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脚本「こどもの日(2020/5/5の淀川河口「西す」道路の話)」(シーン5/6)

脚本「こどもの日(2020/5/5の淀川河口「西す」道路の話)」です。全部でシーン8まであります。

シーン5 改善
2020/5/4(月)23:00 川沿いの「西す」道路にて

男1 足りないのはあと何?
男2 えーとな、一番は助走する距離。ちょっと足らないねん。
男1 どないしようもないやん
男2 ないなあ
男1 え?どうすんの?川使ったらどうにかなるんちゃうん
男2 うん。なるなる。なるで。まあなんとかなるやろ
男1 え?ホンマに?ならんやろ。殺す気なん?
男2 大丈夫やろ。
男1 そういう肝心なところが荒っぽくなんねん
男2 どっかで覚悟せんと、空は飛ばれへんで
男1 覚悟するからギリギリまで準備するんやろ

男4 おお、お疲れ様
男3 お疲れ。何してたん?
男4 工具取りに行っとったわ。
男3 ああ
男4 そいつら来た?
男3 まだやな
男4 来たら何言おか
男3 せやなあ…
男4 話をとにかく聞き出したいよな
男3 なんか煙に巻くような喋り方するから、なかなか言わんで
男4 そうなんや
男3 知らないと何も手伝われへんって言ったらどうやろな
男4 勝手にやるだけちゃう?わからんけど
男3 そうやろなあ

男1 来てるやん、しかももう一人連れてきとるし
男2 オッサン、ホンマに有り難う。絶対来てくれるって俺わかっててん。ちょっと喋ったらな、俺、相手が信用できる人間かどうか、わかんねん。
男3 よう言うわ。車泥棒してるところ鉢合わせただけやのに
男2 それが縁っていうやつやんか。横のやつは誰なん?
男4 話に聞いてたけど、ホンマにチンピラやねんな。
男1 羨ましいやろ
男4 羨ましないわ
男2 手伝ってくれんねやろ
男3 一旦最後まで付き合ったるわ。
男2 ええやん。
男4 聞きたいことは山ほどあるし、まず全部教えてもらわなアカンな。まず、どこで飛ばすつもりなん
男1 ここの「西す」道路でやろうと思ってんねん
男3 え?男4 ああ、ちゃうで。「西島水門」道路って読むねん。
男3 ここでやるんか。そんなこと出来るような長さないやろ
男2 そうやねん。そこやねん。
男4 どないするん
男2 オッサン考えてやー俺考えたけど無理やったわー
男1 お前言うてることちゃうやん。殺す気やったんか。
男4 一つ目は分かった。次の質問するわ。飛行機はどうやって飛ばすんや
男2 まずは道路をガソリン駆動で走る。次に一定の速度になったら、揚力で浮く。そこからは翼の操作を始める。先頭風切り部分、翼についている風を受けるパーツの操作と角度の変更ができる。ジェットエンジンが無いのが難点やけど、帆をつけて前方方向への加速度を保とうと思うわ。着陸は帆を広げて減速する。こんな流れやな
男4 無線は?
男2 ない。スマートフォンでええやん
男4 管制塔とか他の飛行機からの通信を受け取られへんで。
男2 今回はそんなんいらん。低く飛んでバレんようにする。
男4 目視じゃなくてもみつかるで。
男2 そこは一発勝負や
男4 ムチャクチャやな。それは計画とはいえへん
男1 まともな人間が自作飛行機で空飛ぼうとは思わんて。今さらそんな疑問はおかしいやろ
男4 問題点洗い出すのが技術者の仕事やからな。道徳的な問題とは別や。そこはもう諦めとる。最初に半グレやって聞いてるしな
男1 半グレちゃうで
男4 それで、風圧計、速度計の計機類はどないや
男2 つけてるで。そこは任せてくれ。
男4 とりあえず、おおよそはわかったわ。なんでそもそも飛行機つくれんねん
男2 航空自衛隊のエンジニアやから。パーツの規格も、理論的なところも全部わかってんねん。
男4 わかって作れるか?
男2 結局部品はJIS規格やから同じのパーツか、似たもの使っておけば大丈夫やねん
男4 JIS様々やん
男3 品質管理部が泣くで。嬉しくて。
男4 コソドロが飛行機飛ばせるJIS規格
男1 オッサンらはなんで来たんや
男4 それは飛行機がうまく飛んでからでいいやろ
男2 言わなダメやわ。こっちはフルオープンやから。
男4 ややこしいな
男3 言うたやろ。こういう奴らやねん。
男4 面白そうやから
男2 それくらいのウソは分かんねん。グダグダせずに最初から本音で言わんとアカンで。後々後悔すんで。
男4 俺らな、鉄とか特殊鋼の加工のプロやねん。でもな、お客さんがおらんと商売できんから、新しい商売になること探してて、それの一環や。アドバイスしてるのは、商売として上手く行くように伝えてるねん。
男1 個人用飛行機か?
男4 旅客機やな。聞いてる規格のままやと難しいけどな。


