日本宣教には大きな可能性がある

東京基督教大学のある授業での学生の質問に対して、私なら、こう答えると考え、実際に授業で語った内容の原稿
2022年6月半ば
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6月9日の授業で学生から出た「日本の人は、神の国といっても関心がなく、ただ日常を過ごしているだけではないか、どう接したらいいのか」という質問に対しての、私の見解を膨らませ、原稿にしました
ご指示の通り、6月16日の授業で回答をいたします。

日本において、周囲の人たちに福音を伝えていく、という事に関して、私の経験から3つのポイントを順を追ってお話をいたします。


1.       起業家マインド
(ア) マーケティングの基礎を学ぶための有名な話を一つします。
 ①      ある靴会社の営業が、南の島に行った、そこでは誰も靴を履いていなかった。一人の営業は本社に「駄目です。誰も靴を履いていないので売れません」と報告をし、戻っていった。もう一人の営業は、「凄いです!まだ誰も靴を履いていません。これは凄く大きな手づかずの市場です。期待してください」と連絡をした。
 ②      この二人の考え方の違いが、起業家マインドが有るか無いか、というものです。

(イ) 私がコンサルティング会社でパートナーとして働いていた時に、最大のお客様がNTTの中央研究所でした。もう20年前の話です。当時のNTTは、今とは違って日本最大の企業でした。NTTの中央研究所には優秀な研究者が多く集まっていました。通信系の研究者にとっては、大学を出たら、NTTの中央研究所で成果を出して、東大の教授として大学に戻るのが、一番の出世コースだった時代です。
 ①      その中央研究所にある、様々な技術のタネを事業化できないか、というプロジェクトを率いていました。その中で、検索技術をやっている研究者を訪問しました。私が訪問をした3年前の時には、NTTの検索技術が世界で最も用いられていましたが、訪問の2年前にはMicrosoftの検索が1位になり、1年前にはGoogleの検索技術が1位になりました。
 ②      その研究者が言っていたのは、検索技術なんて、どこもそんなに差が無いから、自分たちもすぐにGoogleを抜くよ、だけど検索技術は所詮、入口になるだけのものであってお金にはならないよ、検索が出来るということにお金を払う人なんて、誰もいないじゃない。暗号のほうが、お金を企業からもらえるんじゃないかな、ということです。
 ③      その後、どうなったか。NTTの検索を使っている人は、もういません。Googleは、とんでもない大きな企業になりました。
 ④      今、誰もいないからといって、そこに大きな宝物が無い、ということではないのです。イエス様は、世界中に福音を伝えなさいと言われました。


2.       セグメンテーション
(ア) でも、実際にはみんなキリスト教の事に、そんなに関心は示してくれないし、どこから始めたらいいのか、わからない、と思われるかもしれません。
(イ) 次に、ホンダのオートバイの話をさせてください。
 ①      ホンダは、実は世界で最もエンジンを作っている会社です。えっ?自動車がそんなに売れている?と思われるかもしれません。ホンダは実はオートバイを世界中で沢山、売っているのです。
 ②      ホンダがアメリカに進出をしたのは1959年でした。当時のアメリカのオートバイ市場は、半分がアメリカのハーレーダビッドソン、残り半分がイギリスのトライアンフなどのメーカーでした。ご存じですか?どちらも大きくて、立派なワイルドな、値段も高いオートバイです。
 ③      そこに小さな小型バイク「スーパーカブ」を出しました。そうしたら、なんと、たった7年間で63%のシェアを確保したのです。どうしてでしょうか?
 ④      実は、それまでにバイクには載っていないが、日常のちょっとした足が欲しい、という人達がいたんです。その人達にとっては、ハーレーとかは大きすぎて、高すぎたのです。そしてバイクは持っていなかったんです。そこにホンダの小型のスーパーカブはぴったりだったんです。
この人達は、もしかすると、ホンダのバイクを見るまで、自分たちはバイクを買えばいいんだ、ということにも気付いていなかったかもしれません。
 ⑤      こういう「日常のちょっとした足が欲しい」という人を見つけ出すのをマーケティングの用語ではセグメンテーション、といいます。

