。
このおとよは言わば登の合わせ鏡的な存在で、互いに心を開いて成長していく様子がリンクしてるのもいいなーと思いました。
あと、驚いたのは黒澤監督の作る構図です。
この映画は白黒映画なんですが、劇中に出てくる、天日干ししている沢山の布団を使った構図は白黒だからこそ映える鮮やかさだし、クッキリとした影の使い方は登場人物の心情を一際強調しているように感じました。
逆に、本作ではBGMはギリギリまで抑えられていて、黒澤監督は原作の山本周五郎さんの「味」を損なわないように、あえてドラマチックになり過ぎないよう配慮したのかなと。
いやもうホント、まだまだ書きたいことは山ほどあるんですが、キリがないのでこの辺で。
とにかく面白く味わい深い映画でした。
興味のある方は是非!!
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