男1 オッサンな、一人乗りの飛行機と旅客機は根本的に全然ちゃうねん。なんか仕事になると思ってるんやったら全然甘いで。飛行機のこと全然知らんのやな
男4 こっちはな、大型のバネやら加工金属のプロ中のプロや。お前が思ってるほど経験浅くないねん。内容物が常に水平を保つコンテナも作ったことあんねん。そこはこっちでなんとか出来んねん。
男2 飛行機が実際に飛んだらどないするハラなん
男4 全部コロナ対応用の設備にして旅客機を世界に売る
男2 へーいいな
男4 興味ないやん
男2 捕らぬ狸の皮算用やしな
男4 そうかもな
男3 本題考えようか
男4 えーとな、ジェットエンジンは大丈夫や。タービンはいっぱいあるわ。それ使ってもらったらええわ。倉庫にめっちゃいっぱいあるし。
男3 そのままで使えるか?
男4 川重かIHIに卸す予定やったタービンあるやろ。
男3 それヤバイで
男4 これ上手くいったらその損失補てん出来るで
男3 でも、取り出されへんやろ
男4 家から鍵開ける工具持ってきてんで
男3 運び出されへんやろ
男2 四輪駆動のバンあんで
男4 移動できるようにタイヤとタービンに固定するナイロンベルトもあるで
男2 技術者は流石やな、ちゃうわ
男3 まともちゃうで、家帰って何しててん
男4 社会が今まともちゃうから、今だけの賭けや
男3 怖
男4 商売続けなアカンって覚悟してるからな
男3 まあ、そうか…
男4 設置と操作用のスイッチの作成はそっちに任せる
男2 話わかるやん
男1 ホンマやな
男3 どうかしてるで
男4 せやな。夢見てる感じやな。
男2 次はなんかあるか?
男4 着地やな。たぶん死ぬわ。
男2 そうなん
男4 大阪にそんなものをやりたいように着陸できる場所はどこにもないやろうしな
男2 それもそやな
男1 考えとけよ
男4 どこで降りるか
男3 淀川はどうやろ
男4 ええかもな
男2 いまはアカンやろな
男3 なんで
男1 コカインの売人がモーターボートで淀川を遡って売りに来てるからな。警備が厳しいねん。
男3 なんの情報やねん
男1 半グレ情報
男4 やっぱ半グレやん
男2 半グレちゃう
男4 なんで知ってんねん
男1 半グレ情報
男3 会話ならんで
男4 まあええわ、どうでも。そうなると、着陸じゃなくて着水やな
男3 そうやな
男4 どちらにしろ全壊して終わりやな
男1 ええー考えてや
男4 あとなんやろ
男3 八尾空港ってどう?
男4 それはダメやろ。監視されとる。人の目につくわ。
男3 ギリギリまで減速して柔らかいところは?砂地とか
男4 悪くないな
男2 アカン。角度の調整がムズい。絶対怪我する。
男4 ゴルフ場とかええんちゃう?
男2 悪くないな
男3 ええかもな
男4 じゃあゴルフ場やな
男2 どこのゴルフ場にするん
男4 加東とかは?
男2 途中に伊丹がある。飛行禁止帯域や。
男3 奈良とかはどうやろ
男2 光がなくて絶対迷う。エンジンがなくなって墜落や
男4 高槻にゴルフ場なかったか?
男2 奈良とおなじや。空から目視で降りるのが難しい
男4 エースパイロットなんちゃうん
男2 エースをよりエースにするように環境を整えるのが俺の仕事や
男3 電話で位置伝え続けるのはどうやねん
男2 位置情報が飛行速度についてかれへん。
男4 なるほど、目視でランドマークがわかることが大事なんやな。あと人目につかないことか。
男3 じゃあ、倉庫か廃墟…
男4 着水にしよう。南港ならそういう施設あるはずや
男3 そもそも、なんで全壊なん
男2 着水時に水に突っ込むからやろ
男4 そうやな
