仲間
ずっと取りそびれていた中型バイクの免許を取得した頃のこと。
ものもらいになったある夏の金曜日。
仕事が終わった後、前から約束をしていた友達に電話をした。
「今仕事が終わったよ、何時に会おうか?あ、ものもらいになってちょっと目が腫れてるけどいいよね?」
子供の頃から何回も繰り返しているものもらい。経験上1度も人にうつしたことはないので、すっぴんだけどいいよね?くらいの気持ちで言った。
「え?いや、うつったら困るから今回はやめとくね」
と電話を切られた。
そんな…人をバイ菌みたいに…
久しぶりなので会うのを楽しみにしていたし、10年以上の付き合いだしでまさか断られると思ってなかったからショックだった。
華金の予定と心がぽっかりと空いた。
家で夕飯を済ませ、後は今日という日が終わるのを待つだけ。
とその時携帯が鳴った。
その頃1番遊んでいたHとMからの誘いだった。
「いや、目がものもらいで腫れてるし、うつすと悪いし」
少し不貞腐れた感じで断ろうとすると
「ばあか、誰もそんなの気にしねえよ」
単純な私は、ああ!これが友情!と感激した。
夜は肌寒いから羽織るものと、ブランケットを持ってきて。と言われ、準備していつも集まるMの家へ向かう。
よし出発だ、お前は後ろで寝てて良いよ。と言う言葉に甘え、行き先も知らずに後部座席で寝た。
エンジンが止まったことに気付く。
目が覚めて辺りを見回す。
何もない。暗くて何も見えない。どこかの広い駐車場。
あと、少し寒いわ。
まだ時間があるから寝よう。と言われまた寝る。
おーい、そろそろ起きるぞ。の声で再度目を開ける。
空が白み始めていた。
上着を着て外に出る。
キンッとした空気。
そこは富士山の五合目だった。
想定外の場所に戸惑う。
「こっちこっち、見せたいものがあるんだ」
ニヤニヤしながら先を歩く2人について行き、拝んだものは
今まで見たことがないほどに神々しいご来光。
サプライズでこんなに感動したことはなく、今でも彼らに感謝している。
せっかく取ったバイクの免許は1度Mのバイクで走っただけでそれ以来ペーパーですけどね。
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