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ハイテンダンジョンRTA 制作記録① 制約からコンセプトを生み出そう!

はじめに

始めまして、プラと申します。普段はフリーゲーム制作を行っております。他にもnoteでは「新人フリコンに挑むなら60分以内を意識しろ!と言いたかった……」という記事を書いてきました。

今回は拙作「ハイテンダンジョンRTA」を制作した時の記録や心がけた事などを中心にお話できればと思います。

単なる自分語りに終わらず、どのようにしてゲームが成り立ったのか、
その過程を通じてゲーム制作におけるノウハウや糧を伝えられたら、と思います。


きっかけ(読み飛ばして結構です)

そもそものきっかけとしてハイテンダンジョンRTAを制作した大きな理由は、上記の記事でも語った「新人フリーゲームコンテスト」というコンテストが開催された事でした。第一回は2020年末にかけて行われ、クオリティの高い作品が約170作も集まる大きなゲームコンテストです。

近年、フリーゲームで(制作ツールの制限がない)コンテストが開催される事は珍しく、その動向を遠目で追っていたわけですが、本当に新人か!?と思うようなほどクオリティの高い作品がズラりと並ぶほど大盛況でした。

別途制作していた長編RPGの開発や、プライベートの多忙が重なり
第一回には参加できずに居たわけですが、この大盛況ぶりを見て心に
「ああ、新人フリーゲームコンテスト出てみたいなぁ」という気持ちがくすぶっておりました。

「よーし、次は出るぞ~」と思ったのもの束の間。第一回が終わった瞬間第二回が告知されました。早い!
これは出るなら今しかないぞ!という天恵と受け取り、第二回の出場を決めたのでした。


コンセプトを決めよう

新人フリーゲームコンテストはどんな作品でもいいわけではなく、しっかりとした制約が存在します。中でも大きな制約は

・1〜60分以内で遊べるゲームならOK(※4)
※4:プレイ時間には個人差があるため、多少60分を超えてもOK。ただし、60分を超える作品は、審査の際にマイナスの影響の可能性あり

であると受け取りました。(この辺りは上記「新人フリコンに挑むなら60分以内を意識しろ!と言いたかった……」で細かく書いたお話です)

60分という時間の中、どれだけゲームの面白さを伝えられるか。
その難しさはいざアイデアを練る側になると筆舌に尽くしがたく
第一回で受賞した作品方を見ては、素晴らしいアイデアでゲームの面白さを60分に収めた努力が垣間見えます。

この制約を意識しつつ面白いゲームに仕上げるにはどうしたら良いでしょう?

まず考えられるのは

・60分以内に収められるシナリオ・システムを作る (RPG や ノベル系)
・ステージ数やギミックを短くする(アクションパズル系)

60分以内に収まるように尽力するやり方。もちろんボリュームをコントロールして作れるのであればそれが最良だと思いますが、制作に慣れてないうちは作りたいものを作っていくうちにボリュームが増えてしまった、というのも往々にしてあることでしょう。

次のようなやり方はどうでしょう。

・自分が作りたいものを作る
・それを60分以内に収めるよう削る
・出来上がり!

という、作成→圧縮ルートです。
60分以内という制約を一度無視して制作し、出来上がったものからボリュームを削るやり方。これならば好きなコンセプトで作品を作れますし、RPGなら短編向けに、アクションやパズルなら60分以内のボリュームになるようステージを削ればよいです。

しかし、こちらもコンセプトによってはなかなか難しいものです。
尻上がりなゲームデザインやハクスラ等のやりこみゲームは60分以内に収めるには難しい題材でしょう。そもそも完成されたものを削る事自体慣れてないと難しいものです

そこで発想を逆転です。
60分以内で終わるゲームではなく
60分以内で終わってもらえるゲームを作ったらどうか……?

つまり、作者がボリュームを意識せずともプレイヤーが60分以内でクリアしてくれればこの制約を意識しなくても良いわけです。

そこで思いついたのがRTA(リアルタイムアタック)でした。
プレイヤーにタイムアタックをして頂き、60分以内にクリア出来るよう努力をしてもらえればこの制約を守れるぞ!と言うわけです。
何とも努力の押し付けですね。
(もちろん押し付けがましいゲームにするわけではなく、細心の注意を払って押し付けがまさを払拭していくのですが、こちらは後ほどの題材にします。)

かくして、制約からコンセプトを考え出しました。しかしながらコンセプトを成立させるためにまだまだ考える事があります


コンセプトを成立させよう

コンセプトはRTAに決めました。しかしただ「RTAしろ!」と言われても成立しません。RTAをゲームとして成立させるには大きな課題があるのでした。

RTAゲームの大きな課題。それは初見のプレイヤーは置いてけぼりになるというものです。
そもそもRTAは通常プレイを繰り返した猛者たちが、己の腕を究めんとばかりにやり込み尽くしデータを集め尽くして最強のチャート至高の技術両立出来て挑むものというイメージが強いと思います。私もそう思ってます。(中にはチャート片手に勢いで走る走者もいるようですが)

