ザスパクサツ群馬 2023振り返り(戦い方編)

今年のザスパは過去最高成績でシーズンを終えました。
また、はじめてJ1昇格PO圏内を争いました。
今回はそんなザスパの今年の戦い方を振り返ります。
なるべく、ポジティブな見方が出来ればいいなと思っています。

今年のザスパは大きくわけて、3つのステージがあったと思います。


何故3つにわけたかというと、まず長倉の依存度がかなり高かったこと。
それに加えて、長倉が抜けた穴が最後まで大きいままだったこと。
最後に、目標を達成しシーズン最終盤に未知の争いをしたこと。
それぞれがチームの転換期になっていたからです。
また、前提として今年のザスパの目標を確認しておくと
「勝ち点50と16位以上」
これがザスパの目標だったわけです。
そして、シーズン通しての共通の戦い方にはなりますが
ベースのフォーメーションは4-4-2。
保持では、DFラインからしっかりボールを持ちます。
また右SBが上がる右肩上がりの3-2-5の可変をしていて
左大外から、左SH、FW、FW、右SH、右SBが5エリアをとりました。
非保持では、4‐4の2ラインを下がり目でコンパクトに保って
自陣ゴール前で相手にスペースを与えないようにリトリート気味に。
基本は4-4-2でセットしてミドルプレス。
ハイプレスはどこまで追うかは個人判断でやっていた印象なんですが
2トップが相手2ボランチを消す意識は見られました。
細かいところに若干違いはありますが、これは1年通して徹底しました。
それを踏まえた上で、それぞれの段階での戦い方を考えたいと思います。

(1)長倉がいたチーム 

非保持に関しては、今年のザスパは評価されている通り失点は少なかったです。
これは長倉がいてもいなくても大きな差にはなっていません。
大きな差になっていたのは保持の攻撃面です。
前述した通り、ザスパはDFラインから簡単にロングボールを蹴らない戦術をとっていました。
3バックと2ボランチで5枚でのビルドアップが基本です。
このビルドアップに相手が対策をしてきて、ビルドアップが詰まった時に
長倉がいた時は、その長倉がビルドアップの出口になっていました。
また、出口となってから、個の質で前への推進力を出しながらボールを運び
崩しからフィニッシュまで全ての段階に関わっていました。
シーズン途中で個人昇格という形でJ1の新潟に移籍したわけですから
それだけの評価を得られるだけの働きをしていたことは確かです。
前半戦、やや失点が多い印象はあったものの、得点も出来ていましたし
攻守ともに内容も悪くなかった戦いぶりでした。
と、同時に個の質がある長倉に依存している部分も多かったのは否定できません。
また、右サイドは佐藤と岡本の連携が日に日に良くなっていきました。
佐藤が内側レーンを使って、岡本が大外を使うのが基本形ですが
試合を重ねるごとに流れの中でローテーションも馴染んでいきました。
左に関しては、山中と川本と1番手を決めかねているようでしたが
長倉が左サイド寄りで関わることで、ボールを前進させていました。
右サイドと比べると、より個の質で解決していたのが左サイドですね。
左サイドではアタッカーを後方支援する中塩が良かったです。
中央では、長倉が自由に動くタイプなので、もう1枚が中央で構えます。
そのため、この時に2トップの1枚として使われていた、武や平松ですが
結果はそこまで出ていませんでしたが、ゴールに向かうことは出来ていました。
エリア内での仕事の集中出来ていたんだと思います。

