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こぼしエッセイ「I am not the trigger」

2年半ほど前でしょうか。

大阪市は心斎橋にて行われた「第1回V系街コン」というものに参加したことがあります。

「V系街コン」……。元々は、東京は池袋にて開催され、そちらは好評だったらしくその後も続いていたそうですが、大阪版はその第1回きりで終了してしまいました。

街コン…………。そう、合コンですわよ奥様。そして、V系……ヴィジュアル系が好きな人たちが集まる合コンときた。

容姿端麗とは言いがたく人見知りで口下手なプラーナくんに一般的な合コンは正直きついけれども、得意分野である「ヴィジュアル系」がテーマなら、なんとか上手く話せるかもしれない。

いや、女の子と仲良くなれなくとも、男子でもいいから、TwitterとかでV系トークができる友達がほしい。

意気込んで、主催者さんにメールを送りました。日時と場所を報せる内容を返信してくださいました。

それは…………鋼鉄の救世主(通称マッドスカイ)が司るmagic theatreの裏にあるアクロの丘にあるPlasticの木が立ち並ぶmind forestの中にあるBAR神楽,…………ではなく、アメリカ村のビル。まんだらけの近く。ミニストップのすぐ近く。有名なV系バーが2軒ほど。

この情報だけで、どのあたりのことを指しているか、わかる人にはわかってしまうかもしれませんね。

さて、当日。

私はデーモン閣下のコスプレをし……ていません。聖飢魔IIはV系ではありません。ここ重要です。間違えたらV系オタ・メタラーの双方にすんげえ怒られますからね。殺しの現場に連れて行かれますよ。

えー、コスプレなどはせず、ごく普通の格好で行きました。

ちなみに自分は昔から帽子が好きで、けっこういろんな種類のものを所有しています。持っているトランクスの数より多いかもしれません。いやそれはともかく、当時から愛用していたこの帽子をかぶっていきました。

これがまあ、ひとつめの失敗です。

9月も下旬に差しかかった時期でしたが、なぜかその日は猛暑だったのです。暑い暑い。蒸れる蒸れる。1軒目のお店に着いた途端に汗だくでした。ただでさえセールスポイントが少ないのに、「汗くさい」というマイナスポイントが加点されてしまいました。


しかしまだ、パーティーは始まってもいない。

V系バンドのファンというのは、8割が女性です。このV系コンの参加者も、見たところ、ほとんどが女性でした。というか、30人ほどと聞いた参加者の中で、男性は5人くらいしかいません。

その5人くらいの男性は、自分も含めて、いかにも草食系男子のにほいがする方々でした。あんまり激しいガツガツ系はいない印象。こういう雰囲気なら、自分も乗り込めるかもしれない……。

主催者さんがマイクを手に持ち、高らかにパーティー開始の合図を告げます。

さて、ラクリマクリスティとラスティネイル…………ではなく、普通にビールで乾杯!

…………さあ、乾杯しましょう、向かいの席のあなた!…………え?どこ行くの?いま思いっきり目が合いませんでしたか?…………乾杯しましょう、そこのおねえさん!…………か、かわされたっ!…………乾杯しま…………あ、もうみんな呑んでいらっしゃる。食べ物が矢つぎ早に注文されていくぜ!その間、わずか数分!展開はやっ!……………………完敗。みんなDry?…………初っ端からZ-HARDだな。

いや、私はあきらめない。不可能を可能にしてやると、かのYOSHIKIさまもおっしゃっていた。とにかく話しかけようなんでも…………断ち切れない心に……Say Anything……Say Anything………。

おや、1人で呑んでいる人がいる。チャンスだ。

「こんにちは、…………どこから来られました?」

「…………いや、違います」

…………?

会話が成立せず。

「すみません!」

そう言って、彼女は行ってしまった。すみませんのナイフガ胸ヲ刺ス。もうアレだ。生理的にイヤなら生理的にイヤだと言ってくれ。その方がマシだ。


1対1で話すよりも、盛り上がっているスペースの仲間に入れてもらおう。3〜4人で話しているあの小さめのテーブル。なかなか良さげだ。おっ、陰陽座か。細かくいえばV系じゃない気がするけれど、まあ細けえことはいいんだよ!とにかく今を楽しみましょう。かかってこーい!

…………あれ?陰陽座の話はまだ途中なのに……向こうのテーブルに行っちゃった……?残ったのは、自分も含めて男子3人。

そう、数少ない男性参加者のうち、まともに合コンが楽しめているのはその半分以下………というか、次回に登場する1人だけなのでした。

でも、まあもちろん、あわよくば女の子と……というのはあったのだけど、男子のV系友達だってほしい。さっそく話しかけよう。

「どんなバンドが好きなんですか?」

1人の男子は、こう答えました。

「………いや、僕、いろんな街コン行ってるんですけど、V系とかって知らないんで」

もう1人の男子は、こう答えました。

「主催者さんに、女性の比率がかなり高いからって聞いたんですけど……」


……………………………………………………だめだこいつら。

その後は、はぐれ男子3人による、過去の街コン反省会が行われました。街コン初参加の自分は完全に聞き役でした。うーん…………うーん…………つらい。無駄に酒だけは進む。このお店の中で最も女っ気の無いスペースなのに女々しくて女々しくて女々しくて…………つらい。


「終了です!」と、主催者さんの声が。

そう、感情を亡くした罪深きJESUSは破滅を告げる鐘を鳴らしたのです。翼を奪われた私は未だ見ぬ貴女を愁いながら絶望で血塗られた蒼い薔薇の海で醜く歪んだ瞼を閉ざ…………、


いやいやいや、まだ2軒目が…………アンコールがある!TONIGHTをキミだけの夜にしてやるんだ。まあまだ午後2時半なのだが。冷たい太陽。僕は太陽に逆らうこともできない、深海で溺れる魚。


紅に染まったコミュ障のプラーナくんを慰める奴は、2軒目で現れるのか?次回につづく!

#エッセイ #あなたは元ネタをいくつ見つけられましたか

サウナはたのしい。