【1日1事例】訪問リハビリテーションにて包丁操作の知覚的側面に着目し介入した一例 #訪問リハビリテーション #知覚探索 #包丁操作

参考文献:訪問リハビリテーションにて包丁操作の知覚的側面に着目し介入した一例
筆者:濵田 敦, 山本 泰雄
発行日:2018年
掲載元:第53回日本理学療法学術大会 抄録集
検索方法:インターネット
キーワード:訪問リハビリテーション, 知覚探索, 包丁操作

抄録:
【はじめに】
・今回、訪問リハビリテーション利用中の脳梗塞後右片麻痺患者において、包丁操作時の狭小化された支持基底面内での制限された重心移動による姿勢制御に加え、包丁先から知覚する手掛かりを失い、円滑な操作性が発揮できずに操作の連続性が阻害され実用性低下をきたしている症例を経験した。
・介入方法として包丁操作時の知覚的側面に注目し、分析に伴い介入した結果、包丁操作の実用性向上がみられたので結果を踏まえて報告する。
【評価と治療】
・症例は40代後半外国人女性。平成24年左視床出血。Brunnstrom stage上肢Ⅴ、手指Ⅴ、下肢Ⅳ~Ⅴ。上下肢共に軽度の痺れあり。
・表在覚上肢7~8/10、下肢7~8/10、運動、位置覚共に軽度鈍麻。包丁操作開始時の立位姿勢では麻痺側足趾にクロートゥ出現し、足指を含めた十分な支持基底面が形成されずに立位の安定性が喪失、足底内での円滑な重心移動が制限されていた。
・そのため姿勢の安定化を図る代償として頭頚部の緊張を高め肩甲帯挙上・後退・肩関節内転出現させ、非麻痺側依存の姿勢戦略をとった。
・包丁操作時には、刃先からの知覚情報に乏しく操作の手がかりを失うことで円滑な操作性を発揮できず、重心の非麻痺側依存を強めるため不安定な立位姿勢の状態で包丁操作が連続することとなり足底内での重心移動がさらに制限されることとなった。
・このような環境適応への悪循環が生まれることで身体内の過剰固定が増悪されることとなり、包丁操作のタイミングが掴めず力任せの細断となって上腕部には疼痛発生していた。
・リハビリプログラムは対象となる食材に非麻痺側上肢を添えて固定した立位を基本姿勢とし、包丁操作の段階付けとしてセラプラストを棒状のキュウリと見立て利用し、固いものから柔らかいものへと徐々に段階付けた。
・また、包丁重心を探索するため包丁刃先にセラプラストを丸めて付け皿に移すことを実施した。
・訪問リハビリテーションは週一回の利用である為、自主トレーニングを基本として訪問の際に方法の確認、指導を行った。
【結果】
・約3か月間実施した結果、包丁操作時の姿勢筋緊張に変化が見られ過剰固定された姿勢緊張が緩和し、包丁操作時の異常筋緊張の抑制がなされた。
・以前訴えのあった上腕の疼痛も緩和されつつあり、重心探索行動の軽減、操作速度の向上を認めた。
【考察】
・本症例は、狭小化された支持基底面内での制限された重心移動と、包丁重心の手がかりを失い操作の困難性を高めながらも連続した動作を継続することで身体の過剰固定を強める悪循環を生じていた。
・環境に適応させるため徐々に動作の難易度を段階付けたことに加え、空間上での操作を行い視覚的にも捉える事で操作時の姿勢緊張に変化をもたらし、より環境に応じた実用性の高い身体活動が可能となったと考察する。


参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/46S1/0/46S1_G-126_2/_pdf/-char/ja


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