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こぼれエッセイ「トースト」

トーストと聞いて、思い出す1枚の絵がある。


あれは、小学3年生くらいの頃だろうか。今はもうほとんど絶縁状態の従姉妹家族とも、当時はまだ交流があった。

大人たちの争いごとなど知らなかった当時の自分にとっては、カセットしかついていない実家の2ドアの古いファミリアとは違って、CDコンポつきの4ドアの新しいダイハツ・ミラに乗れたり、従姉妹の家にはスーパーファミコンのマリオカートが置いてあって遊べたり、アパート暮らしの実家と違って車庫や庭や階段やベランダがあったり。楽しみなことだらけだった。


従姉妹との会話の記憶はほとんどないのに、マリオカートでわざとコースレーンを外れて砂場に行ってショートカットする遊びをして失笑を買ったことと、もうひとつだけ憶えていること。その家の壁に貼り付けてあったカレンダー。


そのカレンダーは、父親が当時つとめていた信用金庫の名前が書いてあった。その信用金庫は、今でも近畿地方ではかなり有名なところだ。


カレンダーには、顔のついた食パンの絵が描かれていた。

顔のついた食パン…………真っ先に思い浮かんだのは、「しょくぱんまん」だ。アンパンマンとカレーパンマンはおらへんのん?と、カレンダーの絵を凝視してもいない。いや、こいつの顔、「しょくぱんまん」と、なんかちゃうぞ…………。なにがちゃうか、て…………。


スライスされてへんねん!!

そう、1斤まるごと!に、顔がついている。そしてその顔がまた、無表情なんだか悲しんでいるんだかようわからん、なんともいえん顔だ。

たまたま夜中に見たとき、ちょっと怖かった。インパクト絶大だ。


この信用金庫のカレンダーは、毎年のように配られ、毎年のように親戚の家に貼られ、毎年のようになぜかサイケデリックな色使いで「なんでこれ?」みたいなイラストが紛れ込んでいた。


しかし、ある年のはじめ、例によってカレンダーがやってきた頃。その頃は6年生になっていたかな?いや5年生だったか?よく憶えていないが、全部が全部、まともなイラストだった。

つまり、1月には餅つき、3月には雛祭り、5月には鯉のぼり…………おおよそ常識的なイラストばかりだったのだ。顔のついた1斤の食パンのような常軌を逸したイラストが一点もないのだ。


つまらん!

そう、直感的に思った。





「トーストの話」ではなく、「しょくぱんまんみたいでなんか違うよくわからない食パンのキャラクターの話」になってしまった…………。

多分その時期と前後するかと思うのだけど、時々、気まぐれなのかなんなのか親がヤマザキパンのダブルソフトを買ってきた時は少しリッチな気分になれた覚えが。

当時はダブルソフトってまだ新製品だったんじゃないかなあ。スーパーで見たとき衝撃的だったのを憶えている。2つにきれいに割れるんだぞ…………なんて画期的なんだ…………。

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#エッセイ

サウナはたのしい。