ピアジュの認知発達理論

ジャン・ピアジェ

・スイス出身のピアジェは「20世紀で最も影響力の大きい心理学者」と言われ、特に子どもや幼児の成長段階における認知発達理論・教育学の分野で大きな功績を残しました。
・ピアジェが登場する以前は、子どもたちは「不完全な人間」「動物と人間の間の生き物」であり「大人が正しい答えを提示し、導いてやらないといけない」と考えられていました。
・それに対して彼は「発生的認識論(genetic epistemology)を提唱、自らの子ども達を含む多くの子ども達を観察し、「自ら考え、試行錯誤ができる」「トライアンドエラーを繰り返し、答えを導き出せる」存在として捉えました。
・子どもたちは情報や経験が足りないだけで、大人になんら劣ることのない、れっきとした人間であるという見方を唱えたのです。
・ピアジェが提唱する認知発達の理論は「知識は外界から与えられる」のではなく、「子どもと環境との相互作用を通じて自ら構築する」というものです。
・子どもが環境との相互交渉を通じて、生得的に持つ反射やシェマが「同化」と「調節」作用によってシェマが精緻なものとなるのだそうです。
・言い換えると、新しい事象に子どもが初めて接したとき、自分がすでに持っている知識に当てはめようとします(同化)。新しい事象が自分の持っている知識に当てはまらない場合、自分の知識を変形させて理解しようとします(調節)。これらを繰り返して、新たなシェマを構成していきます(均衡化)。子どもたちは科学者のように自分で試行錯誤しながらあらゆる事柄を理解できるようになっていくのです。
・そのような認知の発達をピアジェは感覚運動期・前操作期・具体的操作期・形式的操作期の4つの段階に分けました。子どもたちは段階的に知識を構築していくと考えたのです。


ピアジェの発達段階① 0~2歳 感覚運動期

対象への働きかけと感覚そのものが思考を構成します。動作とそれに対するリアクションのみで構成されるこの時期は、人生において最も創造的といわれる時期です。
3つの認知機能の発達
循環反応:ガラガラを何度も揺らすことで(循環反応)、「揺らす」という枠組み(シェマ)を形成
対象物の永続性:成長と共に顔を隠しても大人がそこにいると認識できるようになり、「いないいないばあ」を喜んでくれるようになる
シンボル機能:物事をシンボルとして捉え、実際のリンゴとリンゴのイラストを見てどちらもリンゴだとわかるようになる


ピアジェの発達段階② 2~7歳 前操作期

イメージや言葉による思考が可能になります。この時期は自分の視点から世界を見ている(自己中心性)ので、相手の立場になって考えることがまだ難しい年齢です。自分が楽しいことは相手も楽しいという風に考えています。そのせいで喧嘩になることもしばしばありますが、そういったトラブルを経験することで徐々に「他者の目線」を獲得していきます。
実念論:この時期の子どもたちは絵本の世界など想像と現実の区別がつきにくく混同する傾向が見られる
アニミズム:ぬいぐるみや人形を相手にごっこ遊びをして楽しむ時期。
この行動もぬいぐるみや人形の視点を通して周りを観察し「他者の目線」を獲得するための練習段階といえます。また多くの場合はぬいぐるみや人形に対して自分は「上位の存在」である保護者のような役割を演じ、ルールを定めるといった大人たちの模倣を行います。
2~4歳 象徴的思考期
もののイメージを頭の中に作り上げて保存し、そのイメージをあとで使うことができます。例えば、目の前に車がなくても車の絵を描いたりすることができます。母親など大人の発言や行動を真似たりしたがるのもこの時期です。
4~7歳 直観的思考期
象徴的思考期に比べ、概念化が進んで物事を関連付けたりして理性によって考えることができるようになってきます。
しかし、まだ論理的に考えるほどには至らず直観的な考え方が特徴です。
たとえばコップに入ったジュースを口径が違うコップに移し替えた場合、口径を考えず水面の高さが変わると量が増えた(減った)と思い込む様子が見られます(中心化)。この段階に進むと自らの考えた直感的な答えと事実の不一致がおこるので、その差を埋めようとするための質問が増えます。

ピアジェの発達段階③ 7~11歳 具体的操作期

・具体的操作期になると思考に論理性がともなうようになります。見た目に惑わされず筋道を立てて考えられるようになります。
・重さ・長さ・距離など数的概念も理解できるようになります。コップに入っているジュースを口径の違うコップに移し替えても量は変わらないということが理解できるようになります(保存性の習得)。
・知覚的に目立つ属性(水面の高さ)によって量を判断していたのが、「何も加えたり減らしたりしていない」「水面が高くなったけれど細くなっている」など論理的に考えるようになるのです。物を操作し体験する経験を重ねながら、状況把握の正確さが増し、時間の流れがわかるようになると因果関係が理解できるようになります。
・見た目に惑わされないということは具体性から抽象性への架け橋です。時間や空気、気持ちのように目に見えないものの存在を意識することで、抽象的な物事を理解する準備をしているのです。
・この頃から自己中心的な考えからコミュニケーション能力が発達し共感力が身に付いたことで、他人の立場や気持ちを考えて発言や行動ができるようになり、自分の行為がどういった結果を招くのかを考えることができるようになります。

ピアジェの発達段階④ 11歳~ 形式的操作期

・11歳頃になると具体物がない事柄についても頭の中での思考が可能になる形式的操作期に変化していきます。抽象的な知識や概念が理解できるようになってきます。これまでのように自らの経験によってだけでなく、想定した判断をもとに論理的に結果を考えることができるようになります。
・例えばいろいろなパターンを予測し、体系的に調べて判断するなど仮説を立てて推理を行うことが可能になります。
・この段階まで来ると抽象的な事柄に対してのアプローチができるようになるので、哲学や数学など様々な新しい世界が広がっていきます。


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