男3 そうなると、水の力を受け止めるもんがいるのか
男4 やなあ
男3 それやったらあるんちゃう?
男4 そうやなあ
男1 機体が傾かへんかそれ。クッションのせいで空飛ばんってのは嫌やで
男3 ああ、そっか
男4 クッションって考えるのがアカンのかな、力を受け止めるもの
男3 いっそのこと壊れる代わりに力分散させるものとか
男2 それ、バランスの問題解決しきれてるか?
男3 複数の問題あるからややこしいな
男1 めちゃくちゃな設計やな。俺ほぼ死ぬやん
男2 安心しろ
男3 そうやなあ、中空かハニカム構造でいけたらな。あとバランスをとれるもの
男2 ないな。バランスは操作でなんとかするとして、力を受け止めるものを設置しよか
男4 そうやなあ…ショックアブソーバー、いやあかんなあ、車のショックアブソーバーは壊れる前提の設計ちゃうし
男3 クッションを複数個積んで、クッションごとに垂直位置を操作する
男2 クッションの垂直位置だけではバランスの操作はできんな
男3 重さ?
男2 そうや
男3 途中でクッション捨てるとか
男2 捨てすぎたら着水できんやん
男1 好きように捨てれないと、ヤバイで。ただでさえ傾きの制御むずいのに
男2 捨てれば捨てるほどクッションの役目を果たすものってなーんだ
男1 なぞなぞやん。なぞがなぞなぞのままやったら俺の命やばいで
男2 わかった。そんなものはない。これで謎は解決した。命は大丈夫や。
男4 いや…あるで。
男3 え?
男4 エタノール散布用の容器と管や。そこにバラストの水を積んで、最初は速度調整にもできる。
男1 えっ、それ大丈夫なん?
男2 そっちのほうが安全や
男4 コックピット直下に設置して、衝突した時に容器が潰れるようにして、力を受け止めるようにする。そうすれば着水時の力を分散させることが出来るわ
男2 天才や。
男4 やろ
男3 あとなんやっけ
男2 滑走路。
男4 それはあれや。角度のついた滑走路を使ったらいいねん。
男3 それじゃアカンわ滑走路を登ると重力で速度が落ちるわ
男4 何かで加速度つけたらいいねん。
男3 何がある?ガソリン?いや、滑走路に速度つけるのはどうや?ベルトコンベヤみたいな
男4 それは複雑や。発車直前に滑走路と飛行機のロックを解除するのはかなり難しい
男3 そっか、解除できんかったらパイロット死ぬもんな
男1 円形の形で回るのは?
男4 ちゃんと加速すると螺旋になるな。あと円の中心に力をかけないと螺旋で回るのも難しい
男3 直線しかアカンな
男2 逆方向にかかる力がなければいいねん
男4 そうそう。摩擦がないか、空気抵抗がないか。
男3 摩擦がないってなると、ムズいな。摩擦がないものを作れない。研磨する時間ないわ。
男4 あれや。コロナ対策用金属や。あれ、コロナがひっつかんように摩擦しない表面加工がされてんねん。
男2 それじゃ滑るだけやろ
男4 ちゃうねん。それだけじゃなくて、コロナを静電気で近づけないようにするために、ほんの少しだけ磁力があんねん。その鉄板を重ねたらそれだけ磁力は増すし、その分前方への推進力が生まれんねん。
男3 それなに、リニアみたいなレールを作るっていうことか
男4 それとパチンコやな。投てき。
男3 その機構を作ればええんか
男2 話まとまったな。
男1 イェイェ
男4 作業始めよう
男2 いつ集合する?
男4 何を目印にするかやな
男1 月やろなあ
男3 やったら、月が南中した時に

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