いかにして、初見なのにRTAできちゃう!を実現するのか。
コンセプトを成立させるための大きな壁として立ちはだかったわけですが、一つ解決のためのアイデアが思い浮かびました。





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そう、かの名高いRTAプレイヤー御用達のBiimシステムです

(Biimシステムの詳細はこちら。この記事では説明は割愛します)




「アイデアというのは
 複数の問題を一気に解決するものである」

かのマリオの生みの親、宮本 茂氏の言葉を借りるに、アイデアとは
「複数の問題をいっぺんに解決すること」との事です。たったひとつのアイデアによって、あっちもこっちもよくなり、さらに予想してなかった問題まで解決する、そんなアイデアこそ理想であるという素晴らしい理念です。

Biimシステムを採用する事は、まさしく複数の問題をいっぺんに解決するアイデアでした。

1つ目は大きな課題、初見プレイヤーの置いてきぼりを救済するもの
ゲームの進捗に合わせて、画面下で事細かに敵の情報や、今どういうものを買ったらいいのか、次どこに行けばいいのかなどなどリアルタイムでアドバイスする事で初見のプレイヤーでも指標が分かるようにする事です
言ってしまえば常に攻略情報を出しておけば初見でも大体分かるのではないか?という大胆な解決方法です。

2つはインタラクティブ性の強化
素晴らしいプレイをしたり、タイムの短縮を行った際に専用のメッセージを流すことでプレイに対する反応がダイレクトに帰ってくる楽しさを味わえるようにする事です
慣れたプレイヤーにとっては何度も聞いたアドバイスをひたすら聞くだけではなく、意外なプレイを見せつけて驚かせる事すら出来る、そういった遊びが出来る事でよりゲームとの対話が楽しめるといいな、と考えてました。

このBiimシステムを入れることによって、うまく行けば初心者にも上級者にも楽しめる、そんなゲームが目指せるぞ!と奮い立ちました。

かくしてハイテンダンジョンRTAのコンセプトが生まれ、ゲーム制作に乗り出したのでした──(続く)

実現に向けての謝辞

ハイテンダンジョンRTAの制作では、自分が慣れ親しんでるというのもあってRPGツクールMVを利用しようと考えていました。とはいえどうやってBiimシステムをRPGツクールMVに搭載するのか、1から構築するにも開催まで約2ヶ月といった限られた時間では、プラグインを作るのにも時間がかかかります。一体どうすれば……と思った時、一際の光が見えてきました。

くらむぼん様作のBiimシステムプラグイン
まさにこのコンセプトにうってつけのプラグインが存在したわけです!
冗談抜きにこのプラグインなしでハイテンダンジョンRTAは作れませんでした。素晴らしいプラグインを制作して頂きありがとうございました。


コンセプト作りのまとめ

・制約からコンセプトを考える
ポイントは、制約に対して色々な角度から考えること。
筆者はRTAプレイヤーでもなく、決してRTAの知見があるわけでもないですが、制約を満たすための要件を細かく分割し、並び替えていくことでRTAというコンセプトを導きました。


・コンセプトを成立させるための課題を解決する
まずは思いついたコンセプトを成立させる事が出来るか?を考えましょう。「出来るぞ!」という確信があれば素晴らしいアイデアが既にある証拠です。問題は課題が見つかった時。複数の問題をいっぺんに解決するひとつのアイデアを意識しましょう。過剰なアイデアの混入を防ぐのは作る側にも遊ぶ側にも嬉しいはずです!


・コンセプトの実現には他の人の力を借りる事も重要
くらむぼん様のプラグインがなければゲーム自体実現しませんでした。
この場をお借りしてお礼申し上げます。


余談

コンセプトを生み出すためには制約が必要なのか、と言われますと、そうとも言えるしそうでもないと言えます。

今回はコンテストというわかりやすいケースなので制約が決まっていましたが、自分で作る場合は特に制約がない場合が大半でしょう。

その場合は、まず核となるコンセプトを決める前に「核となる制約」を先に決めてしまえば自ずとコンセプトが決まるかも知れません。
つまり、ただ「ゲームを作る!」と漠然と意気込むのではなく、もう一歩踏み込んで「1週間ぐらいで作れるゲーム」「マップはあんまり作らなくて済むゲーム」「ゲームアツマールでウケるゲーム」と自分の制作状況に合わせた制約を生み出すのです。

そうして生まれた制約を満たすための条件を考え、その要素を分割して組み立てていく事でコンセプトが定まるきっかけになると思います。
制約とコンセプトは不可逆変換出来る関係でつながってる、という考え方です。

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