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聞き手を高揚させる力強い音楽 アーケードファイア『フューネラル』レビュー

カナダのグループ、アーケードファイアのファーストアルバムです。2004年に発表されロック史に残る名作として有名な作品。まだ彼らが無名だったころにデヴィッド・ボウイが彼らに惚れこみ、共演を持ちかけたことがありました。さすがはボウイ。ボウイの慧眼はアーケードファイアが3枚目のアルバム『ザ・サバーブス』でグラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞したことで証明されます。

アーケードファイアの音楽は70年代のデヴィッド・ボウイの音楽に似ています。ドラマチックで叙情的。聞き手の心を深く揺さぶります。70年代のボウイにない面もあって、それは他のオルタナティブ・ロックと同じようにいろいろな音楽が組み合わさってできている点です。80年代のニューウェーブや90年代のUKロックの影響も感じます。歌詞には社会性があり、ブルース・スプリングスティーンと似ています。

ボーカルのウィン・バトラーの声は優しくて儚げなのですが、激情を爆発させるところもあり、そんなところでは聞き手の心は高揚せずにはいられません。特にこのファーストではその傾向が強いです

ウィンの奥さんのレジーヌもボーカルをとることがあり、彼女が歌うときはチャーミングな感じになって、80年代のブロンディーみたいな雰囲気です。「葬式」という暗い題がつけられていますが、アルバムを作っているときにこれはメンバーの家族が亡くなったことを意味しています。

決して暗い音楽ではなく死の悲しみを正面から受け止めて、そこからもう一度立ち上がっていくような力強さがあります。同時に思春期に別れを告げて
大人として生きていく覚悟を感じるアルバムでもあります。

私がこのアルバムで一番好きなのは9曲目のRebellionです。重層的な構造を持ちドラマチックな曲です。バイオリンが効果的に使われています。大人は子供を怖がらせて従順にさせようとするけれど、そんなことに負けてはいけないと力強く歌われます。

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私が持っているCDはイギリス盤で、ラフ・トレードから出ています。アーケードファイアのようなグループにぴったりのレーベルという気がします。温かみのある紙ジャケが気に入っています。


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