(ウ) もう一つ、皆さんが知っているかもしれない事例をお話しします。
 ①      カルビーのじゃがりこ、というお菓子をご存じでしょうか?今、幾つものバリエーションが出来て、コンビニにも置いていますね。
 ②      実は、あのお菓子は、2000年ぐらいまでは殆ど売れていなかったんです。堅いし、甘くないし。だけど、良く良く調べてみたら、カルビーが考えていたのとは違う食べ方で買っていた人達がいたんです。
 ③      良く噛む、という食べ方です。えっ?と思ってさらに調べて、考えていったら、「しっかり噛むことで、子供の顎にも良い」ということがわかったんですね。
 ④      子供がお菓子を欲しがった時に、出来れば甘くて柔らかいものじゃなくて、何か少しでも体に、成長に良いものはないかな、と考えていたお母さん達がいました。カルビーは、その人達に向けて「カムカム」というコマーシャルを作って、商品の売り方を変えたんです。商品の中身は変えていません。
 ⑤      こういった「お母さん」方のセグメンテーションを見つけたので、カルビーのじゃがりこは今に続く商品になったんです。

(エ) 全て同じ顔をした「日本の人」というものなんて、ありません。どういう関心を持ってもらえるだろうか、と考え、見つけていくのが、セグメンテーションという考え方です。
 ①      イエス様の仰る我々の「隣人」って誰でしょうか?その「隣人」を見つけていくということがセグメンテーションという考え方です。


3.       閾値
(ア) では、3番目です。そうやって見つけたセグメントに、どこまで頑張ってアプローチをすれば、振り向いてもらえるでしょうか。

(イ) 日本では、クリスマスとか十字架、という言葉は、恐らくほぼ全ての人が知っているでしょう。でも、福音とか、神の国とか、という言葉自体を聞いたことがある人はどの程度いるでしょうか。

(ウ) ユニクロのお話を3番目の考え方としてします。
 ①      今や、日本最大の服の会社のユニクロですが、25年前はまだ山口から出てきた中ぐらいの会社でした。何だか、安くて丈夫な服を作っているらしいよ、という事は聞いて事がありけど、お店はどこにあるんだろうね、探して、一度、行ってみようかという感じです。当時は、まだオンラインで服を買う、という文化もありませんでした。
 ②      ユニクロは、着々と店舗を増やしていて、そしてその店舗数増大の最大の象徴となったのが、2000年頃の渋谷の巨大店舗の登場でした。そのころには、車を飛ばして、お店を探していくブランドじゃなくて、「そういえばお店を見たことあるな」というぐらいにまで増えていました。
 ③      分析をしたんです。そうしたら、ユニクロの一店舗当たりの売り上げが、その渋谷の巨大店舗の頃を境に、急に増えたんです。何故でしょうか?
 ④      それまでは、ユニクロの事を知っている・理解している人は限られていました。それが、渋谷の巨大店舗の頃には、ユニクロの事を理解している人が、一定の割合を超えました。そうすると、そこからは、急に来店者が増えたんですね。
 ⑤      これを、マーケティングの用語では「認知の閾値を超える」と言います。知っている人が一定割合を超えるまでは大変です。でも一定割合=閾値を超えたら、急に上手くいくようになるんです。

(エ) 日本のキリスト教はどうでしょうか?キリスト教を理解してもらうためにどんどんノンクリスチャンの人達に対して、説明をしているでしょうか?自分達が信じている物は何なのか、クリスチャンである、ということはどういうことなのか、外部に発信をしているでしょうか。
 ①      幾ら発信をしても手応えがない、と感じるかもしれません。でも、それは活動の量が閾値に、まだ到達していないからです。閾値に到達するまで、やり続けないといけません。
 
4.       まとめ
(ア) 3つのポイントを話しました。
 ①      起業家マインドで開拓を喜ぶ
 ②      セグメンテーションの考え方で「隣人」に気付く。
 ③      閾値に達するように、キリスト教の事を語り続ける。

(イ) 我々の神は、我々だけで独り占めにすることを望んでおられません。この3つのポイントを経ていけば、必ず福音は伝わっていくと考えています。

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