(2)長倉が抜けたチーム

昇格POに進めなかった理由はここにあったと思います。
勝ち点が取れていた時期もありましたが、内容は明らかに前半のほうが良かったです。
ただ、長倉の移籍だけでなく、岡本の長期離脱もありました。
頭角を現しはじめた高橋の長期離脱も痛かったところです。
良かった点は、CBが酒井、城和コンビになって安定感が出たこと。
守備だけでなく、ビルドアップも簡単なミスは減りました。
問題は、攻撃面で長倉が担っていた領域です。
長倉が担っていた攻撃面での役割は
(1)ビルドアップの出口
(2)ボールの前進
(3)相手陣内での崩し
(4)フィニッシュ
になります。
まず(1)ですが、これは平松が担いました。
相手を背負って受けるプレーは平松は上手にこなせます。
受けるまでは問題なくやれていたと思います。
問題は(2)からです。
ボールを前進させる仕組みが確立出来ませんでした。
右サイドはローテーションや連携で前進出来る時はあったんですが
左での前進は停滞していました。
杉本、山中も仕掛けられる武器はもっていましたが
(1)で平松が受けるまではいいんですが、良い形で落とせなかったりしたため
仕掛けられる状況になりにくかったことが原因だと思いました。
特に杉本はパスの受け方もあまり良くなかったために顕著でした。
シーズン最終盤は良い位置で受けることも多かったんですが・・・
また、この頃からビルドアップの目的に変化があったように思います。
好調だった前半戦では、しっかり守備からゴールに向かうために見えましたが
長倉の移籍後は、塩試合にするためのビルドアップにすら見えました。
勝ち点1を積み上げるために、ボールを握って相手の攻撃回数を減らす。
ザスパも相手にチャンスを与えそうなリスクは侵さない。
前半45分はリスクを冒さず0-0でOK。
後半45分でセットプレーと最低限のリスクで得点出来たらラッキー、みたいな。
馬鹿正直に真正面から勝ち点3を取りに行くと勝ち点0になる可能性のほうが高い。
という理由で、少し意識が変わった可能性もあるのかなと思いました。
これは(3)のフェーズになってから、ふと思いました。

(3)目標を達成し、昇格PO争いをするチーム

今シーズンの目標を達成し、目線は昇格POに向くことになります。
ここで、ザスパは明確に「勝ち点3」を取りに行く必要を迫られます。
というのも、勿論毎試合勝ち点3を取りに行ってはいたと思いますが
目標の勝ち点に到達するためには3じゃなくて1でも前進はするわけです。
しかし、他チームを追い抜くためには1では足りません。
勝ち点3を取らないと逆転は出来ない状況なわけです。
リスクを冒した結果とも言えますが、昇格PO圏内への戦いは惨敗でした。
連敗せずにシーズン最終盤まできていましたが
上位チームが相手とはいえ、最後の最後に3連敗です。
攻撃も前半から縦に行くことが多かったと思います。
その結果、カウンターを浴びたりする機会も増え失点も増加。
明らかにチーム全体の前への意識の高さをスタートから強く感じました。
ここで、前述した塩試合の可能性を思いつきました。
今は勝ち点3でなければ意味がないので、勝ち点3か0かでリスク承知で勝負。
その結果、ほとんど負けたってことなのかなと思いました。
だとしたら、チームの戦い方としては面白みは半減したかもですが
目標を達成するために舵をきった監督の手腕は見事だと思います。
ここまでリスクを冒さないと、相手より最低1点多く取ることが出来ない。
という得点力不足が、結局最後まで響いた課題だったんだなと思います。

・来シーズンに向けて
まず明確な課題は得点力。
ただ、これは点取れるFW連れてくれば解決するわけではありません。
現実的に金銭的に難しいということもあると思いますが・・・
そもそもチャンスの数が少ない、崩しにいける回数が少ない。
どちらかというとこちらの問題のほうが大きいと思います。
特に後半戦、ビルドアップは失うことは少なかったかもしれませんが
得点のための効果的なビルドアップでは無かったと思います。
また、そもそも良い攻撃をするために良い形でボールを奪えていないという問題もあります。
低めのラインでリトリート気味に守るので、とにかく重心が後ろに重い。
そのため、押し込まれる頻度も高く、またカウンターにも行きにくい試合が多かったです。
なので、まず得点に繋がるビルドアップを整えるということと
良い攻撃に転じやすい良い守備の形を用意する。
という必要があるんじゃないかと思います。
勿論、今年よりDFラインは高くなりますし、失点は増える可能性はあると思います。
ただ上手くいかない時に、今年の低めのラインの守り方に戻れるというのは大きな武器だと思いますし
90分を通して、守り方を使い分けることも出来るわけです。
カウンターのための前から守備は、今はもうどのチームも必要な時代だと思います。
数字で言うと、得点力に課題があることになりますが
その解決策は違うところにもあるんじゃないかと思いました。
契約も更新してくれましたし、来年も大槻監督の手腕に期待です。

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