【1日1文献】回復期の脳卒中上肢機能訓練における信念対立の質的解明 #脳血管障害 #信念対立 #上肢機能訓練

参考文献:回復期の脳卒中上肢機能訓練における信念対立の質的解明
筆者:廣瀬 卓哉, 寺岡 睦, 京極 真
発行日:2022年
掲載元:作業療法 41 巻 (2022) 3 号
検索方法:インターネット
キーワード:脳血管障害, 質的研究, 信念対立解明アプローチ, リハビリテーション, (Evidence Based Practice:EBP)

【抄録】
・本研究の目的は,回復期の脳卒中上肢機能訓練における信念対立の構造を明らかにすることである.
・構造構成的質的研究を採用し,データ分析にはSteps for Coding and Theorizationを用いた.
・研究対象者は6名の作業療法士であった.
・結果は〈治療方針に関わる信念の生成プロセス〉〈上肢機能訓練に関わる信念対立の構造〉〈信念対立解明の手がかり〉の3個のテーマが存在した.
・信念対立の解明には,①自身や他者の治療方針を決定付ける信念の成立根拠を自覚することや,②EBPを正確に理解すること,③建設的なコミュニケーションをとるなかで対象者の状況に応じた目的を明確化することなどが重要であると考えられた.
・信念対立とは,疑義の余地のない信念が矛盾したときに起こる人間同士の争いのことである
・信念対立は人間関係に支障をきたし,職業性ストレス,バーンアウト症候群,作業機能障害との関連 性が報告されている
・医療現場における信念対立は, 多職種連携のパフォーマンスを低下させることが報告 されている
・また,同一の専門職であっても,依拠 する理論や方法論の対立により,対象者に不利益が生 じる可能性が指摘されている。
・そのため,医療者間 で生じる信念対立の解明は重要な課題である.
・信念対立を克服するためには合意形成が重要である.
・ 医療においては根拠に基づいた合意形成が不可欠であることから,Guyatt が提唱した根拠に基づく実践 (Evidence Based Practice;以 下,EBP)が 重 要 視 される6).
・信念対立を克服するために体系化された信 念対立解明アプローチにおいても,意見が対立する人々 の間で合意形成をするために EBP の活用を推奨している.
・EBP はリハビリテーションにおいて重要である.特に脳卒中の上肢機能訓練はランダム化比較試 験などの質の高いエビデンスが蓄積されており,EBP が推進されている領域である
・しかし,EBP は合意形成で有益であるものの,実際にはさまざまな障壁が存在している.
・例えば,医 療者間の価値観の相違やそれに伴う治療方針の違い, 職場の文化などの人間関係の問題が,実践の妨げとな ることが知られている.
・また,Cicerone は,エビ デンスや対象者のニーズが明確な状況であっても,治 療方針は医療者の価値観や信念に左右されることを指 摘している11).
・さらに,EBP のパラダイムの構造上, 医療者の価値観の相違により信念対立が生じる可能性 が指摘されている
・医療者間で共通目標をもてないことは,対象者との協働を阻害する要因となる
・さら に,実践の目的の不明確さは医療者に対する不信感や 信念対立を引き起こす
・そのため,上肢機能訓練を 実践するうえで,医療者間の信念対立の解明は,対象 者との協働した意思決定の実現にも重要な課題といえ る.

テーマ:信念対立解明の手がかり
理論記述;
⑪治療目的の理解による対立の解明や他者の治療方針の背景にある理論の理解による対立の回避が可 能な場合がある(A 氏)
⑫実際の学習経験から得られる対立相手の治療方針についての理解を通して対立相手の肯定的側面の 認知や対立する治療方針の効果の実感に直結する(C 氏)
⑬他者の治療方針に対する寛容な姿勢を持ち,他者の治療方針の目的の聴取などの特定の治療方針へ の傾倒を避ける価値観は自身の実践に他の治療法の観点を取り入れる姿勢を持つことにつながり治 療方針をめぐる対立の意図的な回避に至る(D 氏)
⑭他者の治療方針を尊重した上での自身の方針の開示をすることは他者の治療方針の尊重による対立 の回避につながる(E 氏


参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/41/3/41_315/_pdf/-char/ja

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