SSワードウルフテスト-2「ある読書家の会話」


「ある読書家の会話」

作者:サイコフレームの輝き

この間勧められた本、読みましたよ
「サリンジャーのキャッチャーインザライかい?」
そうです、ナインストーリーズと違って長い内容でしたね
「それで?今日はライ麦畑をポケットに入れてきてるのかな?」
ははっ!相変わらずご明察ですね
「でもここにはジョンレノンはいないよ」
S&Wも入れてくるべきでしたかね
「それは笑い男の服を着てやって欲しいね」
今度お見せしましょう、ところで今貴方が読んでいるのは?
「こいつとKディック、それからドイルさ」
またドイルですか
「自他ともに認めるシャーロキアンさ、私は」
チャレンジャー教授の方を読んだことは?
「無論あるさ、私はジュラシックパークの方が好みだが」
ロストワールドが付いていたのは
「映画だね、あれも好きだな」
貴方から映画の話が出るのは初めてですね
「そうだったかな?ブレードランナーと電気羊を比較する位には観てるよ」
また随分と暇な事で
「そうだね、我々には仕事も義務も無いからさ」
確かにそうですね、私達がやる事といえば遊び位なもので
「その遊びの副産物としての書物や映画だったけど」
私達2人にとってはこれが目的になっちまいましたね
「いやいや、初めに言があったのだからあながち間違ってもいないんじゃないかな」
そりゃいい!我々はパンじゃ無く書物の為に生きるのですかい
「その方が素敵に感じるね、私は」
ならば求めるとしましょう、今日私に勧めてくれるのは何ですか?
「そうだね、これなんかどうかな」
これは年鑑?いや、歴史書ですか
「我々の遊びのリザルトさ」
ほぅ?それじゃ今回は終わりですか
「ああ、また似たような結末だったけどね」
本当ですねぇどのページを捲っても戦争快楽退廃堕落
「これではヒトに品性を求めるなど絶望的だ」
まぁそう捨てたもんじゃ無いでしょう
貴方が今持ってるそれのように素晴らしい副産物も産まれるんですから
「ごく稀なケースだよこういう物を産み出すのは」
確かに稀ですな
まぁそう価値のある物をポンポンと産み出すのも問題があるんでしょうけど
「その思念の数はいかに多きかな。我これを数えんとすれどもその数は砂よりも多し」
詩篇の139節ですね
「やはり多過ぎるのも良くないって事か」
そうそう、読むのも大変になっちまいますから
「私は一向に構わないんだがね」
でしょうね、ですが私はその聖なる書物だけでも十分楽しめましたけど
「おや?私が今までに薦めた中でもこれがお気に入りかい?」
そうですねぇ、読んでるとこそばゆくなっちまいますけど
「新参者の君はまだマシな方だろう、私のような古株は赤面の至さ」
全くですな、それじゃあ次の遊びをはじめますかい?
「そうだね、、それにしても」
はい?
「我々が聖書を読んでるってのも出来過ぎかな」


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