緊張を湛(たた)える
「1回止まった方が良いですよ」
能の摺足のお稽古で、先生がアドバイスしてくださった。
爪先を浮かせる前に、止まった方が良いと。
やってみたら、自分の動きは流れてしまっていたのが
良くわかった。
例えるなら、水が出っぱなしの蛇口。
止まりを入れたら、先生のおっしゃる通り
鹿威し(ししおどし)になった。
鹿威しの竹筒に水が溜まっていくじゃないですか。
水が溜まって溜まって、竹筒が傾くよっていう
傾く直前の瞬間
ここが、一番エネルギーの高まる場所だと思うんだ。
すごい緊張感を湛えた場所っていうか。
傾いて、水がドバーッって流れたら、緊張感も消え去ってしまう。
摺足の止めは、鹿威しが傾く直前みたいだった。
摺足は面白い。
右足の鹿威しから水が流れたかと思ったら、
もう左足の鹿威しに水が溜まりはじめるんだ。
だから常に、鹿威しが傾くよ傾くよっていう瞬間なの。
竹筒に水が入ってない瞬間がないの。
まだ全然できていないけど、
先生に教えていただいたように摺足をすると、
1歩ごとに、ドキッとする瞬間がある。
平板な時間がないんだ。
能って、もしかしたら ずっと 傾く直前の鹿威しな 身体でいたいのかもしれないな。
そんな気がした。
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