東京工業大学の「女子枠」設置

東京工業大学が、2022.11.10に、
「東京工業大学は、2024(令和6)年4月入学の学士課程入試から、総合型選抜および学校推薦型選抜において女性を対象とした「女子枠」を導入します。」
と発表しました。
https://www.titech.ac.jp/news/2022/065237

世上、賛否両論いろいろあるようです。

東工大のプレスリリースには「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」というキーワードが掲げられていますが、プレスリリースでは表明されなかった東工大の意図があると思っています。

大学のパフォーマンスの指標は、どういった人材を輩出したか(教育の視点)、どういった研究成果を出したか(研究の視点)であろうと思います。両方の視点とも、パフォーマンスを向上させるためには、大学での教育や研究の質はもちろん重要ですが、教育の素材や研究の担い手候補である入学者に、どれほど優秀な人材を集めることが出来るかも、大変重要なファクターになろうかと思います。

東工大のアドミッションポリシーは、
「科学技術への知的好奇心や探究心と社会に貢献したいという志を有し、その基本的概念や基礎知識とそれを活用できる力を身に付けた人材を求めます。」となっています。
後段の「基本的概念や基礎知識」云々については学力試験である程度判定することができますが、前段部分については、なかなか学力試験では判定が難しいところであろうと思います。
東工大に限らず、多くの難関国立大学においても推薦入試がだんだん増えてきているのは、こういう理由かと思います。
学力試験で1問余計に解けた受験生よりも、面接などで志望動機や将来研究したいテーマについて熱く語ってくれる受験生の方が、一定の学力水準さえ超えていれば、大学にとっては「欲しい人材」に見えるのは当然であろうと思います。

理系女子については、アンコンシャスバイアスや周りの環境から、理系の進路を選択することを躊躇することがあるかもしれません。ましてや「陰キャ」「オタク男子の巣窟」たる東工大を進学先に選ぼうとするような女子高生はやはり少なく、これは、おそらく東工大の関係者も十分に認識・自覚のあるところででしょう。
理系を選ぶにしても、東大、京大、旧帝の理系学部、あるいは極端には入試で数学の比率の高い一橋なんていう選択をしている女子高生がいるかもしれません。

東工大の本当の意図は、上のようなことを理由に東工大を選択しなかった優秀な女子高生を、これからはゴッソリ獲得したいということかもしれません。「女子枠」の設置が、東工大を受験する決断の背中を押してくれることを期待しているのは間違いがないと思います。
また、優秀な学生をどうやって集めるかという世界では、あからさまな「女子枠」の設置という手法はこれまであまり取られていませんでしたから、この環境はいわばブルーオーシャンであると東工大が認識している可能性があります。

社会の一員として小さくない責任や役割を負っている東工大が、ダイバーシティなどを考慮する必要があるのは自然なことと思いますが、同時に優秀な女子高生を入学させたいというのが東工大の意図するところであろうと思います。
この両方を実現させることに対して、「女子枠」の設置は有効であろうというのが、東工大の判断ではなかろうかと思います。

実際に2024年入試で「女子枠」に対して、どれほどの応募があるのか、たいへん興味があります。

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